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2024世界大学ゴルフ選手権に出場し、日本人選手最上位の5位を獲得
スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 2年 ゴルフ部
稲葉 千乃
2024年8月にフィンランドで開催された「2024世界大学ゴルフ選手権」に出場した稲葉千乃さん。日本代表選手も、海外でのプレーも初めてという緊張の中で、冷静かつ粘り強いプレーを続け、個人戦で日本人選手最上位の5位、団体戦では4位を獲得した。4日間の戦いぶりや世界大会ならではの体験、将来の目標などを伺った。
プロゴルファーを目指し、福井工業大学に入学
稲葉さんがゴルフを始めたのは小学5年生のとき。「ゴルフが大好きな父から勧められていたことと、先に習っていた同級生が『一緒にやろうよ』と誘ってくれたのがきっかけでした」。地元の三重県東員町のジュニアチームに入り、練習場に通いながら、週末はゴルフ場でコース練習も実施。習い事としてスタートし、遊びの延長のようにゴルフを楽しんでいた稲葉さんだったが、中学時代にはプロになることを考え始めたという。「試合に出て、優勝した子が表彰台に上がる姿を目にするうちに、自分も優勝したいと思う気持ちが湧いてきて、さらに上を目指したいと思うようになったんです」。それまで以上に一生懸命練習するようになり、高校はゴルフ部がある学校に入学した。
ゴルフの魅力を、自分の個性が出せること、観客から応援や歓声を受けることで力を発揮し、良いプレーができることだと話す稲葉さん。日々の練習や試合を楽しみながら継続し、高校時代には、「三重県女子オープンゴルフ選手権」で優勝するなど、実力と活躍が注目された。さらに技術の向上や経験を深められる大学に行きたいと進学先を探していたとき、学園理事長と大学ゴルフ部監督から勧誘を受け、練習風景などを見学。優れた練習環境が決め手となり、「ここで4年間しっかり頑張れば、目標のプロに近づける」と思い、入学を決意したという。
「2024世界大学ゴルフ選手権」出場で、初の日本代表に
2023年4月にスポーツ健康科学科に入学し、ゴルフ部の一員となった稲葉さんは、充実した設備で知られる『福井グリーン倶楽部』で週4回練習するとともに、ゴルフ場でのコース練習にも励んでいる。同年11月には、石川県の片山津ゴルフ倶楽部で開催された、個人戦「常陸宮妃杯第1回全日本女子学生ゴルフ選手権競技」で優勝。団体戦の「常陸宮妃杯第2回全日本女子大学ゴルフ選手権競技」でもゴルフ部の仲間とともに優勝に輝いた。この成績が認められ、「2024世界大学ゴルフ選手権」出場が決定。本大会は2年に1回開催され、出場者は「常陸宮妃杯」をはじめ日本学生ゴルフ連盟が主催・後援する競技での上位メンバーが選出される。
「世界大学ゴルフ選手権」も、その選抜大会のことも知らなかったという稲葉さん。「常陸宮妃杯は全国大会なので、しっかり自分のゴルフをして、まずは団体優勝を目標に、さらに個人でも優勝できればいいなと思って出場しました。今年3月に世界大学選手権の選手に選ばれたと連絡があったときはびっくり。もちろんうれしかったですし、両親も喜んでくれました」。海外でのプレーも、日本代表として日の丸を背負うのも初めてのこと。しかし「出場するからには優勝したい。そのために今できることを精一杯やろう」と決め、アプローチやパターなどのショートゲームを中心に練習を重ね、初舞台に臨んだという。
耐えるプレーで個人戦5位、団体戦4位を獲得!
「2024世界大学ゴルフ選手権」は8月27~30日に、フィンランドのセイナヨキにあるルイヒコスキーゴルフで開催され、世界20カ国から男子46人、女子41人が出場した。個人戦と並行して男子15チーム、女子15チームによる団体戦も行われ、4日間の合計スコアで競われた。稲葉さんは、事前の練習ラウンドでグリーンの速さに多少驚いたものの、コース全体に好印象を持ったという。「4日間、このコースと自分の調子がうまくかみ合えば、優勝も可能かも」と感じたとか。また、日本チームの監督や仲間、通訳の方からの声掛けや励ましのおかげで、緊張する場面はあったものの、伸び伸び楽しみながらプレーできたとも話している。
緊張が大きかった初日のスコアは73。バーディーがゼロでボギーが1回、残りは全てパーで終了した。「ここは決めないといけないと思ったいくつかのホールをちゃんと決め、耐えながらいい流れができました」。バーディーを何回か取れた2日目は、概ね好調で72だったが、3日目はピンチに直面した。前半はボギー2回、パー7回でしのぎ、後半最初にバーディーを2回取って巻き返した。しかし、池がある16番ホールで苦戦。「1打目でグリーンに乗せられず、確実にパーを取ろうと思ったんですが、池に入れてしまい、3打目もカップから2~3m離れました。次は絶対入れないといけない大事なパット。これを決めることができたので、悪い流れを断ち切れました」。ピンチを乗り越え、スコアは74だった。最終日で力んでしまったという4日目は、ショットが乱れつつも大きく崩れることはなく72で終了。個人戦では、日本人選手では最上位の5位。団体戦でも4位の成績を残すことができた。
「目標は優勝だったので、5位はやっぱり悔しかったです。でも、海外の選手の中で自分が思い描いくゴルフができ、世界でも通用するんだ、という実感を得られたのはものすごくうれしかった」と振り返る稲葉さん。同時に、外国選手との体格や飛距離の差を感じ、飛距離をアップさせるために、トレーニング方法や食事の見直しを考えるようになったそうだ。
念願のプロゴルファーになるためにプロテストに挑戦
ゴルフ部女子と稲葉さんの現在の目標は、10月の「国民スポーツ大会」での団体・個人それぞれの入賞と、11月の「常陸宮妃杯」での団体・個人の2連覇である。また、稲葉さんは、プロの道へ進むための展望も描いている。
「来年、プロテストに挑戦しようと思っています。そして、受けるからには1年間しっかり準備して、一発合格が目標です。プロになってからは、試合に出るための予選QTを上位で通過し、レギュラーツアーに参戦したいと思います」。
海外でのプレーや、ゴルフを通じた人との出会いなど、さまざまな経験を重ねながら、インタビューに答えたり、人と話したりすることも楽しいとにこやかに話す稲葉さん。「多くの人から応援され、目標や憧れにしてもらえるプロゴルファーになりたい」と話している。
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