FILE No.67
O.C.P.S 日本語アシスタント研修
環境情報学部 環境・食品科学科 4年
井上 美桜
グローバル社会で活躍できる人材の育成をめざす福井工業大学では、キャリア教育の一環として海外留学プログラムがある。海外語学研修、海外インターンシップ、そして、2017年から日本語アシスタント研修をスタートさせた。福井工業大学と協定関係にあるタイ王国の高校へ日本語の授業アシスタントとして渡航し、海外での教員を経験したのが、井上美桜さんだ。
研修参加の理由は働く現場への憧れ
福井で生まれ、福井で育った井上さん。就職活動が近づくにつれ、地元で働き、福井のことを元気づける仕事がしたいと考えるようになり、その中で自分のできることは何だろうという就職活動への不安を漠然と感じていた。この不安を払拭するために、「実際に働く現場を見てみたい」という思いが日増しに強くなっていった。そんな中、目の前に飛び込んできたのが、日本語アシスタント研修の案内。それを見た井上さんは「せっかくなら海外で働いて、日本では常識的に考えられないこと、海外でしか味わえないような現場を体験したい」と、その足で研修を申し込み、海外への挑戦を決めた。
しかし、タイでは英語で教えなければならない。実は英語が苦手という井上さん。研修に行く前の3か月間、大学にある英会話カフェに授業の合間をぬって通いつめた。そこで、海外の先生と会話して、英語に慣れ、ある程度の英語力を身につけた。
苦手から自信へと変わっていく
「実際に行ってみると自分が思っていたよりも喋れました。ジェスチャーも使いながら、自分の知っている限りの英語を使って会話ができた」とタイでの3週間を語る井上さん。現地の高校の日本語アシスタントとして、漢字の書き順や文法、日本語の発音やイントネーションなどを教えた。中でも、福井弁のイントネーションに悩まされ、授業で日本語を教えるのが難しかったという。それでも、苦手だと思っていた英語ができたことが何よりも嬉しく思い、自信へと繋がった。
さらに自ら発案して取り組んだ活動もある。「ジャパニーズアクティビティ」といった日本文化を教える特別事業では、折り紙や巻き寿司を教えた。折り紙などの小物は、研修で使ったら面白いかもしれないと思い、現地に持参していたものだ。「生徒も先生も非常に喜んでくれて、やった甲斐がありました」と笑う。
視野が広がり、自分で考える力がつく
研修中には井上さんが求めていた、広い視野を得るチャンスもあった。タイの生徒の中には日本語が非常に流暢にできる男子生徒が1人いた。その生徒はタイで各高校生が集まって行う日本語コンテストに出場するほどの腕前であった。井上さんはそのコンテストで発表する日本語文章の内容の添削や、きれいなイントネーションを教えることもあったという。感心したのが、その生徒が日本語を独学で学び、始めた理由も「面白いと思ったから」と言われたことだ。「自分で勉強して、流暢には話せるレベルにまで達したというのが驚きで、私も学ぶ中での探究心の重要さっていうのをすごく再確認しました」と話す井上さん。
また、タイの学校ではその日に授業時間が変わるなど、かなり流動的なスケジュールで、しっかりと計画していても、その通りにいかないことも多かったという。「でもそのおかげで、その場その場でやらなければならない事を考える力や、自分たちで先々に動いていく能力はかなり身につきました」。
経験を活かして次のステップへ
研修を終え、今度は卒業研究で微生物のことを勉強している。生物の原理的な細胞レベルの研究や実験の操作などで難しいことがあるが、自ら学んでいく中での探究心は忘れないようにしているという。さらに、今後社会人として働いていく不安は解消されたようだ。「働く場で自分の考え方も変わってくるとは思いますが、そこは身につけた臨機応変さで対応して、勉強していきたいです」。
日本語アシスタント研修を通して身についた「自信」と「幅広い視野」を持って、これからの進む道を切り開こうとしている姿がそこにあった。
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