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日商簿記1級合格!将来は、税理士として経営者をサポートしたい

環境情報学部 経営情報学科 4年

大嶋 泰生

簿記検定の中で最も難易度が高く、税理士や公認会計士への登竜門となっているのが「日商簿記検定1級」である。合格率10%という難関を突破し、見事に本資格を手にした大嶋さん。受験に至った経緯や、合格に向けての勉強への取り組み方、将来の目標などについてうかがった。

簿記の授業と企業見学をきっかけに3級、2級を受験し、合格!


会社などを営む経営者は、事業の活動状況や経営状況、資産の現状などを客観的に示す決算書を作成しなければならない。決算書は損益計算書と貸借対照表からなり、株主、従業員、税務署などに開示される。経営者は決算書作成のために、売買や貸借などの取引を内容ごとに仕訳けし、記録・計算・整理する。この一連の作業を行うための仕組みが「簿記」であり、簿記のルールを理解し適切に処理することは、経営者が避けて通れない必須事項である。

大嶋さんが簿記への関心を深めたのは、1年生のとき。経営情報学科の授業で簿記の基礎を学んだことがきっかけだった。「まず日商簿記3級を取ろうと勉強を始めました。すると、会社の財務諸表をスムーズに読めるようになったんです。基本的なことを理解しただけで、これほど数字から会社の実態をつかめるようになるものなのかと驚き、俄然面白くなりました」。
同年11月に3級を受験し合格。間もなく行われた「1day企業見学会」で会計事務所を訪れると、その業務に興味を持ち、翌年2月には2級を受験。「企業見学会に参加したことで、卒業後は会計事務所に入って仕事をしたいと思うようになりました。2級の資格を持っていると就職に有利という情報にも後押しされた感じです」。日商簿記2級では、商業簿記、工業簿記に関する高度な知識と、財務諸表から企業の経営状況を把握できる力が求められる。1回目の受験で合格を果たした大嶋さんは、1年生の間に2級レベルの力を身に付け、将来進みたい道への一歩を踏み出したのである。

会計事務所への就職を目指し、1級の試験にチャレンジ

日商簿記1級では、商業簿記、工業簿記、原価計算、会計学の極めて高度な知識とともに、財務諸表規則や企業会計に関する法律・規則を理解し、経営の管理と分析ができる力が求められる。合格すれば税理士試験の受験資格が与えられるが、それゆえハードルは高く、合格率10%という狭き門である。
「1級の勉強量はそれまでと違い、かなりのボリュームです。2級合格後に少し手を付けたのですが、これに数か月以上の時間をかけるより、他のいろいろな分野の知識を吸収しておく方がよいのではないかと考え、英語や金融関係などの勉強をすることにしました」と当時を振り返る大嶋さん。
中断した1級の受験勉強を再開したのは、大学が福井県や経営者団体と連携して実施しているインターンシップに参加した後で、3年生の夏の終わり頃だった。「インターンシップでお世話になった会計事務所の方に、簿記や税務系の知識があれば会計事務所に入所した後スムーズに仕事を覚えられると言われ、改めて頑張ろうと思いました」。会計事務所への就職を目標に、1級合格を目指し本格的勉強を開始。1級の試験は毎年6月と11月の年2回実施されているが、昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、11月と翌年2月に変更された。大嶋さんは勉強再開からわずか2~3か月で初受験に臨み、さらに3か月後、2回目に挑むことになる。

こつこつと独学を重ね、晴れて1級合格!


簿記検定の受験者には通信講座などで学ぶ人も多いが、大嶋さんは、簿記を専門とする経営情報学科の先生から紹介された教科書をベースに独学を続け、空き時間のほとんどを簿記の勉強に充てていた。「受験勉強ができるのは主に授業終了後の夕方や夜ですが、僕はどちらかというと朝型なので、5時とか6時頃に起きてすることもありました。1日8時間くらい勉強したこともあります」。
必要な勉強量からもわかるように、極めてハイレベルの知識を求められるのが日商簿記1級である。試験は、大きく商業簿記、工業簿記、原価計算、会計学の4つに分けられているが、その中でさらに細分化された数多くの分野について理解しておかねばならない。「問題集は分野ごとに解いていくのでわかりやすいですが、過去の試験問題を見ると、複数の分野が横断的あるいは総合的に結び付いて出題されています。決算整理後残高試算表や連結財務諸表を作成する問題は、数字が合うことがほとんどないくらい複雑です。意表を突くような問題で混乱することもあり、やはり1級は難しいと実感しました」。

難問と向かい合う日々を送りながら受験を諦めようと思ったことは一度もないと話す大嶋さん。会計事務所に入るという目標はもちろんだが、新たな学びに刺激を受けたことも一因である。「1級の勉強には会計学が入ってきます。会計学では、売掛金や手形はどういう状況で発生するのか、有価証券はどのように種類分けされるのかなど、根本的なことを学びます。現実の取引の背景にある理論について知ることがおもしろいと感じました」。
このように勉強を重ねた結果、2回目のチャレンジとなった今年2月末の試験で晴れて合格。「今回も落ちているだろうと思っていました。2月は就職活動の真っ只中で、勉強時間があまり取れなかったんです。郵送されてきた通知もあきらめ半分で開きましたが、思いがけず合格!舞い上がって早速友達に連絡しました」。教科書を紹介していただいた簿記の先生には研究室へ出向き、通知を見せながら報告。この快挙に、先生も飛びはねるくらいの勢いで驚き、喜ばれたそうだ。ちなみに大嶋さんが合格した試験は全国で6,351名が受験し502名が合格。合格率は7.9%だった。

「中小企業の経営者の力になりたい」と、税理士を目指し勉強中

既に会計事務所から就職内定を得ている大嶋さんは、今後は知識だけでなく実務経験が重要と気を引き締めている。そして、次に目指しているのが税理士の資格。これは日商簿記1級の勉強を始めたときから視野に入れていた目標であり、既に今年8月の受験を予定している。
税理士は、企業などからの依頼に基づき税金の申告や各種申請書類の作成などができる資格である。税の専門家として税金に関するさまざまな相談に応じながら企業会計に深く関わり、それは大嶋さんがこの仕事を志す大きな理由となっている。「税理士の先生のお話によると、中小企業の経営者には簿記の知識をあまり持っておられない方が意外と多く、財務諸表では問題が見られないのに、資金繰りに困って倒産する事例もあるそうです。これは非常にもったいないことです。僕は将来、このような経営者さんの力になりたいと思います」。自らの役割を“企業の成長をサポートする縁の下の力持ち”と語る姿から、将来の仕事にかける熱い心意気と使命感が伝わってきた。


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