FILE No.047

競歩

機械工学科3年

檜田 隆宏

陸上競技の中で最も過酷と評されることもある競歩。「歩く」というイメージとはかけ離れたタフなレースに挑んでいるのが、機械工学科3年の檜田隆宏さん。今年5月に行われた「北信越学生陸上競技対校選手権大会」の男子10,000m競歩で優勝。この大会で3連覇を果たした。

過酷だからこそ味わえる充実感

競歩と聞いて思い浮かぶあの独特な歩き方は、体の動かし方に厳しいルールがあるから。必ずどちらかの足が地面についていなければならない、前の足の膝は接地の瞬間から地面と垂直になるまで伸ばしておかなければいけない、といったルールが厳密に定められているため、どんなに疲れても楽な歩き方ができない、非常に過酷な競技なのだ。
そんな競歩の世界で着実に力をつけてきている檜田さん。「辛くて苦しい競技ですが、だからこそ歩き終えた時の充実感は格別。何より勝った時の喜びが忘れられないから、やめられないんですね」と魅力を語る。


最初は気がすすまなかった競歩


走るのが好きで、中学、高校と陸上部に所属。得意としていたのが長距離で、高校でもそのまま長距離を続けるものと思っていた。ところが、部活の顧問から勧められたのは意外にも競歩だった。彼が入部した陸上部は競歩の強豪校として知られているところ。陸上競技のトレーニングの一環として新入部員の練習に競歩を取り入れており、その練習の様子を見ての抜擢だが、「カッコよくないし、最初は全然気がすすまなかった」と当初は檜田さんも戸惑ったという。しかし、練習を続けるうちに「グングン前に進んでいくような、長距離にはない勢いが感じられるようになって、不思議と面白くなってきました」と競歩に魅力を感じるようになったのだという。

練習を重ねるごとに記録が伸び、2年生の時には大会出場メンバーに選出。これからという時だったが、貧血のため長期離脱を余儀なくされる。満足のいく練習ができず、合宿にも行けず一人学校に残って練習する日が続く中、感じるのは焦りだけ。「ライバルの同級生はずっと練習している訳ですから、めちゃ悔しかったです」。
だから復帰後は誰よりも練習に励んだ。「気持ちは誰にも負けていなかったと思う」。
努力と負けん気の結果は成績にあらわれた。
高校3年の時、インターハイ5,000m競歩で2位に。「実力はまだまだだったので、入賞を狙えればという気持ちで出場しましたが、結果は2位。最高に嬉しかった」。
国体にも出場し4位入賞を果たした。

目指すは39分台。上位を狙いたい


大学でも競歩を続けたいと、奨学金制度が充実していること、部活の雰囲気が良いことから福井工業大学に入学。「強豪校は刺激があり魅力的ですが、上下関係が厳しいと聞いていました。僕はそういう雰囲気に向いてなくて、できれば伸び伸びと競技に専念したかったことが工大を選んだ大きな理由の一つです」。
檜田さんは日本のトップ選手たちが集まる合宿に参加する機会もあるという。「オリンピック出場選手の練習を間近に見ることができ、すごく勉強になります。大きな刺激を受けると同時に、力の差をまざまざと見せつけられる。もっとがんばらないと」と練習にも自然と力が入る。
こうした練習の成果は徐々に成績になってあらわれてきている。
今年の4月に行われた「第64回福井県陸上競技強化大会」では、5000m競歩で20分26秒17の福井県新記録を樹立。5月に行われた「第90回北信越学生陸上競技対校選手権大会」の男子10,000m競歩で43分59秒84で優勝。この大会で3連覇を果たした。また、6月の「2016日本学生陸上競技個人選手権大会」では42分22秒01で6位に入賞し、2年連続の入賞となるなど、好成績をキープしているが、自身は「全然納得のいく成績じゃない」と悔しさをのぞかせる。「北信越で優勝したからといって全国大会で入賞できるわけではありません。重要なのはタイム。現在の10,000mの自己最高記録は41分07秒08ですが、上を目指すには39分台が必要。もっと練習しないと」と現在の状況に満足することはない。
目下の目標は9月に行われる全日本インカレで3位以内に入ること。より高みを目指し、練習する日々が続いている。


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