熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.79
大学院 応用理工学専攻 環境生命化学コース 修士2年
箕﨑 知香
theme:光エコキャラバン隊

将来の環境教育リーダーとなる人材を育成するために、小・中学生を対象にした自然体験や省エネ活動などの環境教育に関する体験プログラムを企画・実施する県内大学生・短大生を支援している福井県の「若手環境教育リーダー育成事業」において、2019年に採択されたのが環境・食品科学科の学生が参加している「光エコキャラバン隊」。2年連続の採択となるこの環境教育プログラムのリーダーをつとめるのが、光を研究している箕﨑知香さんだ。

生活を支えている光化学


箕﨑さんが大学院で研究をしているのは光化学。赤外線や紫外線、可視光を持つ太陽光などの「光」と「物質」の相互作用を研究する分野だ。最近では光を当てると見える透明ペンや偏光グラス、テレビやスマートフォンに使われる有機ELや太陽電池などもこの光化学の研究の賜物である。箕﨑さんが研究しているのは、有害になりうる工業分子を「レーザー光」を用いて無害化させること。身近な例として農作物についた農薬の中には水や土壌に溶けない性質のものもある。口にしても問題がない安全性の高いものだが、光による分解が可能になれば、今以上に食の安全に貢献できる。将来的にはレーザー光ではなく、太陽光などの自然の光を用いて実現可能なシステムへつながるように日々研究を重ねている。

小さい頃の夢を現実に

小学生の時から化学が好きで将来はフラスコを振るような研究者になりたいと考えていた箕﨑さん。光化学の研究への道は、大学在学中に先輩に誘われたオープンキャンパスボランティアがきっかけだ。これは研究室の人と一緒に太陽電池の基盤を準備して、それを組み立ててプロペラを回すという仕組みを体験者に教えて興味を持ってもらおうという取り組み。「話を聞いている中で、他にもレーザーを使って研究をしていることを聞いて、光ってすごいと思いました」。それからは光化学の虜になった。卒業研究では、次世代の分子デバイスに用いられると期待されている分子にレーザー光を当てると色が変化する過程を研究した。そして、「もっとレベルの高い機器や学びを深めたい」との思いで大学院まで進んだ。


単純ではない奥深さ

実際に箕﨑さんがやっている研究は、主にイネやりんごに用いている農薬や次世代機能性分子にレーザーを当てて光分解させ、それをガスクロマトグラフィーと呼ばれる手法にかけて壊したい物質が減少しているか、チェックする。レーザー照射は波長を変化させた種類の違う方法も試し、出てきた数値の誤差が少ないように、何度も試験を行う。しかもレーザー光自体は当たると痛く、まるで強い静電気に当たったような感じを箕﨑さん何度も味わっているそうだ。苦労が絶えない研究だが、同じ作業の繰り返しの中にこそ見出す面白さがそこにあるという。「同じ仲間の分子でも光の調節で全く違う結果が出てきたり、レーザー1本では変化が見られないのに2本合わせると大きく変化するような、目に見える反応があるのは面白いし、単純じゃない分野なので奥深いです」。


子どもたちに教える取り組み

このような光化学の分野を外へ広げる取り組みが「光エコキャラバン隊」だ。昨年は、小学生たちにUVレジンでつくるストラップや太陽電池で動くプロペラを作製してもらった。箕﨑さんが中心となり、メンバーは科学実験プロジェクトのボランティアスタッフに声をかけ、15名ほど集まった。参加者は小学生15名なので、マンツーマンで教えることができた。箕﨑さん自身は代表として前に出ることを得意としていなかったが、メンバーの手助けや、会場の場を盛り上げてくれたことによりプロジェクトは成功となった。何よりも充実感を得たのは参加者の声だ。「参加者には学習ノートを作ってもらっていたのですが、最初は『太陽電池って黒い』ぐらいの印象が、終わった後は『壊れたら終わりなんだ』『家にも太陽電池つけたい』というメリットデメリットを把握してくれた子どもたちが多かったのが嬉しかったですね」。


学生同士の繋がりを深めて次の世代へ


今年は海岸清掃を加え、そこで拾ったマイクロプラスチックや貝殻を使ってアクセサリーを作ること、さらに昨年の取り組みのバージョンアップも考えている。スタッフを集めるのも大変だが、場所も大学から漁村体験施設「みさきち」に変わるので、フィールドワークの安全面にも気をつけなければいけない。ハードルがグンと上がるので難しいこともたくさんあるが、それ以上に箕﨑さんには想いもある。「大学生は学年が変わるとバラバラで繋がりも薄いので、このようなプロジェクトをコミュニティの場になってくれればと思います。是非、後輩たちに引き継いでいってもらって、少しでも子どもの化学離れをなくすような取り組みになってほしいと思います」。自身の研究の課題を乗り越える力だけでなく、未来へと繋げる力も垣間見た気がした。



学年学科名等は、取材時のものです。