FILE No.58

鳥人間プロジェクト

機械工学科4年

菊池 広樹

毎年夏に読売テレビ・日本テレビ系全国ネットで放送される『鳥人間コンテスト』。これまで4回本選に出場している福井工業大学・鳥人間プロジェクトチームだが、ここ2年は書類審査で落選。苦しい時期を乗り越え、今年ようやく本選に出場。大会では残念な結果に終わったが「会場での緊張感は格別。本選に出てこその鳥人間プロジェクトですから」と話すのは、機械工学科4年の菊池広樹さんだ。

いきなりの主翼制作に緊張と充実感


モノ作りが好きだという菊池さん。「大学では何か新しいことに挑戦したい」と選んだのが『鳥人間プロジェクト』だ。「存在は知っていましたが、具体的なことは全く知りませんでした。でも鳥人間と聞くだけでワクワクしてきましたね」。
2014年、チームは書類審査を通過し、2011年の初出場以来4年連続での本選出場が決まっていた。何の知識や経験もない新1年生といえども重要な戦力。そんな1年生メンバーに任されたのが主翼の制作だった。「先輩からいろいろ教わりましたが、主翼といったら重要なところじゃないですか。少しのミスも許されない箇所。細かいところまで細心の注意を払いながら制作に没頭しました」。作業量も多く作業は深夜に及ぶこともあったが、不思議と充実感に満たされていたという。「とにかくたるみのない、越前和紙が美しく際立つキレイな翼に仕上げようと心に決めていました」。

衝撃的な結末

1年生の夏、初めて目の前にした鳥人間コンテスト会場。自然と気持ちが高まった。
機体が飛び立つ際は、滑走路の後ろにメンバー全員が集まり、「飛べ」と念じながら見守っていた。そして走り始めた機体。ふわっと飛び立ったものの、なんと20数メートル地点であっけなく着水してしまった。重心が前にかかり過ぎていたのだ。
「機体が落ちていく様は衝撃的の一言に尽きます」と菊池さん。
1年生の挑戦はあっけなく幕を閉じた。
しかし落ち込んでばかりいられない。「次こそは、あの会場で遠くへ飛ばしたい」という思いでいっぱいだった。


越前和紙の機体で新たな挑戦を

がんばりだけでは出場できないのが鳥人間コンテスト。2年、3年ともに書類選考で落選。書類選考の結果が届くのは3月か4月。封筒の厚さを見れば、結果はわかるという。「2年連続薄い封筒でした」と落胆の様子をのぞかせる。菊池さんは設計と製図を担当しており、飛距離を伸ばすために、シミュレーションしながら改良を行っていた。「今振り返ると、他のチームに比べて秀でた特徴がなかったのが大きな原因。気持ちも前面に出ていなかったのかもしれません」。
2年連続の書類選考落ちを経験したメンバーが、今年採用したのが越前和紙の機体だった。「強度は問題なし。今までより少しだけ重くなるけど特に問題はない」。秋にはテストフライトを行い手応えも感じていた。そしてついに書類選考を通過。これまで苦労してきたメンバー全員で喜びを分かち合った。


言葉にできないほどの悔しさを噛みしめた夏

2017年7月29日(土)大会当日。天気は曇りだが風はおだやかで、気候条件は悪くない。
「鳥人間コンテストは年々進化を遂げ、飛行距離も3年前と比べて劇的に伸びています。優勝を目指したいところですが、今年の目標は250m。飛べない距離ではない」と自信を持って本番を迎えた。約半分のチームが飛び終えたが、それまでうまく飛ぶチームがほとんどいない状態。期待は大きく膨らんでいた。そしていよいよ福井工業大学鳥人間プロジェクトチームの出番。スタートと同時に「遠くへ!」と心の中で叫んだ瞬間、なんと尾翼が何かに当たり、バランスを崩してそのまま落下してしまった。記録は18.18メートル。
「1年生の時もショックでしたが、今回は言葉にできないほどでした」と肩を落とす。メンバーの落胆も相当のものだったという。「本当に、本当に残念で悔しい。よかったことと言えば、最後に大会に出られたことかな」。
こうして大学生最後の夏は終わりを告げた。


後輩に思いを託して


良いことも悪いことも含め充実した4年間だったと振り返る菊池さん。「実は、大会に出られなかった時期は、どうして結果が出せないのかと自問自答の日々で何度も辞めようかと思いました。それでも辞めなかったのは、1年生の時に先輩たちが目の前で飛んだ姿が目に焼き付いていたから。もう一度飛ばしたいという気持ちが強かったから。そして、何よりモノ作りが好きだったから。仲間と一緒にモノ作りすることが楽しかったからです。もちろん意見のぶつかり合いは日常茶飯事。時にはヒートアップするけど、みんなで一つのものを作り出すには、力を出し合い協力し合うこと、そしてケンカすることがあってもいいんじゃないかと思います」。
大会後は、後輩にバトンタッチするが、時間があれば後輩の指導に当たるなど、できる限りサポートを続けるつもりだという。「来年こそ、後輩が屈辱を晴らすことを願っています」。鳥人間プロジェクトメンバーの熱い戦いはこれからも続いていく。


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