福井工業大学学内特別研究費「持続可能で活力ある地域づくりプロジェクト」(平成24年度~平成26年度)
1. 目的
人口減少、少子高齢化、財政緊縮といったこれまでの社会的トレンドに加えて、昨年に起こった東日本大震災も一つの契機となり、現在、日本国では、持続的な地域の構築が国策として、重要な課題となっている。持続可能な社会のために、国は「低炭素・循環型システムの構築」と「地域の集約化」を重点目標と位置づけており、我々のクラスタは、この目標の福井県における展開は「水郷」にあると考え、様々な研究背景を持つメンバーによって統合的な研究へと進める。これによって、福井県はもとより、全国に向けても一つの持続的な都市モデルの提案を行うものである。
2. 背景/意義(他研究機関の状況/独自性)
ー水郷の研究と福井市周辺地区への応用ー
水郷とは、水辺に位置する集落のことであり、景観法の適用第一号となった滋賀県近江八幡市の例などが挙げられる。近江八幡市では、水は生活用水として各家庭に流れ込み、夏場の涼、冬場の暖となる、まさに低炭素・循環型システムといえる。福井においては、洪水などの経験も影響し、都市環境においては、利水よりも治水が重要な関心となってきた。また、昨年の大津波の影響もあり、自然から隔絶した集落設計が重要視される中、水と触れ合う環境の大切さを、持続可能性の観点から強調する必要がある。
3. 研究テーマ/メンバー
研究テーマ | メンバー(所属) | 役割 | |
---|---|---|---|
1 | 親水空間における子供の遊び場の研究 | 野尻 奈央子(産業ビジネス) | 研究代表者 |
2 | 都市計画 | 内村 雄二(建築生活環境) | 分担者 |
3 | 環境管理 | 中野 多郎右ェ門(基盤教育) | 分担者 |
4 | 都市・地域景観創造法、まちづくり | 下川 勇(建築生活環境) | 分担者 |
5 | 持続可能な水利構築物の研究 | 竹田 周平(建築生活環境) | 分担者 |
6 | 水郷の歴史とその形態的特徴を用いた住環境 | 木川 剛志(デザイン) | 分担者 |
7 | デザインプロセスを応用した地域活性化 | 西尾 浩一(デザイン) | 分担者 |
4. 研究内容(最終年度までの各年度の実行内容)
本クラスタ研究は、国策とリンクした地方政策と歩調を合わせる実学的研究であり、そのため、福井県や福井市と密にした連携を模索する。
H24)本研究の発端となった、国土交通省が提示する「持続可能で活力ある国土・地域づくり」の推進は、H23 年度補正予算とH24 年度予算(日本再生重点化枠)によって大々的に予算化されることとなっている。この動きにあわせて、福井県、福井市とともに予算獲得を目指すため、福井県内における「水と触れ合う環境」の調査とその潜在力の分析を行う。福井市東郷地区などをモデル地区とし、その実態調査なども視野にいれている。
H25)初年度の研究成果を基に、福井における「水郷」のデータベース化を行うとともに、海外学会も視野にいれた研究発表の場を多く持つ。また、実際の環境整備のためにアセスメントや基本設計なども行う。
H26)モデル地区の整備、またその検証などを研究成果とし、学会発表などを行う。
5. クラスタ活動計画
本クラスタでは、オープンウォーターなど水環境におけるイベントについて研究をおこなってきた野尻奈央子を研究代表者とし、これまで福井市におけるまちづくりに実績を持つ、下川勇、木川剛志、そして土木構築物の専門家、竹田周平、地域活性化を研究する西尾浩一のメンバーから構成される。
6. 研究スケジュール/予算
研究スケジュール
H24)初年度は地図情報のための管理のために大型プリンター、統計処理用のシステムを備品費として計上している。また実態調査、事例研究のために旅費を計上している。
H25)初年度の研究成果を基にデータベース化を行うとともに、海外学会も視野にいれた研究発表の場を多くもつため、研究旅費を158万円計上している。
H26)モデル地区の整備等にかかる整備費は消耗品費としてその他で計上する。また研究成果として、学会発表などを各地で行うための研究旅費80万円を計上した。
予算
H24(予算) | H25(予算) | H26(予算) | 合計 | |
---|---|---|---|---|
設備費(千円) | 749 | 500 | 300 | 1,549 |
研究費(千円) | 350 | 300 | 900 | 1,550 |
その他(千円) | 1,043 | 1,780 | 1,000 | 3,823 |
計(千円) | 2,142 | 2,580 | 2,200 | 6,922 |
7. 期待できる研究成果
本研究は、本学のクラスタとして初めて、主として社会領域に属する研究者によって設立を希望するものである。社会領域に関連する研究内容であるがゆえに、産官学連携研究として社会に大きく貢献するものといえる。
8. 外部資金獲得計画
1)国土交通省 2)経済産業省 3)財団法人まちづくり市民財団 4)笹川財団 5) 地方公共団体国土交通省においては、建設技術研究開発助成制度、もしくは、H24 年度以降に進められる「持続可能で活力ある国土・地域づくり」の推進に合わせて制度化されるであろう助成制度へ、地方公共団体と連携して応募する。また、経済産業省の「産業技術研究助成事業」や様々な財団の助成にも応募する。予算規模としては、3,000万円程度を想定している。