FILE No.121

日本一を目標に、チームをまとめリードする

スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科 2年
女子硬式野球部 主将

神野 百花

2022年4月、北陸地方の大学で唯一の女子硬式野球部が福井工業大学に誕生した。主将の神野百花さんは、チーム力の強化や後輩の指導に当たりながら、日々の練習や試合に臨んでいる。創部1年目の課題と活動状況、公式戦出場が可能になった2年目の目標や主将として心がけていること、野球にかける思いなどをうかがった。

充実した練習環境と新しいチームで野球ができる!

社会人野球で活躍する父とソフトボール経験者の母の間に生まれ、兄は少年団野球チームの一員という野球一家で育った神野さん。「自分もやってみたい」と、小学校入学と同時に兄の所属チームに入り、中学卒業までの間に2塁手、外野手、ピッチャー、キャッチャーと幅広いポジションを経験した。高校は、地元の愛媛県を離れ、全国高等学校女子硬式野球選手権大会優勝などの実績を有する京都府の福知山成美高等学校に進学。以来、守備はキャッチャーに定着し、ピッチャーの配球や捕球、盗塁阻止はもちろん、守備全体に目を配り指示を出すなどチームの要として活躍している。

福井工業大学への進学は、高校の女子硬式野球部監督の勧めでオープンキャンパスに参加したのがきっかけだった。「野球場のそばに新しい室内練習場ができると知りました。完成前だったので見学はできませんでしたが、充実した練習環境が整うこの大学なら野球にしっかり打ち込めると思いました」。さらに、神野さんが入学予定の2022年度初めに女子硬式野球部が創設され、1期生になれることも大きな理由だったという。「これまでのように既にでき上っているチームに入っていくのではなく、自分たちで一から新しいチームをつくっていけることに大きな魅力を感じました」。


女子硬式野球部の1年目は、個々の実力アップに注力

2022年4月、「日本一」を目標に女子硬式野球部が始動したが、部員は神野さんを含め、9人以下であった。単独チームでの公式戦出場ができなかった1年目は、翌年に向けて個々の能力をアップさせることが直近の目標となった。練習場は、永平寺町のカールマイヤーグラウンドと福井市の角折グラウンド、これらに併設されている室内練習場を、男子野球部、高校・中学の野球部と調整しながら使用する。時間は、平日が午後4時から8時、土・日・祝日は午前9時から午後4時まで。月曜日はオフにもできる自主練習の日となっている。

通常の練習は、ウォーミングアップ後にキャッチボールを行い、守備、バッティングと続く。さらに試合形式の練習もしたいところだが、部員が少ないことから、実行は難しかった。「高校で当たり前にやってきた試合や実戦に近い練習ができないのは苦しかったです。でも、『今は来年に向けて頑張るときだ』という気持ちを持ち続け、乗り越えることができました」。

対外試合は、山口県の至誠館大学と連合チームを組んで全日本大学女子硬式野球オープン大会に出場。さらに、中部地方の大学や社会人チーム、高校生や中学生のチームで結成された中部女子硬式野球連盟に加盟し、同連盟が開催するセンターリーグに附属の福井高等学校女子硬式野球部との合同チームで出場した。「オープン大会で他の大学の選手を目の当たりにして、自分との力の差を感じました。以来、捕球後の投球の素早さとか、バッティングのスイングスピードの速さや長打力の向上を意識して練習するようになりました」と語り、実戦を体験する大切さを感じている。

念願の全国大学女子硬式野球選手権大会に出場し、優勝を目指す


2023年4月、1年生14人が入部して17人体制となり、全国大学女子硬式野球選手権大会への出場資格を獲得。本大会で優勝し日本一になることが創部時からの目標だ。福井工業大学チームとして試合に出場するという念願が叶ったことを喜ぶ神野さん。「この大会に向けて、去年はできなかった連携プレーやチームの全体練習に力を入れています」と声を弾ませる。また、土・日曜は、県外の大学や高校、クラブチームとの練習試合を行い、実戦力を磨いているそうだ。

5月には、高知県安芸市で開かれた全国大学女子硬式野球選手権春季大会に初出場。しかし1回戦で敗退し、その後の敗者戦では惜敗を喫した。「やはりチームとしての活動が浅く、チーム力で負けていたことを実感しました。福井に戻ってからは、これまで以上に選手同士の声掛けやコミュニケーションを活発にしてチーム力の底上げに取り組んでいます」。このような中で神野さんが主将として心がけているのは、部員全員が気兼ねなく意見を言える環境づくりだ。「ほとんどの部員が、上下関係が厳しい高校の野球部から上がってきていて、1・2年生の時は自分の意見を言いづらかったと思うんです。そのような環境だとチーム力はなかなか向上しないので、礼儀は大切にしながらも、後輩部員が意見を言いやすい雰囲気をつくったり、ミーティングでは私から声をかけて発言を促したりするようにしています」。監督の指導を仰ぎながらも、練習方法やチームのあり方について部員一人ひとりが考え、選手主導で野球をすることが福井工業大学女子硬式野球部の方針だ。各部員の積極性や意見を引き出すことも神野さんの大きな役割である。

来たる8月には、和歌山県田辺市で5日間にわたり全国大学女子硬式野球選手権夏季大会が開催される。13チームが出場予定で、4ブロックに分かれてのリーグ戦ののち、各ブロックの上位2チームが決勝トーナメントに出場する。リーグ戦を突破し優勝を目指す神野さんたちの熱い練習が今日も繰り広げられている。

将来は指導者になって女子野球を発展させたい


「1球で試合の流れが変わったり勝負が決まったりするのが野球のおもしろさです。さらに、例えば自分がミスをしても誰かが取り返してくれるといったチームで力を合わせて戦うところに魅力を感じます」と神野さん。部員一人ひとりに目を配り、協調性や思いやりをもって接することができる彼女が高校時代から考えている将来の目標は、女子野球の指導者になることだ。本学スポーツ健康科学科への進学は、スポーツや健康の幅広い知識が身に付き、学校教育や地域スポーツの現場で必要な指導のノウハウを学べるからでもあったと話す。女子硬式野球部を有する高校は全国で50校を超えているが、女子の野球人口は男子に比べまだまだ少ないのが現状だ。「選手やチームをもっと増やし、女子野球を発展させる力になりたい」との言葉には、神野さんの人柄と野球への思いが表れている。


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