FILE No.6

原子力技術

原子力技術応用工学科 平成22年度卒業

赤松 岳明

平成23年3月に福井工業大学原子力技術応用工学科を卒業した赤松岳明さん(23才)。「将来は原子力・放射線関連の仕事に」という夢を叶えるため、在学中は積極的に資格取得にチャレンジ。大学1年の時に第2種放射線取扱主任者に合格、2年の時には難関である第1種をみごと取得した。現在は、 日本原子力研究開発機構 原子炉廃止措置研究開発センター(ふげん)に勤務。運転を終了した原子力発電所の廃炉作業並びに廃止措置に関した技術開発の現場で多忙な日々を送っている。

資源が乏しい日本における原子力・放射線


赤松さんが原子力・放射線に興味を持ったのは高校3年の頃。日本のエネルギー自給率の現状についての授業がきっかけだった。ちょうど将来の進路について考え始めていた時期でもあった。「資源の乏しい日本では原子力・放射線はすごく実用的で、今後ますます必要になっていく資源だと感じました。そう思った途端、原子力・放射線に興味が沸いてきたんです。その時だったと思います、この道に進もうと決めたのは」。

大学でより専門的な知識を学びたい。進学先をとことん調べ、決めたのが福井工業大学 原子力技術応用工学科だった。「当時、原子力・放射線を専門的に学べる唯一の大学だったんじゃないかな。福井県には実際に原子力・放射線の応用施設が沢山ありますし、実践的なことも学べると思ったからです」。

「必ず原子力・放射線関連の仕事に就く」という強い信念で入学

期待と希望を胸に大学の門をくぐった。
原子力技術応用工学科は定員20名に対して教員10名(当時)という超少人数教育で、実習や実験も多い。原子力・放射線関連企業の実務技術者やOBを招いた授業や学外施設の見学や実習に出る機会もある。赤松さんは入学当初から、学べることはトコトン吸収し、必ず原子力・放射線関連の仕事に携わるという強い決意を心に秘めていた。


入学後間もなく、放射線取扱主任者の資格のことを知った。放射線取扱主任者には第1種と第2種があり、放射性同位元素や放射線発生装置の取扱に関する放射線障害防止について監督することができる資格のこと。
「一般的には社会人が目指す資格で、学生時代に取得するのは難しいと聞いていました。でもこれに関する授業を受けていましたから、学んで得た知識を試してみようと思ったんです。先生方からは『社会で通用する資格に挑戦しなさい』と言われていましたし。できることは挑戦してみようって思っていました」。


赤松さんの猛勉強が始まった。
本人は「好きで勉強していたので、猛勉強という実感はないのですが・・・」と謙遜気味だ。
入学早々の1年生の夏、「第2種放射線取扱主任者」に合格した。努力の結果だ。
次に目指すのは「第1種放射線取扱主任者」。しかし、第1種の試験は大学生にとっては難関中の難関である。東京大学や京都大学の大学院生クラスの知識が必要で、取得のためのコースもあるほどの資格なのだ。


在学中に難易度の高い資格に挑む


赤松くんは気を引き締め直した。
授業をメインに、空き時間や授業終了後は図書館で勉強する毎日。学科でも徹底した補講を開講してくれた。1日5~6時間、休みの日は8時間以上机に向かっていた。
「過去問が大切だと聞いていたので、それを中心に勉強しました。授業で学んでいたので過去問も理解しやすかった。授業は大切だと実感しましたね。それから先生方にも随分助けていただきました。分からないことがあれば必ず聞きに行ってましたね。とにかく熱心なご指導でした。本当に感謝しています」。

2年生の夏、第1種の試験に挑戦した。
試験終了後「できた!」という手ごたえを感じていたという。


そして合格発表の日。
初挑戦にして第1種放射線取扱主任者試験に合格した。大学生で、しかも2年生で合格するのは異例中の異例なのだ。

家族、先生や友人、そして大学全体が合格に驚き喜びに沸いた。マスコミでも取り上げられるほどだった。だが、当の本人はいたって冷静。「合格を知った時はすごくうれしかった。でも、それ以外にもまだまだやるべきことがあるって思っていたので、気が緩むことはなかったですね」。


