FILE No.104

大学での学びと学外活動の経験を力に、将来を描く

環境情報学部 デザイン学科 4年

饗庭 大喜

デザイン学科の都市デザインコースで学びながら、まちの活性化を図るイベントをはじめさまざまな学外活動に積極的に取り組む饗庭さん。その意欲の源やこれまでの活動内容、多くの経験から得たもの、後輩や福井のまちに対する思い、今後の目標などについてうかがった。

自分らしい学び方と方向性を定め、積極的に行動

饗庭さんが福井工業大学デザイン学科への進学を考えたのは、高校3年生のときだった。懸命に打ち込み、大学でも継続しようと思っていたアメリカンフットボールで怪我を負い、スポーツをあきらめざるを得なくなったのがきっかけだった。「この先自分が何をしたいか、何が向いているか考えました。そして、何か形になることをしたい、手を動かし、動き回り、人とコミュニケーションをとりながら学びたいと思って決めたのがデザイン学科でした。建築にも関心があったので、建築土木工学科も考えましたが、多様な分野に触れ、思考の引き出しが増えるのはデザイン学科だと思いました」。

デザイン学科には高校でデザインを勉強してきた学生も多い。その中で、「自分はゼロからのスタート。行動力とコミュニケーション、手数で勝負しようと思い、いろんなことを吸収しようと動き回ることにしました」。当時設けられていた建築、プロダクト、グラフィックの3コースのうち建築を選択した饗庭さんだが、えちぜん鉄道の車両をアート作品に仕上げるプロジェクトに参加したり映画を制作したり、さらに、まちづくりやモノづくりなど多様なジャンルのイベントに積極的に足を運んだという。「最初は掲示板で見つけたイベントに出かけていく受け身の姿勢でしたが、あるデザイナーさんに、『自分から取りに行かないと駄目だよ』と言われ、興味を持った講演会やセミナーなどにもどんどん出かけていくようになりました。有料のものもありましたが、吸収することに専念できる4年間だから、出し惜しみせず自己投資しようという気持ちでした。本もたくさん読み、その中でおもしろいと思った人を訪ねて行ったこともあります。振り返ってみれば、思い切って行動してよかったです」。

デザイン学科の強みを生かしながら、学外活動で幅広く体験


饗庭さんが、工学部や他校のデザイン系の学生と交流する中で気づいた福井工業大学デザイン学科の強みともいえる特徴は、1年生の基礎科目に芸術が含まれていることだった。「例えば建築を工学的な面だけでなく、総合芸術の一環として捉える。あるいは物を作るときも、それが空間全体にどのような影響を与えるのかを考える。そういった全体としてのつながりを見る目を養ったり、感性を鍛えたりするカリキュラムが1年生のときから含まれていたのは本当に良かったと思っています」。

このようにデザインの素養を身に付けていった饗庭さんだが、1・2年生で自ら飛び込んで行った学外活動では、学内では得られない体験ができたという。「例えば、自分がデザインした道具を実際のイベントで使用してもらったときは、使った人の反応がわかり、自分が予想していなかった使い方も知ることもできました」。また、仕事として制作したときは、自分が作った物の価値と対価についての意識も養われたそうだ。

コミュニティづくりも意識したまちの活性化プロジェクト

昨年はコロナ禍の影響でイベントの機会が失われたが、今年3月、饗庭さんを中心にデザイン学科の学生十数名が「頼もしくも楽しそうなプロジェクトチーム(通称TAC)」を結成し、福井市の街なか活性化のための活動を実施した。3月27・28日に足羽川河川敷で開催されたアウトドアイベント「まちキャン」(福井市エリアマネジメント協会主催)に、ベンチや屋台など形を変えて使用できる什器を出展。什器はチームのメンバーでデザイン、製作し、初日には物販の手伝いなども行った。この企画は饗庭さん個人に依頼されたものだったが、後輩たちも巻き込んで取り組むことに。「コロナが収まらなかったので、今の1・2年生はイベント体験ができなかったんです。現場で実際に使われる物を制作するには、安全性を考えて作ることや、まちの人とのコミュニケーションなどが必要なので、それらも含めて後輩たちに経験してもらいたかった。経験することで自信がつくし、什器の今後の使われ方を考えるなど、プロジェクトに持続性を持たせることができます」。その後、自分たちの作品を発表し合う会を開こうとするメンバーが現れるなど積極的な動きも見られ、「自立した学生がたくさん出てきてくれるのがうれしい。物だけでなく、コミュニティもデザインできれば」という饗庭さんの思いが形になってきている。

福井のまちづくりの展開に関わり、見届けたい


大学卒業後は、これまで関わってきた福井のまちづくりの活動を納得できるところまで続けたいという気持ちもあるという。福井駅前では、2024年春に予定されている北陸新幹線開通に向けて再開発が進行中で、饗庭さんのこれまでの活動の多くもこの再開発へつながるものだった。「まちキャンに向けて作った屋台などの什器もそうですが、福井が変っていくタイミングでまちづくりに関わらせていただいているので、今後どうなっていくのか長い目で見ていきたいんです。物を作って終わり、再開発で建築物を建てて終わりではなく、それらがどういうふうに使われて、今度こうしたらもっとよくなっていくのかという展開が大事。この先も福井のまちの変化を見ていきたいと思っています」。

目標は、建築もできるデザイナーに

1・2年生の頃、建築家になりたいと思っていた饗庭さんは、2年生のとき、アメリカの建築物を見るために一人で渡米している。「たくさんのすばらしい建物に感動しました。でも一方で、スラムのように荒れているエリアに行ったとき、ホームレスの人たちが段ボールで組み立てた物や、子どもが道路に描いた絵が可愛くて、そこに駐車できずにいる車の様子を見て、自分たちで生活空間を作り、獲得することがとても豊かなことだと思ったんです」。このときの経験から、一人ひとりが自分の視点で物事を表現できる場をイメージし、建築もプロダクトも含む空間全体をプロデュースできるようになりたいと考えている饗庭さん。「将来は、さまざまな分野のスタッフが集まって連携し、オールプロデュースできる事務所を32歳までに開くことが目標です」。


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