FILE No.110

陸上競技部史上初!男子100mで「日本選手権」出場

スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 3年

木下 直

2022年6月に開催された「第106回日本陸上競技選手権大会」に出場した木下さん。男子100mでの本大会出場は、1965年の陸上競技部創部以来初の快挙となり、本番での活躍に期待が高まった。日本のトップスプリンターが競う大舞台に挑んだ木下さんに、陸上にかける思いや今後の目標などについてうかがった。

福井工大陸上競技部で、持ち前の脚力に磨きをかける

木下さんが陸上を始めたのは、地元の高校に入学してからだった。サッカー少年で足に自信があったこと、中学時代の先輩が陸上部で活動していたのが入部のきっかけとなった。日々の練習の中心は学校周辺の道路を走ること。「坂が多い地形を利用し、坂ダッシュを何度も繰り返していました。指導の先生がいなかったので、鍛え方や走り方を自分で考えながら練習していた感じです」。100mをメインに、競技大会では200mやリレーにも出場。3年生のときの北信越大会(高等学校総合体育大会 陸上競技 北信越大会)の100mでは決勝まで勝ち進み、10秒76の記録を残している。「卒業後は就職しようと考えていましたが、北信越大会でいい記録を出せたので、大学に入って陸上を続けようと決めました」。

2020年に福井工業大学スポーツ健康科学部に進学し、陸上競技部に入部すると、練習内容も環境も一変した。週5日、1日に2~3時間行われる部活動は、スポーツ健康科学科准教授の内藤監督と、同科講師の山元顧問によって組まれた練習メニューに基づいて実施。走るための技術や体力を向上させる練習やウエイトトレーニングなどが曜日ごとに決められている。部員は競技によって、短距離・ハードル、フィールド、競歩の3ブロックに分かれ、木下さんは短距離・ハードルブロックの仲間と練習を重ねている。「短い距離を何本も走るとか、フォームを意識して走るなどの走り込みを中心に練習しています。撮影した動画を見ながら自分の走り方をチェックしたり、メンバー同士でアドバイスし合ったりすることもあります」。


自身の走りを追求し、リラックスして試合に臨む


記録更新や試合での勝利を目指しながらも、練習方法やフォームなどについては、まず自分自身でじっくり考えることが多いという木下さん。その結果、なかなか答えが見えないときは監督に相談する。例えば、ボールがバウンドするようにジャンプしながら前進するバウンディングというトレーニングは、スピードや瞬発力をアップさせるために有効だが、バウンディングの動きを活かして大きく走るための体の動かし方については監督に質問したそうだ。

スポーツでは、身体と同時に精神を鍛えるメンタルトレーニングも重視される。しかし、木下さんは、試合で緊張することはほとんどなく、これまでメンタルトレーニングを考えたことはないという。「よいタイムを出すには、リラックスして走るのが1番。僕は大会に出ると、緊張よりも楽しいという気持ちの方が勝ちます。だから、自然とリラックスした状態を作り出せているんです」。試合で力を発揮するために必要な心理状態を自ら生み出せるのが木下さんの大きな強みのようだ。そして、持ち前のひたむきでポジティブな人間性と、監督や顧問の指導の下日々励んできた練習の成果、メンバーの激励などが今春、日本選手権出場という形に結実した。

初出場の「日本選手権」で善戦し、自己2番目のタイムを記録

2022年5月14・15日、北信越インカレ(第96回北信越学生陸上競技対校選手権大会)が開催された。木下さんは100mで優勝するとともに、準決勝では自己最高タイムの10秒41を記録(公認記録)し、日本選手権の標準記録を突破。5月27日に、男子100m出場選手56人の1人に選出された。本種目での日本選手権出場は、福井工業大学陸上競技部史上初めてのこと。大学中で話題となり、激励や期待の声が多く寄せられた。

北信越インカレ終了時点で9月開催の日本インカレ(日本学生陸上競技対校選手権大会)出場が決定し、日本インカレが初めて経験する全国大会になるはずだった木下さん。その後、6月開催の日本選手権出場が決まり、初めての全国大会が国内トップレベルの日本選手権になったのである。「元々日本インカレを目指していたんですが、その前に日本選手権に出られることになり、大丈夫かなと少し心配になりました。やはり出るからには勝たなくてはいけないという気持ちになったので。でも監督が、今年は日本インカレに合わせていくと言ってくださり、また、たくさんの方から応援の言葉をもらったので、気負わずに臨むことができました」。祝福や激励はSNSなどを通じてOBからも寄せられ、100mでの日本選手権出場がいかに快挙であるかを物語っている。

本番は6月9~12日に、大阪府・ヤンマースタジアム長居で開催された。男子100mには、9秒台の記録を持つ桐生祥秀選手、サニブラウン・ハキーム選手、小池祐貴選手といった日本のトップスプリンターが出場。「これまでの大会とは違うピリピリした緊張感があり、自分には、それが結構楽しく感じました」と話す木下さん。初めての大舞台に気持ちが高ぶったに違いない。

選考は予選、準決勝、決勝と進む。予選第6組で出場した木下さんは10秒48を記録。準決勝には進めなかったが、自己2番目となる好タイムで善戦した。「気分が上がり過ぎてしまった感じですが、これまでで2番目にいい記録を出せたので、よかったと思っています」。現在の目標は、9月9~11日に京都府・たけびしスタジアム京都で開催される日本インカレで決勝に残ること。そして来年は、日本選手権での決勝進出を目指している。「国体でも走れるようになりたいですし、1つでも上のラウンドに上がれるように頑張りたい」と意欲を見せている。


将来は、実業団選手かクラブチームの指導者に


学業では、スポーツ健康科学科の地域スポーツ指導者コースで学んでいる木下さん。体の構造や機能を深く知ることが、陸上選手としての自分自身の能力向上につながることを実感している。さらに、球技など陸上以外のスポーツの授業は、普段と異なる動きをすることが気分転換にもなるという。また、今年受講しているコーチング論については、「スポーツ指導者はチーム管理や、選手あるいは子どものメンタル管理などさまざまなことを理解し、指導していかねばならないことを知り、自分が思っていた以上に大変な仕事だと感じました」と話している。

将来は地域の陸上クラブの指導者になることを考えていたという木下さんだが、今は、実業団に入り陸上を続けることも視野に入れているそうだ。そのためにも、自己記録の更新と、9月の日本インカレをはじめ今後の競技大会での勝利を目指し、日々の練習に打ち込んでいる。


OTHER FILES

その他の記事

一覧に戻る