熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.25
応用理化学専攻 環境生命化学 修士1年
鹿島 詩穂
theme:飛び級

成績が優秀な生徒が1学年を飛び越して上の学年、または上の学校に移ることができる「飛び級」。日本ではまだあまり馴染のない制度だが、学部から大学院の進学において飛び級を行っている大学もある。福井工業大学もその一つ。今年、本学で初めて「飛び級」で大学3年次終了後大学院に進学したのが、応用理工学専攻環境生命化学コース 修士1年の鹿島詩穂さんだ。

今まで通りの大学院生活


現在、大学院応用理工学専攻 環境生命化学コースに在籍し、授業や実験、研究に追われる生活を送っている。飛び級で入学したため周囲は1歳以上年上の同級生だが、「特に変わったことはありませんよ。私自身院生1年という気持ちですし、周りの人も私が飛び級だということを知っているようですが意識していないみたいですよ。ごく普通です」と笑う。
何事にも動じないクールな印象の鹿島さんだが、入学当初は先生方の期待を裏切りたくないという気持ちからか、非常にプレッシャーを感じていたという。しかし、同級生と切磋琢磨しながら研究を進めるうちに、「私はやれることをやるだけ」と自然に気負いもなくなっていった。「今はとにかく実験が楽しい。目指すものや趣味も似ている仲間もいる。大学院生活は充実しています」。
「実は、高校の時は特に成績が良かったわけではないのです。だから、今飛び級のことでスゴイと言われたり、こうして取材を受けたりするのが不思議なくらいです」とあくまでも謙虚。

時間と費用を無駄にしたくない、だから貪欲に勉強


現在はいわゆる理数系女子だが、実は、高校時代の成績は文系寄り。「でも、文系の大学にいって何になるんだろうと、将来のビジョンが全く想像できなかった。昔から何かを作り出したいというぼんやりとした夢があったし、材料や環境に配慮したものに関心がありました」。そんな彼女が環境資源や環境計測などの勉強ができるから、と選んだのが福井工業大学だった。
大学に入ると、1年次で受講できる授業はできるかぎりすべて選択。それは2年、3年になっても同様で、毎年時間割は隙間なく埋まるほど。「できるだけ学費を無駄にしたくなかった。もちろん興味のある科目も多かったし、今後必要であろうという科目もあり、できるだけたくさん受けておこうと思ったからです」。空いている時間があると図書館へ直行。課題などは大学内で終わらせ、帰宅後は一切勉強しないのが彼女のスタイルだ。「勉強はそんなに好きなわけじゃないですよ。課題が出るので…」と話すが、できることは何でも吸収しようと、勉強に対して貪欲だ。特に興味がある科目は納得するまでとことん突き詰めるという熱心さ。3年次を終えるころには、すでに卒業に必要な単位を取得。残すは卒研だけだった。

特待生で授業料減免に

福井工業大学にはいくつかの奨学金制度が用意されている。成績に応じて授業料の減免がうけられる制度として、GPA評価が3.8以上の場合に授業料が50%減免される特待生奨学金と、3.5以上の場合に授業料20%が減免される準特待生奨学金がある。
鹿島さんの勉強への意欲は、成績にあらわれていた。成績評価は常に3.8以上をキープ。2年次から現在まで途切れることなく特待生奨学金を受けている。「できれば親にあまり負担をかけたくないと思っていたのですごく助かります。おかげで勉強に集中できています」と笑顔をのぞかせる。

「飛び級」に驚くも悩む日々


飛び級の話が舞い込んできたのは、3年生の10月頃。担当教員から、飛び級の制度があること、鹿島さんの成績なら余裕でクリアできるだろうと伝えられた。飛び級による大学院への進学の条件は、取得単位数が120単位以上、GPAが3.6以上であること。鹿島さんの成績は十分にその条件を満たしていた。
「嬉しいというよりも、ただただ驚くばかり」。
成績を認められた上での話は喜ばしいことだったが、手放しで受けることはできなかった。「飛び級の場合、大学に退学届を出した上で、大学院への入学手続きを行うことになります。仮に、大学院に進学後、何らかの理由で大学院を中退した場合、結果として履歴書では大学中退になってしまうのです。大学院だけじゃなく、大学も中退になる。途中で辞めるなんてことはないとは思いますが、何らかのアクシデントでもしもという可能性も否定できない。嬉しい反面、ついネガティブなことを思い浮かべてしまいました」。

前例なきチャレンジに挑む


飛び級の申請への締め切りは翌年の1月。もう時間はあまり残されていない。
自分なりに精いっぱい考え、悩み、出した結果が、飛び級で大学院に進むことだった。
「福井工業大学での飛び級は前例がないのだそうです。つまり私が初めて。それはすごいことじゃないかと思えるようになったのです。初めての何かに挑戦してみるのもいいもんじゃないかって…。ここまで頑張ってきてせっかく与えられた資格ならチャレンジしようと決心しました」。
担当教員の推薦ということで面接を受け、無事合格。3年次を終え、そのまま大学院に進学することとなった。

研究環境に大満足


現在取り組んでいるのが、リグニンという植物由来の成分を使って高分子の材料を作る研究。「担当しているのは、エポキシ樹脂を作ること。石油由来のものではないため、焼却するなどなんらかの処分をした際に二酸化炭素が出ます。その二酸化炭素を植物が光合成で吸収することで植物に戻っていくことになります。石油由来の場合、石油に戻るには膨大な時間がかかるんです。私が最終的に目指すのは、炭素資源の循環を作っていくこと。場合によっては、生分解性という微生物によってプラスチックなどを分解させる成分を持たせることもできる研究。そこに行きつくのは無理かもしれませんが、できるところまで近づきたいですね」。
毎日が実験の連続。材料となる物質に様々な反応をおこすことで異なる物質につくりかえていく。それが予想していたものになっているかどうかを確かめる、という作業を繰り返す。「なかなか進まなくって、時間たりるかなぁなんて心配になることもありますが、実験はすごく楽しい。就職も考えているけど、できれば研究を続けていけたらいいなぁと考えています。この大学の研究環境がすごく私に合っているのです」。



学年学科名等は、取材時のものです。