創成科学

平成23年度創成科学Ⅰ 受賞者一覧

平成23年度創成科学Ⅰの受賞者が決定しました。
創成科学の受賞者は、レポートの査読やプレゼン発表などの選考を重ね、最終選考に残った学生の中から決定されます。平成23年度創成科学Ⅰでは最終選考に残った6人の中から、「創成科学優秀賞」が1名、「努力賞」が2名選ばれました。受賞した3名には、平成23年12月7日(水)教授会にて「平成23年度創成科学Ⅰ表彰式」が行われ、表彰状が授与されました。



受賞名学科・専攻氏名テーマ指導教員
優秀賞環境生命化学科梅谷 貴大糠漬の化学甲斐 泰 先生
努力賞経営情報学科笠川 慎矢キーボードの使い心地の違いによる
作業効率の違い
山西 輝也 先生
努力賞原子力技術応用工学科山本 香帆検出器を作ることができるか寺川 和良 先生

受賞学生のコメント

梅谷さん
私の家では昔から糠床をもっており、長年同じ糠床の面倒を見てきました。私自身も糠漬がとても好きで親しみがありました。そんな糠漬を誰もが簡単にかつ美味しく作成する方法を見つけるため今回、家の糠床ベースで作成したものと新しく作成した糠床とを比べることで糠漬を研究しました。
この糠漬は、発酵食品であることは知っているでしょうか。そんな発酵食品である糠漬の中ではどのような菌が共生しているか、それらの菌が外部からの影響や添加物でどのような効果を示すかをいくつかの生物化学的な実験を通して研究しました。また糠漬に生かされている生活の知恵なども科学的に検証することで、昔から菌と人とがどのように手を取り合い共存していたかを知ることもできました。最後に、糠漬は決して難しくないということを多くの人に知っていただきたいと思います。

笠川さん
私は、キーボードの使い心地の違いによる作業効率の違いについて調査をしていきました。そこで、C言語を利用したタイピングのプログラムを作成し、異なる特性を持つキーボードを使用して作業効率(タイピングスピード)を調べました。
調査の結果、キーボードの違いによる作業効率の具体的な差が見えたので、タイピング速度の差を小さくするための改善案を、特性要因図、系統図、マトリックス図などを使用して考えていき、改善案を使用して再実験を行った結果、作業効率の差を小さくすることに成功しました。
私は今回の研究や発表を通して、自分の伝えたいことをわかりやすく伝えるにはどのようにすればいいかを考えるいい機会になりました。また、今後の課題も見つかったので、さらに研究を発展させたいです。また、この経験をこれからの卒業研究や就職活動などで生かしていきたいと思います。

山本さん
放射線検出器というのは安いものでもだいたい数万円します。自力でもっと安く作れないものかと思っていました。私が今回作った霧箱では、放射線の一種であるα線の飛跡を見ることができます。材料は千数百円で揃います。構造は非常に単純で、材料さえ与えれば子供でも作ることができます。しかし構造が単純な分、十分な温度差、放射線の遮蔽を防ぐ、適した材質の容器を使うなど、揃えるべき条件は多くありました。原始的なものだけに、新しい書籍ほど具体的な記述が見当たらないという面白いことにも気付かされました。最終的に飛跡を確認できたのも、周りの方々にいろんなアドバイスをいただき、助けていただいたおかげです。ありがとうございました。
 

指導教員のコメント

甲斐先生
日本人は米を筆頭に、種々の穀物を食用としています。穀物を精白すると、果皮、種皮、胚芽などが穎果(えいか)と呼ばれる果実から剥がれ落ちます。これらを集めたものが糠と呼ばれ、油分が多いことから油を搾ったり、栄養価が高いことから糠漬けの糠床に利用されています。
梅谷君は、自分の家庭で昔から食用にしており自身も大変好きな糠漬けについて、生物化学的視点から様々な実験を行い、糠漬けに生かされている生活の知恵を科学的に検証することによって、自然から学ぶ手法を深く理解されました。糠漬けは家庭ごとに味わいが異なり、長年丹精して育ててきた糠床が各家庭の自慢でもあります。新たに糠床を作るには、糠床にオリジナリティーを付加するには、糠床をいい状態に保つためには、といった課題に対して、具体的な実験を次々考案しすぐ試してみる、というところに梅谷君の積極性が大いに発揮されました。創成科学優秀賞への推薦は今回の梅谷君が初めてでしたが、選考委員の先生方の高い評価をいただいたことを、指導教員として大変喜んでいます。

山西先生
パソコンの作業をしている多くの人が経験するキーボードが変ったときの違和感について、笠川君は調査・実験をしました。
友人数名に被験者になってもらい2種類のキーボードで独自開発したタイピングソフトを使い入力時間を実測し、違和感が実際にタイピングに影響を与えることを有意な違いで見出しました。そして違いの原因について特性要因図を作成し、異なるキーボードにおいても安定したキー入力ができるように、キーボードの改良について考察を行いました。このとき明らかにされた種々の要因について入力への影響と改良に伴う費用対効果を調べ、コストを掛けない方法でキー入力の時間短縮を目指しました。改良の結果、再度、数週間後にタイピング測定をしたところ、被験者全員が得意な方のキーボードによる入力時間に近づくことができ、改良の効果を示せました。これらは笠川君がすべて自分で考え結果を導き出したことで、高く評価できると思います。また、審査のための発表もかなり練習をして努力しました。その結果、創成科学努力賞に輝き、彼に取りまして大いに自信になったことでしょう。おめでとう。

寺川先生
平成23年3月11日、東北地方太平洋沖地震による巨大津波に起因して発生した福島第一原子力発電所での過酷事故により、不幸なことに放射線検出器が身近なものになってきてしまいましたが、放射線検出器はやはり高価なものです。
山本さんは、安価な身近にあるもので放射線検出器を作ることができるかに挑戦し、放射線の飛跡を肉眼で観察できる「霧箱」の製作に着手しました。まず、霧箱の原理から調査し、安価なもので製作できる「拡散型霧箱」をつくりましたが、なかなか放射線の飛跡を観測することはできませんでした。このため、製作上のノウハウを調査するとともに、材料の工夫を行い、4回目の製作方法でようやく放射線(α線)の飛跡の観察に成功しました。自ら調査し、工夫し、放射線源を濡らさないこと、霧箱内の温度差、容器の冷却方法、密封方法などが重要な着目点であること探り当てて、試行錯誤の末、成功したもので、壁にぶつかった時の試行錯誤、調査、工夫など物を作る上での基本に沿って、あきらめずに挑戦していった姿勢が高く評価でき、創成科学努力賞に輝いたことは大変嬉しく思います。