創成科学

平成22年度創成科学Ⅰ 受賞者一覧

平成22年度 創成科学Ⅰの受賞者が決定しました。
全受講生411人のうち、レポートの査読やプレゼン発表などの選考を重ね、最終選考に残った8人の中から、「創成科学優秀賞」が2名、「創成科学努力賞」が1名、それぞれ選ばれました。受賞した3名には、平成22年12月8日、教授会にて「平成22年度 創成科学 表彰式」が行なわれ、表彰状が渡されました。


受賞名学科・専攻・コース氏名テーマ指導教員
優秀賞環境生命化学科北川 翔一紅茶を用いた色素増感太陽電池の作製原 道寛 先生
優秀賞デザイン学科武長 諒亮竹とんぼ重量配分による滞空時間の変化吉野 剛 先生
努力賞原子力技術応用工学科清水 恒輝太陽電池を用いた無線光通信の基礎研究と
その応用
尾崎 禎彦 先生

受賞学生のコメント

北川さん
太陽電池というと今では一般に使用されているものですが、この創成科学の実験を行うまで、どのような原理で発電しているのかなど詳しくは知りませんでした。実験の前に太陽電池について調べたところ色素増感太陽電池というものを知り、自分の好きな紅茶の色素を用いて実際に作ってみたいと思い、このテーマにしました。この実験を通して、紅茶を用いて、色素増感太陽電池が作れたことやその基本的な作製過程や変換効率の求め方など様々なことが学べました。この実験で学べたことをこれからの学生実験や卒業研究などに生かしていきたいと思います。

武長さん
竹とんぼは大学生や大人が遊ぶようなものではないと誰もが思いますが、スーパー竹とんぼを知ればそれは間違いだと気付くでしょう。スーパー竹とんぼは工業デザイナーの秋岡芳夫氏によって考案され、数秒しか飛ばなかった竹とんぼが10秒、20秒も飛ぶまでに発展しました。私は今回20秒飛ばすための一つの方法について研究することでその奥深さを垣間見ることができました。皆さんは20秒飛ばすためにどんなアイデアを思いつきますか?

清水さん
高等学校の部活動で、私は無線光通信の実験を行いました。その時に生じた疑問点や光通信の原理を調べようと思い、このテーマに決めました。その疑問点とは、光通信の回路にコイルを組み込み、鉄心を入れるだけで音が変化する、というものでした。高等学校のころ、私は物理を選択していなかったので、たかがコイル1つと鉄心1本で、なぜ音が変化するのか、ということがわかりませんでした。また、音の伝達には、無線マイクなどがよく使われますよね。しかし、無線のような電波ではなく、光を使って音の伝達ができるのです。なぜ、こんなことができるのか、という原理も調べていきました。
光通信はあまり表に出ていませんが、これをきっかけにして、こんな方法で音を飛ばせるんだ、と感じていただけたら嬉しく思います。
今回の発表で、プレゼンテーションの難しさを改めて知り、もし次の機会があればより良いものになるように努力していきたいと思います。
 

指導教員のコメント

原先生
資源やエネルギーの枯渇化および地球環境問題の一つの解決策である太陽電池に興味を持ち、太陽電池の中でも特に無機・有機ハイブリット太陽電池である色素増感太陽電池に着目し、これまで研究されてきた色素が高価なことに気が付き、身近なもので代用できないかと考えて、取り組みました。
本研究では、「紅茶を用いた色素増感太陽電池の作製」と題して、身近な色素を用いて自ら太陽電池を作製し、その性能評価を行い、紅茶色素による光電変換の研究を行いました。この研究は、彼自身が太陽電池の作製と評価を遂行するとともに、その過程で、自ら進んで諸先生方や諸先輩の力を借り、他人の知識や技術も吸収しながら、自分のアイディアを盛り込んでいく姿勢がみられ、机上での勉強だけでは得がたい知識や探究心を実践から培ったと思います。また、彼からの刺激が本研究室によい影響を与えました。これは、彼の前向きな取組の結果だと思います。今回、優秀賞に輝いたことは、彼の取り組みが評価された結果であり、本人のみならず、彼をサポートした環境生命化学科の先輩にとっても励みになったようです。

吉野先生
私達昭和世代であれば子供の頃、竹とんぼで遊びに興じたことは、誰しもが経験し、共有する思い出として、強烈に残っているものである。しかしながらその制作過程の曖昧さからか、あまり飛ばないためにすぐに飽きてしまい、なぜ飛ぶのか、ましてやよりよく飛ぶ為にはどうすればいいのか、と言った疑問も抱くことなく、いつしか古い記憶として整理されてしまっているものである。今回スーパー竹とんぼなるものが存在し、飛躍的に飛行能力が高められることに私自身驚かされたが、そのような何気ない竹とんぼに平成世代の武長君が着目し、研究するに到った事に先ずもって評価したい。
また本研究は、彼がモーメントや揚力といった中学校・高等学校で学んだ理科・物理の知識(大学1学年においても学んだ?)と、研究対象であるスーパー竹とんぼを自らの工夫で製作し、また慣性モーメント並びに揚力について、専門的な実験機器に頼ることなく、自身の身の回りにあるものを用いて、仮説に基づき、各種実験方法(3種)を創造し、観察・記録・考察・結論としてまとめ上げた努力は、高く評価するものである。

尾崎先生
本研究は、清水君が高校時代から温めてきたテーマを取り上げ、課題整理と課題解決のための実験内容、必要な実験器材の選定、さらには実験方法を短時間の中で周到に計画立案し、実施した。また、実験途中で生じた新たな課題解決のため適宜、実験を追加し、併せて必要な電気工学的知識の獲得に自発的に努め、実験と理論の両面から検討し、得られた実験結果について今後の応用も含めて的確な考察を加えている。レポートの内容、発表・質疑応答とも優れたものであり、努力賞の栄誉に輝いたことは指導教員としても大変喜ばしいことである。