FILE No.115

コミュニケーションの根幹を学んだ海外インターンシップ

工学部 建築土木工学科 3年

岡崎 智優

グローバルな人材育成を目指す福井工業大学が、キャリア教育の一環として行っている海外インターンシップ。現地企業での就業体験を通じ、社会で活躍できる柔軟性と広い視野の獲得を目指している。3年ぶりの開催となった2022年は、タイ王国に進出している8社の日本企業に計16名が参加。その中から、「タイという国を肌で感じ、海外で働くという現実を見てみたい」と臨んだ岡崎智優さんに話をうかがった。

一度は見たかった海の向こうに広がる世界


在学中に一度は海外に行き、社会経験を積みたいと思っていた岡崎さん。3年生になって就職活動が始まり、企業の説明会やインターンシップへの参加を検討していたところ、海外インターンシップの告知を目にし、興味を抱いた。「国内か国外か、締め切りギリギリまで悩みました。海外インターンシップが行われる夏休みは国内のインターンシップも盛んに実施されている時期なので、どちらを優先すべきか迷っていたところ、キャリアセンターの先生が“国内は夏休み以外でも参加できるから、迷っているなら海外を選んだ方が良いと思うよ”と背中を押してくださったんです。それで心が決まりました」。 渡航準備を進める中で、昨今の世界情勢下で海外に行けるありがたさを改めて痛感。良い経験になると、家族も力強く背中を押してくれた。

国を超えて伝わる人の温かさ


海外インターンシップが行われたのは、8月中旬~9月上旬にかけての3週間。岡崎さんが配属されたのは、福井市に本社を置く日本エー・エム・シーのタイ支社だった。ここは、建設機械のアームやショベルなどが滑らかに動くように繋ぎ合わせるための部品・継手(つぎて)の製作を請け負う会社。1つの大きな建物の中に事務所や工場、検査室があり、製図から部品製作、品質検査、製品管理に至るまで、製造に関わる一連の工程に携わることができた。
実際現場に立って痛感したのは、顔を合わせて一緒に働くことの重要性。「通訳さんはいるんですが、ずっといてくれるわけではないので、最初は言葉の壁に困る場面もありました。でも一緒に仕事をするうちに現地スタッフさんと仲良くなって、言葉が分からない同士なのに言いたいことを汲み取りあえるようになっていくのが嬉しかったです。目を見て話すって大事なんだなと実感しました」。


心を伝える方法は幾通りもある

現地でのコミュニケーションは、基本的に英語かタイ語で行われる。「なんとか英語で話してみても、私の訛りや発音で伝わらないことが多くて苦労しました。でも一生懸命伝えようとすれば、最後までちゃんと聞いてくださるので“がんばって伝えよう”って思えるんです」。試行錯誤を繰り返し、簡単な英単語だけにしたりジェスチャーを交えたりすることで格段に伝わりやすくなることにも気付いた。

出発前にはタイ語の参考書を購入し、基本的なタイ語は頭に入れていたという岡崎さん。言葉が通じない時には、参考書を広げて指を差して使用することも考えていた。「ところが日本に置いていっちゃったんです。しまった!と思いましたが、簡単な英単語でも通じましたし、どうにもならない時はスマホの翻訳機能に助けられたので、言葉が話せることよりも大事なことがあるんだなと深く感じました」。特に有用だったのは、出発前の事前研修で繰り返し大切だと教わった挨拶。両手を合わせて“サワディカー”と挨拶すれば、仕事中でも必ず返事がきた。「当たり前のことですが、大切なのは伝えようとする真摯な姿勢と相手の文化への敬意です」と振り返る。


体験したからこそ増えた選択肢

このプロジェクトに参加したことで、海外で働くことに対する考え方が大きく変わった。「行く前は、どこか憧れのようなフワフワした感覚で捉えていました。しかし、日本とは異なる考え方や環境の中で働くということ、海外の方とコミュニケーションを取るということなど、働いてみないと分からない現実がたくさんあって、それらを経験できたのが本当に有意義でした」。現地での就業を体験したからこそ、海外で働くという選択肢も視野に入った。
将来は建築士となり、家の設計に携わりたいと考えている。今回お世話になった企業とは異業種に進むことになるが、各種管理方法など建築物を造るうえでも参考に出来るのではないかと感じる部分もあった。「建築に関わる仕事に就いて建機が一層身近になったら、このインターンシップで学んだことや出会った人達のことを、きっと思い出しますね」。3週間の意義深い経験を胸に、建築士という目標に向かって岡崎さんは新たな一歩を踏み出し始めた。


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