熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.84
工学部原子力技術応用工学科3年
前川 郁渡
theme:海外原子力機関研修

福井工業大学では、2016年から原子力規制庁の支援で「コンプライアンス意識を持つ、GLOCALな原子力人材育成」事業を実施している。その一環として、フランスの原子力関連機関の研修へ臨んだ1人が前川郁渡さんだ。

※GLOCAL・・・グローバル(Global:地球規模の)とローカル(Local:地方の)という言葉を掛け合わせた造語。

原子力技術を学びたいという意志


原子力技術応用工学科では、国際的な視野を持ち、地域で活躍する原子力・放射線技術者の育成を重視した教育を行なっている。基礎だけでなく、国内の原子力発電所での現場研修などを通して知識を得るが、その中でも高い技術力が学べる海外原子力機関の研修は特別なものだという。「普通では絶対入れない場所。貴重な体験ができるので、ぜひ見てみたいと思いました」と話す前川さん。その原子力技術の学びに対する熱意の理由はある出来事だという。実は前川さんは岩手県出身で、小学5年生のときに東日本大震災を経験した。当時、家族は無事だったが、原発事故や津波の恐ろしさを間近で感じた。それが成長するにつれ、しっかりと原子力技術を学びたいという意志に変わっていったのだ。大学に入ってもその想いは変わらず、先生から海外原子力機関の研修の話を聞いて、すぐに参加を決意した。

技術だけでなく英語も習得する


海外原子力機関研修は約10日間、前川さん含め10名が参加した。行き先は原子力先進国のフランス。原子力発電所の廃止措置で高い知見・技術力を持っているため、学ぶべき内容も多い。研修はフランス原子力規制機関(ASN)、フランス電力(EDF)、フランス原子力・代替エネルギー庁(CEA)を巡り、各施設の見学と担当者との意見交換会を行う行程だ。
まずは現地に行く前に事前研修がある。現地研修の約3か月前から準備として、フランスの原子力機関の概要を学びながら、3つのグループに分かれ、それぞれが現地で質問する内容を考える。もちろん質問は英語なので、プレゼン資料も英語で用意しなければならない。英語での原子力規制の専門用語の勉強も合わせて行う。

チャンスを経験に変える

「大変でしたけど、英語を話したりするのは抵抗がなかったので、むしろ楽しんで取り組みました」。前川さんは高校からずっと続けているカヌーがきっかけで、大学1年生のときにハンガリーとポルトガルに約1か月半の間、海外合宿生活をした経験があった。そこで日常会話ができる程度は習得していたのだ。
現地で質問する項目はグループの中でもそれぞれ担当者を振り分ける。前川さんの担当する質問はCEAで高速炉開発に関する質問になり、何度も練習をして担当の先生に見てもらう。それでも内容が伝わるかという不安は拭えなかったという。実際に現地に行き、担当者を前に何とか形にすることでホッと肩の荷が下りた。また現地研修では施設を回る中で、驚くこともたくさんあったという。「施設のスケールが日本と違うので、見学中にも担当者に英語で質問しました。こんな機会ないと思って行動することで、多くのことが経験できました」


経験が自信へと繋がっていく


前川さんは研究室で自身の卒業研究に向けて準備を進めている。内容は除染土壌の減容化だ。セシウムの除染土壌の場合、ただそのまま表土を数cmはぎ取って、回収するだけでは膨大な土壌の量になってしまう。しかし、セシウムには土の中でも粘土層にある小さい粒子の表面や層間に吸着するという特性がある。そこで、除染土壌中の総体積は数%と小さいが総表面積が90%以上と大きい粘土層だけを回収すれば、土壌自体の量が減る、つまり減容化ができるというわけだ。前川さんは実際に減容化するための装置を作り、実験を重ねている。根気のいる作業だが、「海外の研修で得た経験やこれまでの知識を今後どう活かしていくのかを考えるのが面白いです」と話す。海外で培った自信が、次のステップへ進む原動力となっているようだ。



学年学科名等は、取材時のものです。