熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.038
原子力技術応用工学科4年
大津 咲
theme:4年間の学生生活を振り返って

原子力エネルギーについて学びたいと原子力技術応用工学科に入学。「4年間の学びを通して、原子力という分野への興味や探究心はますます深まりました」という大津咲さん。就職活動では「原子力の現場で働きたい」という明確なビジョンを持って挑み、念願の電力会社への内定を獲得。入社が目前に迫った今、期待と不安を胸に新しい仕事に想いを馳せる日々を送っている。

身近な存在だった原子力発電


大津さんが育ったのは茨城県の大洗町。原子力発電所や関連の研究所がある東海村に近く、大洗町にも研究開発センターがあることから、原子力は彼女にとって割と身近な存在だったという。父親も原子力関連の仕事に携わっており、高校生になると「原子力エネルギーっておもしろそう」と興味を持ち始めるようになる。

そんな彼女はいわゆる理系女子。理数科目が得意で高校では理数系のクラスに在籍。原子力を勉強したいと進学先に選んだのが福井工業大学だった。「原子力を学べる大学って少ないでしょ。悩んでいる時に進路室の先生から原子力なら福井にいい大学があるよと教えてもらいました。福井にも原子力発電所があるし、福井にしようって」。

東日本大震災を機に目的意識が明確に


大学入学が決まり、高校最後の春休みを地元の友人と楽しもうと思っていた矢先、東日本大震災が発生。大津さんの自宅も被害を受け、不自由な生活を送ることになってしまう。「家は倒壊しなかったものの家中ひびだらけ。停電が続き、水道も止まってしまい、まさにサバイバル生活でした。余震もすごかった」。そんな不安な日々が続く中、東海村のモニタリングポストの線量が上がったというニュースを目にする。そこで大津さんが行動に移したのが、洗濯物は外で干さない、外出は極力控えるということ。「だって不安じゃないですか。放射線の値がどこまで安全なのか、どこからが危険なのかまったくわからない。もともと興味はありましたが、この事故を機に、あらためて原子力や放射線についてしっかりと学ばなければいけないと強く感じました」。

原子力エネルギーってすごく興味深い


1年次の授業は主に放射線の基礎分野が中心で、原子力発電に関連する授業は2年次以降から。「放射線の勉強をして第2種放射線取扱主任者の資格も取りましたが、やっぱり原子力発電の方がおもしろい。ウラン235があって、核分裂して…と、いろんな知識が必要なんです。数学や電気、機械といった工学分野全般の知識が揃わないと原子力発電は成り立たない、そういうところがすごいと思うと同時にさらに興味がわいてきました」。
学べることはとことん吸収しようと授業に熱心に耳を傾ける。白衣をまとい、線量計もつけ、入退出の厳しく管理されている実験室で行われるアイソトープを使った実験も、緊張というよりも、とにかく楽しくてしょうがないといった様子。そのうち彼女の中で卒業後は原子力発電所の現場で働きたいという明確なビジョンが見え始めていた。

不安でいっぱいだった学生生活

原子力を専門に選ぶ女子学生はまだまだ少ない。大津さんが入学した年は、35名中、女子は彼女一人。明るく物怖じしない大津さんだったが、当初は楽しく学生生活が過ごせるのか、不便はないのか不安でいっぱいだった。しかしそんな不安はすぐに解消される。積極的で明るい性格も功を奏したのかもしれないが、「自分からもいろいろと話しかけたりもしたし、気さくに話しかけてくれる男子もいて案外すんなり馴染むことができましたよ」というように、男子学生の中に溶け込み、不自由なく楽しく学生生活を送ることができようだ。そんな彼女が誰よりも信頼を寄せていたのが同学科の来馬克美教授。「女子一人なので何かと気にかけてくださったのが来馬先生。福井県の職員として行政の立場で原子力発電所の安全対策や防災対策、地域共生に取り組んできた原発のスペシャリスト。すごい先生なんだけど、学生と同じ目線で考え楽しんでくれる。授業も普段も変わらず、誰からも慕われています。そんな先生を頼って、研究室に入り浸っていましたね。学生生活、勉強といろんな面でサポートしてくれました。先生にも、友人にも恵まれましたね」と笑顔をのぞかせる。


強い信念と努力で難関を突破

「就職するなら、原子力の現場で」と信念を持ってスタートした就職活動。「4年間住んで愛着もあったし、せっかく福井の大学で勉強したのだから」と目標にしたのが関西電力だった。技術職の入社は電気部門と機械部門のみのため、電気系の職種で挑むことにしたが、電力会社への入社は難関中の難関。筆記試験は第3種電気主任技術者合格レベルという非常に高度な知識を必要とされるという。「電気も機械も勉強しましたが基本レベル。決めたのも12月と遅かったので、このままでは絶対に受からない」と、入社試験までの2カ月は研究室にこもり、ひたすら第3種電気主任技術者の試験問題を猛勉強する日々。
「全然できなくって、まったく自信がなかった」というものの、無事筆記試験を通過。3度の面接を経て、ついに手にした念願の内定の知らせ。「嬉しいの一言。電気の勉強をしていても全然わからなくて不安もいっぱいでした。毎日死ぬかと思うくらい勉強する大変な日々でしたがあきらめないでよかった」。小さい頃からやると決めたことは最後までやり抜くという強い信念と努力で、夢の第一歩への切符を手に入れた瞬間だ。


安全確保で貢献したい


「大学で学んだことを活かしたいですね。地域の安全を守る放射線管理なら力になれるはず。大飯か高浜のプラント勤務になると思うので、安全確保に貢献したい。事故が起きた時にしっかり対応できる現場のスキルアップが大切。そうしたことも貪欲に学んでいきたい」とこれから始まる仕事に想いをはせる一方、「現在プラントで勤務している女性は一人。現場を志望したのはいいけど、圧倒的に女性の少ない職場でやっていけるのか心細いです」と不安も口にする。しかし、持ち前の明るさとバイタリティーできっと数々の悩みや困難もクリアし、自分の進むべき道を突き進んでいくに違いない。



学年学科名等は、取材時のものです。