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日本一を目指しながら、「ホッケー教室」で中・高生の技術向上を支援

スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 4年 女子ホッケー部

中村 穂ノ佳

技術の向上と指導者育成を目指す女子ホッケー部で活躍する中村 穂ノ佳さん。日本一を目標に練習に励みながら、「ホッケー教室」で高校生や中学生に技術指導も行っている。2024年3月には、能登半島地震の被害を受けた石川県立金沢北稜高等学校の女子ホッケー部を招いて本教室を開催。部活動の取り組み方や、教室を通した交流などについて伺った。

ホッケーの魅力は、チームプレーとスピード感

高校進学時に「これまでにやったことがない、初心者でもできるスポーツに挑戦しよう」と決めていた中村さんは、ホッケー部に入部。地元の鹿児島県内の高校で女子ホッケー部がある2校のうち1校が、中村さんが入学した高校(武岡台高校)だった。

ホッケーは、先端が湾曲したスティックでボールを進め、相手チームが守るゴールへ入れて得点を競う。1チーム11人で戦い、スティックを使用することを除けば、サッカーに似た競技である。スティックの片面は平らで、もう片面は丸みを帯びているが、ボールに接触してよいのは平らな面だけだ。そのため、ボールを転がして運ぶドリブルを行うときは、スティックを素早く回転させなければならない。「初心者だったので、スティックの片面だけでボールを動かすのがものすごく難しかったです」と中村さん。しかし、上達するにつれてホッケーのおもしろさに惹かれていく。「仲間とボールをつなぎながらゴールに迫っていくときが1番わくわくします。点が入った瞬間のうれしさは何とも言えません。ホッケーはサッカーよりも展開が速くスピード感があって、プレーと観戦のどちらでも楽しめるところが魅力です」。

大学でもホッケーを続けたいと、2021年に福井工業大学に入学。女子ホッケー部は2020年に創設されたばかりで、既に歴史があるチームよりも、自分たちでチームづくりを行い、歴史を築いていけるところに惹かれたという。2024年4月には新たに10人が入部し、総勢23人で、春と秋に開催される「関西学生ホッケーリーグ」や「全日本学生ホッケー選手権大会」での優勝を目指していく。

部員主体の積極的な活動スタイルでチーム力が向上


ホッケー部の練習場所は男女とも、越前町の朝日総合運動場にある人工芝ホッケー場である。平日は夕方から、土日は午前中に開始し、午後も引き続き行うのが基本である。「ホッケー場が3面もあって、広々としたところで練習できて環境にめぐまれています」と中村さん。すぐ近くにある福井県立丹生高等学校の女子ホッケー部は、全国大会を何度も制覇している強豪で、両校で練習試合を行うこともあるそうだ。

福井工業大学女子ホッケーチームのモットーの一つは「全員守備・全員攻撃」。中村さんのポジションはディフェンスだが、状況に応じて攻撃にも加わっていく。練習では、2人でボールを打ちあうパス練習の後に、守備と攻撃に分れて実践的な試合をイメージした対人練習を行い、さらにゴールに向かってシュートの練習を繰り返す。

チーム最大の特色は、練習メニューなどを部員同士で話し合って決める活動スタイルだ。「他大学では監督の指示で練習を進めるところが多いと思いますが、私たちは、例えば試合があったら、翌日にはそのビデオを見て反省点や課題を確認し、これらの改善をポイントにした練習方法を自分たちで考えています」。また、下級生への指導は、監督から指導を受けた上級生が積極的に行い、技術やチーム力、指導力の向上につなげている。

指導者育成につながる「ホッケー教室」で被災校のチームを支援

中村さんたち女子ホッケー部員は、将来の指導者としても期待されている。ホッケーの競技人口は他の競技に比べ少なく、メディアでの露出度も高いとはいえない。ホッケーの魅力を発信し、競技人口を増やすには指導者の育成が重要という考えの下、部員たちが高校生や中学生に技術指導する「ホッケー教室」を、同じく朝日総合運動場の人工芝ホッケー場で実施している。ホッケー部を設けている中学校・高校は少ないが、これまでに、石川県立金沢北稜高等学校、県内の鯖江市鯖江中学校の女子ホッケー部が参加している。

教室では、パスのフォームといった基本から、守備と攻撃の実戦的な技術までを指導。事前に部内で話し合ってプログラムを決め、強いパスを出す方法や、相手をかわしてゴールまで向かうテクニックなどを、デモンストレーションを交えながら教えている。「大学生ならではのボールの速さやプレーのスピード感を体験してもらうことができ、終了後は『参加してよかった』『楽しかった』という声をいただきました」と中村さん。一方、基本から外れて身に付けてしまった癖を直したり、より強いチームに勝つために必要な対策を教えたりするなど、高度な内容をわかりやすく伝えることの指導の難しさも感じている。

2024年3月2・3日には、改めて金沢北稜高校の女子ホッケー部を招き「ホッケー教室」を開催した。同校は、1月1日に発生した能登半島地震により通学路が崩落するなどの被害が発生。「震災の影響で部活動ができない状況だから、福井に来てもらい、ホッケー教室の形で練習や交流を行ったらどうか、とみんなへ提案したところ、全員から満場一致で賛同を得ることができました」。早速大学へ、「地震で被災した石川県のホッケー部を、スポーツの交流を通して少しでも力づけたい」と申し出て実現した。


場所は、福井工業大学が若狭町の旧岬小学校を利活用して設けた「若狭町みさき漁村体験施設みさきち」で、体育館やグラウンドはもちろん、宿泊施設も備えている。教室の内容は、これまでのメニューに加え、全員による試合形式の練習も実施した。また、1日目の夕食後には、オリンピックの試合をビデオで観戦し、ゲーム分析の方法について指導する時間も設けられた。金沢北稜高校の部員からは「こういう教室が増えたらうれしい」という感想が聞かれ、今回の教室に参加したことで、今後の部活動に希望を持ってもらえたようだ。

ホッケー部で培ったコミュニケーション力を社会でも発揮


「私は大勢の人がいる中で発言するのが苦手でしたが、ホッケー部でミーティングを重ねたり、高校生や中学生に教えたりしているうちに苦手意識が無くなり、自分の考えを伝えることができるようになりました」と話す中村さん。卒業後は鹿児島に戻り、企業に就職する意向だが、ホッケー部の活動を通して身に付けたコミュニケーション力は、社会人になってからも活かされると考えている。また、国体などに出場できる地元の成年チームに所属してホッケーを続けることも念頭にあり、実現すれば、選手や地域スポーツ指導者としての活躍が期待される。


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