研究情報

福井工業大学学内特別研究費「複雑系を用いた高効率システムの探求」(平成26年度〜平成28年度)

1. 目的

 カオス現象は、単なるランダムとは異なり、相関がある現象であるために様々な応用の期待がもたれている。これまでの例としては、数値計算に使った場合の乱数に比べての高速な集束、高速物理乱数発生、1/f ノイズを生かしたタイヤノイズの低減などが実用化されている。また、非線形の現象に由来するため、これまで線形で扱ってきた工学的制御を超えた制御が可能である。さらに生命現象もカオスであるため、生命現象との関連も興味深いテーマであり、今後の発展の可能性を秘めている。
 以上のことを利用して,高効率なシステムの構築およびそれを用い他分析を目指す。

2. 背景・意義


 THz 波の発生、検出は、光伝導アンテナとフェムト秒レーザーを用いたものが一般的であるが、フェムト秒レーザーは数百万と高価であるために実用化の障害となっている。
 多モード半導体レーザーを用いる装置も共同研究者のもとで開発されたが、0.5THz 以下に発生帯域が限られ、安定性に欠ける。
 空間的コヒーレンスを保ったまま、スペクトルが広がり、時間平均が安定なレーザーカオス光を申請者の研究では用いている。レーザーカオスと、THz波の領域を組み合わせた世界で唯一の研究である。 
 超音波モータは、振動子(ステータ)と回転子(ロータ)との摩擦接触によりロータを回転させるアクチュエータである。特徴として低速高トルク、保持トルクを有するなどあり、同駆動メカニズムを持つ微細なアクチュエータの開発もされているが、摩擦駆動のためエネルギ変換効率の向上が課題である。申請者3,4は振動子と回転子の非線形接触挙動の解明を通し、微細なアクチュエータへの応用を目指している。微細なアクチュエータをTHz検出側の時間遅延装置に組み込むことで、高速かつ無振動の検出を目指す。
 このようにして開発が期待されるシステムは材料工学から自然科学、ひいては医学までと幅広い応用が期待できるが,本研究では,特に細胞レベルの観測に応用を試みる。

3. 研究テーマ・メンバー

研究テーマメンバー(所属)役割
レーザーカオスを用いたTHz波発生桒島史欣(E)研究代表者
有用微細藻類の培養コンディションの迅速モニタリング柏山祐一郎(P)共同研究者
弾性体と剛体の非線形接触挙動の解明山下清隆(M)共同研究者
進行波を用いたアクチュエータに関する検証実験中山智了(M)共同研究者

4. 研究内容(最終年度までの各年度の実行内容)

桒島担当
平成26年度 THz波の時系列・スペクトル変化の研究
・レーザー光を用いて発生したTHz波とカオス光を用いて発生したTHz波の違いを明確にする。
平成27年度 THz波制御技術の開発並びに具体的検証
・2種類のレーザーを混合させてビート周波数の範囲を広げる。また分光の基礎実験を行う。
平成28年度 THz検出感度の向上
・THz検出感度を数倍に向上させる。



山下・中山らは、進行波を用いた直動型の小型アクチュエータの開発に先立ち、H.26年度に振動子と回転子の非線形接触メカニズムを明らかにする数値計算と検証実験を行なう。また、H27年以降は、これらの知見をもとに、振動子と回転子の動力学特性に及ぼす各種パラメータの影響を調べ、アクチュエータの開発を行なう。



柏山は、バイオ燃料生産などの産業化を目指す微細藻類などの培養状態を迅速かつ非破壊でモニタリングする技術の開発を試みる。また、細胞成分のフィンガープリンティングにより、有用微生物の選別技術の開発も行う。光の揺らぎと、生体の反応に対する基礎研究もおこなう。H26年に細胞培養を開始し、H27年、H28年に、THz波分光、及びカオス光照射による生態への影響を観測する。



5. クラスタ活動計画

毎月1回の定例会議を行い,平成26年度はそれぞれのテーマを進展させる。
平成26年度は、山下・中山の開発する無振動レールとの融合を目指す。
平成27年度は、検出感度を向上し、実際の生態系の分析を行う。

6. 予算

H26(予算)H27(予算)H28(予算)合計
研究費(千円)9272,0511,8504,828
その他(千円)2,8732,4491,1506,472
合計3,8004,5003,00011,300

7. 期待できる研究成果

 学部生・修士学生を研究に参加させることで、教育効果をあげ、真の理解力・コミュニケーション能力を身につけさせる。また学会講演を行うことで、学園のアクティビティの高さも世の中に示し、学生の就職先の質の向上を図る。その状況を見て、入学する学生の向上を生みだす。

8. 外部資金獲得計画

JST A-step、科研費B