研究情報

農業活性化に向けた閉鎖型植物工場技術の開発

研究者

メンバー(所属)研究テーマ(個別)役割
1中道正紀(電気電子工学科)植物工場における光ファイバ分布計測技術の開発代表者・事務局
2中尾一成(電気電子工学科)植物工場における光ファイバ分布計測技術の開発分担研究者
3砂川武義(原子力技術応用工学科)植物工場における高付加価値植物(福井県伝統野菜)の栽培検討研究者

予算

単位:千円

備品研究旅費報酬雑費郵便図書印刷交通賃借合計
H30500250150400000002001500
H312000500600400000050020006000
H32300010001000400000060020008000

*H31以降は予定金額

研究スケジュール・内容:(平成30年度~平成32年度)

平成30年度

5月~9月
神戸大学および企業と共同で、湿度・水分量測定のためのコーティング材料、コーティング方法、評価方法について検討
5月~10月
光ファイバ合金コーティング方法の検討、試作品の製作
5月~12月
吉川丸ナスの種子を用いた「苗作り」「吉川丸ナスの育成」
9月~12月
圃場における測定試験実施(ファイバの敷設・計測・解析)

平成31年度

6月~9月
圃場における測定試験実施(ファイバの敷設・計測・解析)
5月~12月
神戸大学および企業と共同で、スマートアグリセンサー試作品の製作、評価
試験
5月~12月
光ファイバ合金コーティング試作品の評価試験
5月~1月
吉川丸ナスの高確率な発芽・栽培条件を抽出作業

最終年度

5月~1月
スマートアグリセンサー、光ファイバ合金コーティング技術のブラッシュア
ップ
5月~11月
圃場/果樹園における測定試験実施(スマートアグリセンサーの敷設・計測・
解析)
5月~10月
閉鎖型空間での吉川丸ナスの苗作り、大学祭における苗販売

年次目標

平成30年度

① スマートアグリセンサーの開発[Patent]

光ファイバ分布計測技術を農業利用するための大きな問題点は、本技術では1次計測量として温度と歪みしか測定出来ないことである。よって、センサー構成やコーティング材料を工夫することによって、2次計測量として湿度・水分量・窒素量・pHを測定出来るような測定技術「スマートアグリセンサー」を開発していく。図1にスマートアグリセンサーのイメージ図を示す。 F/Sでは湿度・水分量測定のためのコーティング材料候補として挙げた親水性高分子材料の濡れ性などを調査したが、平成30年度は、可逆性・耐久性など実用化に必要な要件も含めコーティング材料の再選定を行なうことを目標とする。



図1. スマートアグリセンサーイメージ図

②温度計測精度を向上させるための光ファイバ合金コーティング技術開発[Patent]

F/S調査において、閉鎖型空間での光ファイバ分布計測技術を用いた温度分布計測が有用であることがわかった。しかしながら、本技術は温度より歪みへの感度が良いことから、閉鎖型空間であるとはいえ微風などの影響で歪み分の周波数シフトが発生し、温度計測の精度低下を招くことも分かった。そこで本研究では、温度計測精度を向上させるための光ファイバコーティング技術を開発する。現在の開発案としては、合金コーティングで温度変化による周波数シフト量を増やし、相対的な歪みの影響を小さくすることで計測精度の向上を目指す。平成30年度は合金コーティング方法の検討を行ない、試作サンプルの製作を目標とする。

③圃場/果樹園など外部環境における光ファイバ分布計測技術の活用[Application]

屋内のみならず外部環境での農業においても、栽培情報を活かしたスマート農業が求められている。平成30年度は、圃場(栽培植物無し)に光ファイバを敷設し、温度測定試験を行なうことを目標とする。実用化のためには、農機等の作業の邪魔にならないファイバ敷設が求められる。したがって、測定試験では農機が入らない地中70~100[cm]の温度も測定し、農業従事者が必要とする地中10[cm]の温度と相関関係がとれるのかを調査する。図2に圃場への光ファイバ設置案を示す。また、外部環境においては思いがけない歪みがかかる可能性があり、分析した測定結果から正確なデータを測定するための光ファイバ敷設方法も再検討する。

 



図2. 圃場への光ファイバ設置案

④高付加価値植物(福井県伝統野菜)の栽培検討[Application]

閉鎖型植物工場における高付加価値植物の栽培を実現するために、F/S研究で収穫した吉川丸ナスの種子を用いて、苗を作り、吉川丸ナスの育成を行う。ここで、吉川丸ナスの種子の発芽条件は、日中30℃、夜間20℃の温度変化を必要とすることが知られており、畑に蒔いて育てるには、非常に難易度が高いと考える。発芽率を高め、強い苗を作るためには、温度条件を管理した条件下で、育成することを検討する。 

 

平成31年度

①スマートアグリセンサーの開発[Patent]

前年度選定した湿度・水分量測定のための材料を光ファイバにコーティングし、試作サンプルを製作、湿度・水分量がコントロール出来る屋内空間にて評価試験を実施する。

②温度計測精度を向上させるための光ファイバ合金コーティング技術開発[Patent]

前年度製作した試作サンプルについて、屋内空間にて評価試験を実施する。

③圃場/果樹園など外部環境における光ファイバ分布計測技術の活用[Application]

平成31年度は、圃場温度(地中/地上)計測試験を継続する。前年度試験と異なる点としては、実際に稲を栽培している環境において計測を行ない、UAV等のスペクトルデータ、計測付近の稲の品質と情報をつき合わせて相関関係がとれるのかを調査する。

④高付加価値植物(福井県伝統野菜)の栽培検討[Application]

前年度育成試験の知見を基に、高確率な発芽・栽培条件を抽出する。

 

最終年度

① スマートアグリセンサーの開発[Patent]

技術のブラッシュアップによって計測精度を向上させ、実用化技術としての確立を目指す。

②温度計測精度を向上させるための光ファイバ合金コーティング技術開発[Patent]

技術のブラッシュアップによって計測精度を向上させ、実用化技術としての確立を目指す。

③圃場/果樹園など外部環境における光ファイバ分布計測技術の活用[Application]

閉鎖型植物工場および圃場/果樹園などにおいてスマートアグリセンサー、合金コーティングセンサを敷設し計測試験を実施する。

④高付加価値植物(福井県伝統野菜)の栽培検討[Application]

閉鎖型空間において発芽・栽培した吉川丸ナスの苗を、需要調査のため大学祭等において販売する。