熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.86
大学院 社会システム学専攻(博士後期課程) デザイン学コース
松原 かおり

theme:第2回SDGsクリエイティブアワード「SDGsローカルアクション映像大賞・学生」受賞

SDGs(Sustainable Development Goal:持続可能な開発目標)は、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までの国際目標。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されている。このSDGsの実現に向けて、世界が抱えている課題や地域での協働アクションをあらゆる方法で表現した映像作品を募集しているのが「SDGsクリエイティブアワード」だ。松原かおりさんはSDGsローカルアクション映像の学生の部で大賞を受賞。今回の映像作品の完成に至るまでの経緯を聞いた。

芦見地区を美しく映像に

松原さんが制作した作品は、福井市芦見地区で炭作りを通して街の人と山の人を繋げる活動を行っている『限界集落A43(Ashimi)』代表である藤井啓文さんの活動を紹介する映像。木の伐採から炭焼き、山林の保全活動だけでなく、経験したことのない若い人たちにも体験してもらおうとワークショップも開催している。松原さん自身もこの活動に取り組み、一緒に炭焼きを手伝いながら今回の映像を制作した。芦見地区の自然、そして炭を中心に楽しく里山ライフをチャレンジする活動を美しい自然と共に映像にまとめたことが評価につながった。「興味があって自分が参加している活動がたまたま映像の題材にピッタリで、ぜひみんなに伝えたいと思って制作しました」と語る松原さんは、大学院で学ぶ研究者であると同時に、実は福井工業大学でデザインを教えている非常勤講師でもある。


デザイナーから大学講師へ

以前はWEBディレクターとして神戸で勤務していたという松原さん。そこからデザイン講師の紹介を受け、9年前に福井に移住してきたという。「会社では後輩たちに教える立場になり、人に教えるということが面白いなと感じていました。ちょうどそんな時に講師になる話を受けたので、やってみようと思いました」。
福井に来てから講師として働き出すと、次第に教育の面白さにのめり込んでいった。「学生たちが自分の限界を突破した瞬間を見るのが楽しいです。一人で作品など作り上げる学生もいますが、できないと嘆いていた学生にヒントを与えて、その後『できたぞ、どうだ』って自慢げに話す学生を見ると嬉しくなりますね」と笑顔で話す松原さん。本格的に大学教授への道に進むことを決め、博士号を取得するために2年前に社会人入学で大学院の修士課程に進んだ。その間も非常勤講師として勤め、授業の一環で学生たちに応募を進めたのが第1回目のSDGsクリエイティブアワード。しかし、学生たちの作品は受賞に結びつくことはなく、次回は松原さん自身が作品を応募しようとリベンジを誓った。


想いを込めた映像

テーマに選んだのは6年前から自身も活動に参加していた『限界集落A43(Ashimi)』。松原さんは自然に触れ合うのが好きで、小学生のときには自宅の近くの空地を借りて畑を耕し、とうもろこしやピーマンなど作っていたというほど自然愛が強い。そのため、福井に移住してすぐに出会った藤井さんの街と山とをつなぐ活動にこの上ない魅力を感じるとすぐに参加を決める。大学の講師をしながら、空いた時間には藤井さんと共に芦見地区に同行し、炭焼きやワークショップなどの山の活動に勤しんだ。活動の度に写真を撮影することはあったが、炭焼きの作業工程や技術をしっかりと残したいと考えるようになり、2年前から動画の撮影もするようになった。記録もあり、活動に触れていた想いもあり、まさに映像作品にするには絶好の機会であった。
しかし、応募の作品自体は3分以内の映像。短い時間の中でこれまでの想い、伝えたいことを絞り込むのは難しい作業だったという。「改めて藤井さんにインタビューを撮影しようと、今までに語ってくれた言葉を簡潔に話すよう頼んでも、結局1時間ぐらいのインタビューになるのでそれをどう短くするか、編集が大変でした」。炭焼き小屋の熱でカメラをダメにすることや、慣れない映像編集にも苦労することもあったが、なんとか作り上げることができた。受賞の結果をメールで確認したのは、藤井さんと一緒に芦見地区へ向かう車中だったという。「藤井さんが一番喜んでいました。それを見て、本当に嬉しかったですね。やってよかったなと思いました」。


新しいものを作っていく


今回の受賞で周りの認知度が上がり、活動を知るきっかけになっていると実感している松原さん。この映像作品を自身の修士の作品としても取り扱い、アンケート調査や検証を重ねて観光同素材からプロモーション作品も制作した。また、芦見地区では自ら畑を耕したり、炭の商品開発を考えるなど、ますます積極的に活動にのめり込んでいる。「今は働いてくれる人を作ることですね。おんじ(藤井さん)も72歳なので。他にも新たな炭の提案も考えていきたいです。A43の中から生まれるコンテンツを広げたいですね。もちろん今は大学院の研究者という立場もあるので、問題解決のテーマも探しています」。考えや興味が様々にリンクし続けている松原さん。その行動力が生み出すこれからの新しいコンテンツに期待せずにはいられない。

<映像作品>
第2回SDGsクリエイティブアワード
SDGsローカルアクション映像大賞・学生
松原かおり・一般社団法人限界集落A43代表藤井啓文
この場所に来れば、誰かに会える。



学年学科名等は、取材時のものです。