FILE No.68

城勝湯再生プロジェクト

工学部 建築土木工学科 4年

玉村 光

2018年5月、廃業した越前市で唯一の公衆浴場「城勝湯」を福井工業大学の学生たちが復活させた。これは越前市若竹町と工学部建築土木工学科下川研究室が協働するプロジェクト「machiYOKU」の一つだ。城勝湯を新たな活動拠点として一新させ、お年寄りや若者を呼び込んでまちを元気にしようとする取り組み。それに携わったのがまちづくりを研究している玉村光さんだ。

プロジェクトに意欲満々


家を建てる仕事がしたいと思い、建築土木工学科に入った玉村さん。勉強していく中で、自分の想像にはなかった「まちづくり」というものに興味が湧き、地域づくりをテーマにしている下川研究室に飛び込んだ。そこで教授からプロジェクト「machiYOKU」立ち上げの話を聞いた。その時は実際に現場に参加できる喜びに胸が踊ったという。しかも、まちづくりの拠点となる城勝湯がある越前市と自身の出身地が同じ。より一層身近に感じられる取り組みに参加したいと思った。
このプロジェクトは、越前市の中心である武生駅周辺と中央公園を結んでいる線に、もう1つの若竹町も入れて面としてまちを繋げようとする計画。越前市の商業や行政機能が集中する中心街に近接したロケーションと、歴史街道として名高い北陸街道沿いというポテンシャルを活かして、「歳をとっても住みながら働ける」場所をコンセプトとして計画を進めている。

初めて見た銭湯も新鮮

まずは、まちづくりの拠点となる城勝湯の再生から始まった。スーパー銭湯が大好きでよく祖母に連れていってもらったという玉村さんだが、まちの銭湯を見るのは初めてだった。固定されているシャワーや10円入れると動くドライヤーなど、古いものがいっぱいある様子に驚きの連続。相談しながら、このような古くて味のあるものはそのまま使おうとなるべく残すようにした。しかし、そうはいっても古い銭湯なので、中には多くのゴミや汚れがあった。そこでゴールデンウィークを使って研究室全員での大掃除。「55年の積もり積もった埃や汚れを取るのは大変でしたが、ペンキ塗りなどもやってすごく楽しかったです」と笑う玉村さん。廃業していた銭湯を1から復活させるという初めての実践的作業に胸を弾ませながら、全力で作業に没頭していった。


いよいよプレオープン

そして、人が集まれる場所として生まれ変わった城勝湯。5月12日・13日には、銭湯代無料のプレオープンイベントを行なった。実はそのために着々と準備を進めていた取り組みもある。それは学生が主体となって行う健康体操だ。地域に住む高齢者の方々へ健康増進のため、wiiなどを使った体操のプログラム。さらに加えてフォトウォークラリーと題し、地元の人たちと一緒に歩きながら、改めて発見したまちの魅力を写真に撮り、SNSへアップする活動も実施した。イベントには1日約30人の地元の方々が訪れ、「昔よりきれいになったね」と嬉しそうにお風呂に入る様子が見られた。「すごく嬉しかったです。一生懸命掃除をやってよかったとみんなで喜び合いました」。



降りかかる次なる課題


プレオープン後も定期的に健康運動やフォトウォークラリーを行なっていたが、「運動するよりお喋りの方がいい」「歩き続けるのは大変だ」と地元住民の足はだんだんと遠のいていった。「ぶらぶら歩くつもりだったのが過酷なイベントに思われたりと、なかなか現実は難しいです」と語る玉村さん。それでも銭湯の利用は平日で1日約20人とお客さんの入りは上々。玉村さんもほぼ毎日のように足繁く通っているおかげで地元の人からも受け入れられ、若竹町のことを教えてもらったり、世間話をすることも多くなった。城勝湯からは、2階にある1室を好きに使っていいと言われ、玉村さんたちは学生が来たときに作業できる場所を作っている。


これからの目標


今は周辺の空き地・空き家などの各ポイントを写真に撮って地図に入れ、現地調査を重ねている玉村さん。目標とする若竹町のテーマは「職人町」だ。そのために、現地に足を運んでは、どうしたら景観が良くなるのかを考えている。作るのは「ビュースポット」と「アイストップ」。立ち止まって見てみると若竹町の良さが分かるような場所を町の中で見つけて、それをどのようにしてビュースポットとして機能させていくのかが課題の一つ。そして、アイストップとは一番目に止まるもの。家の白い塀の壁を木の塀に変えたり、道路を石畳に変化させたりするなど、町の雰囲気を良くするための景観を計画している。最終的にはその計画を地元の人たちと市役所に提案する予定だ。「今後町の人たちが活動してもらえるような展開やそのきっかけ作りになるようなまちづくりを考えたいです」と目標に向かって走り続けている。



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