創成科学

平成24年度創成科学Ⅰ 受賞者一覧

平成24年度創成科学Ⅰの受賞者が決定しました。
創成科学の受賞者は、レポートの査読やプレゼン発表などの選考を重ね、最終選考に残った学生の中から決定されます。平成24年度創成科学Ⅰでは最終選考に残った6人の中から、「創成科学優秀賞」が2名、「努力賞」が1名選ばれました。受賞した3人には、平成24年12月5日(水)教授会にて「平成24年度創成科学Ⅰ表彰式」が行われ、表彰状が授与されました。



受賞名学科・専攻氏名テーマ指導教員
優秀賞デザイン学科西川 和貴アッと驚く新しい紙の世界三浦 英夫 先生
優秀賞原子力技術応用工学科大津 咲温泉卵の作り方 ~卵について知る~尾崎 禎彦 先生
努力賞機械工学科屋武 誠良い潤滑剤はどれか?羽木 秀樹 先生

受賞学生のコメント

西川さん
「資源枯渇の問題が取り上げられている今、何か良い方法は無いだろうか」と考えていた時に、バナナの茎から作るバナナペーパーというものに出会いました。
紙パルプでもない、廃棄するはずのバナナの茎から紙を作り出すということに関心を持ち、「私も普通は使わないような素材から紙を作ることはできないか」と思い研究を行いました。
不慣れな為か実験には沢山の時間がかかってしまいましたが、三浦先生のアドバイスのもと、良い結果を残すことができたと思います。この場を借りて先生にはとてもお世話になったことに深く御礼申し上げます。
また、今回の研究から、実験の"計画"の重要性に気付かされました。その点について深く反省し、今後の研究などに生かしていこうと思います。

大津さん
市販の温泉卵を食べていたときに、「生卵でもなくゆで卵でもない」この温泉卵は、どのようにしたら自分の手で作れるのか、興味を持ちました。今回は5通りの方法を考え、保温温度や保温時間を変えて実験をしました。基本的に温泉卵は、卵黄の凝固温度(約70℃)が卵白の凝固温度(約80℃)より低い性質を利用して作られることを知っていましたか?温度や時間に気をつければ、カップ麺容器や炊飯器など身近なものを利用して、誰でも簡単に市販のような温泉卵を作ることができます。
創成科学を通して、自らテーマを決め、実験して学ぶことやプレゼン発表など、とてもいい経験ができました。先生には、いろいろとアドバイスをいただき、本当にありがとうございました。

屋武さん
機械では潤滑剤を利用することが多く、今後使用する際にも参考になると思い潤滑剤の性能の測定実験を行いました。数多くの潤滑剤の中から数種類を実験しましたが、潤滑剤の種類により、その効果が大きく変化が見られたり、ほとんど変化が見られなかったり、自分の想定外の結果が複数見られました。私は初めてのプレゼンテーションと発表まであまり時間がなかったので良い発表はできませんでしたが、次回機会があれば今回の反省点を改善し、より良いものになるように努力していきたいと思います。
 

指導教員のコメント

三浦先生
和紙は日本独自のすぐれた素材で、古くから継承されている日本の伝統的な技の中でも手漉き和紙の魅力は尽きることがありません。主な原料として楮・三椏・雁皮の三種類があげられ、福井県は楮を中心として多くの和紙を生産し、越前和紙の名で日本有数の和紙生産地です。
西川君は、その紙に焦点をあて、他の素材からでも紙が作れないものか挑戦しました。皮を使ったバナナペーパーにヒントを得て、彼が注目したのが身近な野菜たち。繊維質が豊富で紙の原料としての可能性を秘めているのでは…との発想から出発し、紙漉きの手順を参考に彼独自の実験を展開しました。科学的な検証を加えながらの地道な努力の結果は、選考委員の先生方から高い評価をいただき、創成科学優秀賞に結びつけることができました。今回の経験を生かし、これからもチャレンジ精神を失わず、デザイン活動ばかりか何事にも立ち向かって欲しいと願っています。

尾崎先生
大津さんは、様々な処で朝食などに供せられる、我々には馴染み深い「生玉子」でもない「ゆで卵」でもない「温泉卵」について、どうやれば自分で上手に作れるのか、ということに興味を持ち、専用調理器具ではなく身近なもので工夫しながら、その課題に取り組みました。「温泉卵」を上手に作るには保温温度と保温時間が関係しているのではないか、説明できるのではないか、との科学的な着眼から、保温方法などを含めて独自の視点に立った様々な実験条件を設定し、限られた期間内に効率的に、網羅的に、そして、何より根気よく、実験を繰り返していったことは敬服に値します。
そして、良い出来の「温泉卵」は、保温温度と保温時間の積で決まるのではないかとの結論を様々な条件での実験データを提示しながら説得力を持って提案、報告書として的確に纏め上げています。「温泉卵」の上手な作り方という身近な課題ではありましたが、具体的な実験を次々考案し、すぐに実行する、というところに大津さんの積極性が大いに発揮されました。今回、報告書内容、プレゼンテーションなどを通して、創成科学賞選考委員の先生方から高い評価をいただき、優秀賞に選定されましたことを、指導教員としても大変、喜んでいる次第です。

羽木先生
扉を開閉する際に“キィー"と蝶番が音を出したり、襖の開け閉めに大きな力を必要になったり、ネジが回らなくなったりすることを日常生活で経験する。このときに、我々は、蝶番に油を差したり、敷居にロウを塗ったり、潤滑剤スプレーを吹き付けたりする。これらのように、現象に応じて経験的に対応を変えているが、すべて“滑りをよくする"という点では同じである。屋武君は、“滑りをよくする"ための潤滑剤を求めて、ホームセンターに行ったところ、極めて多くの“潤滑剤"が棚に並んでおり、その選択に困ったようである。
“潤滑剤"の働きを理解するためには、“滑り"、“潤滑"、“摩擦係数"を知ることが不可欠で、屋武君は、これらについて高校の「物理」で学んだようである。もちろん、大学で機械工学を学ぶ際にも知っておくことが必要である。
屋武君は、高校での「物理」の授業を思い出して、“潤滑剤"の効果を自分で調べてみようと考えて、この課題に取り組んだ。まずは、“摩擦係数"について高校の教科書で改めて学び、その測定法を調べて、それを測定するための装置を自作した。その後、市販の数多くの“潤滑剤"を購入・入手し、摩擦係数を測定した。『どうなるだろう』との疑問が次々に浮かび、結局、12種類の潤滑剤を入手するとともに、物体と斜面の材料の組み合わせとして4種類を選び、潤滑剤塗布後の摩擦係数の時間変化を調べた。これによって、膨大な測定値が得られた反面、その測定値のまとめ方に苦慮することになった。
指導教員として、疑問に思ったことに果敢にチャレンジしたこと、自分なりの工夫を凝らして測定装置を製作したこと、測定結果を考察しながら多くの実験をしたこと、膨大な測定値をうまくまとめたことを評価したい。この気持ちをこれからも忘れずに、勉学に励んでほしい。