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大好きなデザインで、人の心を動かしたい

大学院工学研究科社会システム学専攻(博士前期課程)デザイン学コース 1年

桐山 玲奈

環境情報学部デザイン学科在学中、課題制作に「毎回最高の状態で提出する」という気持ちで取り組むなど常に全力投球してきた桐山さん。さらにデザインに関する知識や経験を広めたいと大学院へ進学。「大好き」と語るデザインの魅力や、大学院での研究、デザインを通して実現したいことなどをうかがった。

“負けず嫌い”を自負し、課題に全力で取り組んだ学部時代

高校時代、工業高校の電子情報学科でウェブデザインなどを学び、デザインの楽しさを知った桐山さん。デザインを幅広く学べる学校へ進みたいと大学を探す中で、心惹かれたのが福井工業大学のデザイン学科だった。「他の大学のデザイン系の学科は入学して間もなくコースを選択し、その後学べる範囲が狭かったんですが、福井工業大学は、1年生全員が同じ勉強をし、その後希望のコースを選べること、さらに自分のコース以外の授業も受けられるところが魅力的でした」。

デザインの基礎から実践までを学んだ4年間の学部時代で、特に桐山さんの印象に残っている授業が2つあるという。その一つがコミュニケーションデザインという実習だ。「おもてなしをデザインする」という課題が出され、桐山さんが制作したのは、福井県を訪れた外国人観光客に向けた飴玉の包装と専用の設置台だった。福井県の名産品や方言を記載した紙で飴玉を包んで水引で結び、台に配置する。外国人観光客が飴玉を手に取り、包みを開き、福井らしさに触れながら味わう一連の楽しみを形にした。「漠然とした課題を自由に表現することにやりがいを感じました」と振り返る。もう一つは、“課題を3日に1回提出しなければならない授業”である。それまでも提出期限はあったが、3日という短いスパンで次々とデザインを考える経験は初めてのこと。締め切りに追われる日々はたいへんだったが、その中で結果を出していく経験ができ、実践力がついたと実感している。


自身を“負けず嫌い”と評する桐山さん。「高校時代は弓道部の女子の部長だったので、全国大会を目指しながら負けてしまったときの悔しさが大きかったんです。その悔しさをバネに練習を積み重ねた経験から負けず嫌いが発生しました」。その気概で、学部時代の課題は常に“1番”を目指して取り組み、デッサンやTシャツのデザイン・ブランディングなどで“1番”を獲得。「課題は必ず毎回提出しましたし、最高の状態で出せるように毎日真剣に取り組んでいました」と語っている。

デザインをより広く学ぶために大学院へ。目指すは人を動かすデザイン

学部卒業に当たり就職を考えていた桐山さんだが、デザインに関するより広い知識を身に付け、資格も取得したいと大学院へ進学。「就職して役に立つ仕事ができるのかという不安があった中で、ゼミの先生の勧めもあり、もっと力をつけたいという気持ちが芽生え進学を決意しました。ウェブデザイナー検定や、デザイン分野を総括したマルチメディア検定を視野に入れ勉強しようと思っています」。


学部での勉強では先生から出された課題を提出することが中心だったが、大学院では、自分で課題を設定し、試行錯誤しながら課題解決のための方法を考え、ツール制作などを進めていく。その中で、以前からマーケティング分野への関心を高めていた桐山さんは、「例えば、見た人の心を惹きつけ、そこで紹介されている商品を買いたいと思ってもらえるような広告をつくりたい」と話し、フォントやレイアウト、色などをどのようにすれば人の感情を動かせるか、という視点でのデザイン力をさらに高めようとしている。そのために現在取り組んでいる研究テーマは「女子の入学志望者を増やすための大学の広告戦略」だ。福井工業大学をケーススタディとして、女子にターゲットを絞った広告や広報などを考えている。


大好きなデザインの力をさまざまなところで生かしたい


「デザインはいろんなところにあふれています。洋服だったり商品パッケージだったり、本当に身近にたくさんあって、それを見て、無意識のうちに買おうと思う人も多いはず。デザインの影響力は大きく、とても重要な存在だと考えています」と話す桐山さん。消費者が心を動かし、購入という行動につながるデザインや広告などを作ることが大きな目標だ。

しかし、これまでにない新しいデザインを生み出すのは容易ではない。桐山さんは、その苦しさも充分実感しつつ、デザインが大好きだと話す。「何もない状態から始まり、あれこれ試行錯誤を重ねるうちにだんだんと形が見えてきて、最終的に固まったものを人に見てもらえる。この過程が好きだし、何もないところから形をつくるということ自体がとても好きです。そして、作ったものを人に見てもらえて、『すごいね』と言っていただけると本当にうれしいです」。

グラフィックデザインの最終的な仕上げはデザインソフトを使用するものの、前段階のアイデア出しは、シャープペンシルで手描きする。「私は描き溜めないとだめなタイプなので、スケッチブックを持ち歩き、思い付くとサッと描きます。よいアイデアがなかなか出てこなくて焦ることもあるけど、出てきた瞬間手が勝手に動き出す。その時間が楽しいです」。家でよいアイデアが浮かばないときは外へ出かけることも多いそう。ポスターなどの広告はもちろん、木の葉の形や、偶然近くにいた人の携帯の形などからインスピレーションが湧くこともあり、周囲のさまざまな情報をキャッチするアンテナは高い。

デザインを生かすには発信力やリーダーシップも重要

桐山さんが福井工業大学のデザイン学科で学び、最も自身の成長を感じるのは、発信力が身に付いたことだ。課題で制作した作品のイメージコンセプトなどを、先生やゼミの仲間に説明するプレゼンテーションの機会が多く、最後の卒業制作は、デザイン学科の先生と学生全員を前に発表する。「私は人前で話すのが苦手だったんですけど、自分の作品のプレゼンを何回もやったことで、非常に鍛えられました。大学で一番成長できたところかなと思っています」。そしてこの経験は、桐山さんが後輩に伝えたいことでもあるそうだ。「将来デザインの仕事をすることになれば、お客様になぜこのデザインなのかということを説明しないといけないときが絶対来ます。福井工業大学にはプレゼンの練習をする機会が数多くあり、プレゼン能力が上がります。頑張ってください」と力強く語ってくれた。

高校時代に部活の部長経験を持つ桐山さんは、“チームで物事を進める”ことも大切だと考えている。他の仕事同様、デザインの仕事もさまざまな役割の人間がチームで動き目標を達成する。「人の心を動かすデザインができるようになると同時に、チームを引っ張っていける人間になれたらと思っています」。


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