弱点を克服したい。新たな資格にも挑戦


そんな彼でも苦手とする分野があった。「電気」である。
「原子力・放射線には様々な分野の知識が必要です。原子核物理とか放射線化学等の物理・化学分野に加えて、発電に関する知識も必要です。勉強するうちに、自分の弱点が電気だということに気付きました。これは今のうちに克服しておかなきゃいけないなって」。弱点克服のため、そして将来的に必要となるだろう資格にも挑戦。卒業までに「第3種電気主任技術者」、「技術士補」の資格も取得した。「3種は取れましたが、それでも電気は今でも苦手かな」と苦笑いする。

大学入学後はクラブやバイトなどのキャンパスライフを満喫する学生が多い中、将来のために勉学や資格取得に励んできた大学4年間。「周りは全然気になりませんでしたね。将来のビジョンを持ち学科も決めて入学したので、大学では将来の基盤をしっかり築こうって決めていました。いつも目標に向かっていたので充実した学生生活を送れたと満足しています」と大学生活を振り返る。

仕事に役立つFUTでの学び


福井県には、日本独自技術で開発した高速増殖炉(もんじゅ)と、新型転換炉(ふげん)があり、どちらも仏様の名前を頂いている。このうち新型転換炉(ふげん)はその役目を終え、原子炉廃止措置研究用原子炉(ふげん)として活躍している。
赤松さんは現在、原子炉施設の廃止措置に向けた計画の策定や原子力施設から放射能を取り除き、安全に解体をするための研究開発を進めている原子炉廃止措置研究開発センターに勤務。

設備保全課に配属され、配管の見回りなどの保守・メンテナンスの仕事から始めている。「ようやく仕事に慣れてきました。学校で学んだ原子力・放射線や材料に関する知識が役に立っています。電気や機械出身の同僚が多い中で、社会人1年生でも原子力・放射線に関してわかっていることが多いんです。知っているから頼りにもされます。FUTでも、特に原子力技術応用工学科は学んだことが直接仕事に活かせると身を持って感じています」。

今目指していることがある。第2種電気主任技術者の資格だ。「大学では第3種をとりましたが、もう一つ上の資格が必要。第2種があれば発電所の電気主任者になれるんです。ふげんでは電気主任者が不足していますからね」。前向きな姿勢は学生時代から変わらない。

変わったことといえば、スポーツを始めたことだろう。
「小学校6年間は空手、中学・高校6年間は柔道をやってまして、実はスポーツ少年だったんですよ。大学ではまったく運動しませんでしたけどね」とやや反省気味に話す。今は、昼休みになると3kmほどランニングするのが日課。職場の人に誘われゴルフも始めたようだ。「学生時代に比べると12~3kg痩せました。おかげですごく体調がいい」と笑顔がこぼれる。

自分に厳しく、目標に向かって努力してほしい


就職塾での様子

今年(平成23年)9月の学園祭で行われた「就職塾」にOBとして参加した。後輩からは就職等についての質問が飛び出した。
「大学では自分で勉強しようと思えばできるし、手を抜こうと思えばいくらでも抜ける。将来のビジョンがあるなら、自分に厳しくした方がいい。やる気があればいろんな方がサポートしてくれます。先生も親身になってくれますし、環境も整っています。原子力・放射線に携わりたいと思っているなら、まず希望の企業に就職し、スタートラインに立たなければいけない。そのためにできることに取り組んでいくことが大切です。特に原子力技術応用工学科に入ったなら、原子力・放射線に携わる覚悟で入学してほしいと思います。
また、就職活動時は積極的にキャリアセンターを利用して下さい。就職サポートがしっかりしていて頼りになります。僕も随分お世話になりました。履歴書の指導をしてもらったり、お礼のタイミングなんかも教えてもらいました。社会に出てからも役立つことが多くて助かってますよ」。

ふげんの跡地を緑豊かな土地に戻したい


原子力の現場に携わって7ヶ月が経った。
「今は、点検、整備という自分がやるべき仕事にしっかり取り組むこと。そしていずれは新型転換炉(ふげん)の跡地を放射性物質がない、緑豊かな大地に返したいな」という赤松さん。
彼なら強い意志を持ち、実現に向けて努力し続けていくに違いない。


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