熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.14
経営情報学科3年
芝田 稔
theme:ロボカップ

「ロボカップ」は社会に役立つロボット技術者の育成を目的とする世界的プロジェクト。毎年、世界各地でロボット工学と人工知能を融合させた人型ロボットによる様々なタイプのサッカー競技会が開催されている。福井工業大学経営情報学科の学生で構成される『FUT K_3D』は、2008年から「ロボカップサッカー・3Dシミュレーションリーグ」に参加。日本一を2度達成、4年連続の世界大会、最高順位世界ベスト8を果たしている強豪チームだ。現在、チームをけん引しているのが、今年と昨年の2年連続で世界大会に出場している経営情報学科3年の芝田稔さん。これまでの経験を活かし、“世界一”を目標に新たなプログラミングに取り組んでいる。

考えうるあらゆる行動を予測してプログラム


ロボカップサッカー「3Dシミュレーションリーグ」は、人工知能プログラミングされた人型ロボットが、コンピュータ上の3次元フィールド(3D)でサッカーを行う競技。ロボカップの中で最も古い歴史を持つリーグで、質の高いプレーを見ることができる。試合は前半5分、後半5分の10分間で勝敗を競う。見た目にはサッカーのコンピュータゲームに見えるが、中身は大きく異なる。
各出場チームは、ロボットが歩く・起き上がる・蹴るなど一つひとつの動作をプログラムする。「何より“歩く”行為をさせること自体が難しい。歩く時に膝を曲げるでしょ。その関節の角度もプログラミングする。うまく歩けなかったり、すぐに転んでしまったり、なかなか起き上がれなかったり…。それができてからようやく、こういうフォーメーションを組んで動かしてみようとか、ディフェンスをガチガチに固めてみようとか作戦を練って、そうした動作になるように個々のロボットのプログラムを作成する。ロボカップの大会終了後、大会で使用したプログラムが配布されるため、大学のパソコンで参加チームのプログラムを再現させ、相手がどう戦術や動きを変えてくるか予想し対策を練っていくのです」。
試合中、参加者は画面を見てその成り行きを見守ることしかできない。
「プログラムのミスは往々にあります。試合途中で『ここは、こういくべだろう!』って思うんですが、思うように動いてくれない。ロボットは自分がプログラムした通りにしか動かない。歯がゆい気持ちを抑えるのに精いっぱいです」と芝田さんは笑う。

人型ロボットの片足立ちからスタート


芝田さんが『FUT K_3D』に参加したのは、大学1年生を間もなく終わろうかというころ。ロボカップサッカーのプログラムには、「C++」という言語を使う。「大学2年生から学ぶ言語で、初めて触れるプログラム。でも、1年生の時に受けたプログラミングの授業がC++の基礎になっているので、なんとか理解できた」というほとんどゼロからのスタートだった。



最初は、ロボットを片足立ちさせるところから教わる。足を上げさせることは割と簡単なのだが、重心の移動を考えないとすぐに転んでしまう。これまでのメンバーが作ったコードを見たり、自分なりに勉強しながらプログラムに没頭した。何回もシミュレーションして動きを確認し、同じ命令を打ちながら少しずつ直していく作業の連続。「思った行動ができた時は、達成感でいっぱいになりました」。半年ほどたったころ、ようやく思うようにロボットを動かすことができるようになった。

先輩引退後のジャパンオープン、たった一人での世界大会への挑戦


ところが2年生になると、チームを引っ張っていた先輩が引退。メンバーが集まる日が徐々に少なくなり、積極的に参加していたのは芝田さんただ一人。実は、5月に開催される「第12回ジャパンオープン」、7月に開催される世界大会への出場が決まっていた時期でもあった。
「まだ始めて3ケ月!どうしよう、どうしたらいいのかっていうのが正直な気持ちでした。でも大会出場は決まっている。悩んだ挙句、なんとかするしかないって腹をくくりました」。
ジャパンオープンまでに時間がなく、これまでのメンバーが作ったプログラムに少しだけ手を加えて大会に参加。なんとか3位入賞を果たすことができ、「先輩が残してくれたものは大きかった」と痛感する。

ホッとしたのもつかの間、世界大会への出場が迫っていた。準備期間は短いものの「世界大会に出るからには自分のプログラムで挑戦したい」と連日深夜までプログラムと格闘。しかし、どうしても自分で解決できない問題が発生する。4年生で引退した先輩にメールを送るものの、意思疎通がうまくいかず手当たり次第に取り組む苦しい日々だった。

そして迎えた世界大会。基本プログラムはそのままに、一部自分なりの作戦を考案し新しいプログラムを組み込んで試合に臨むことにした。『FUT K_3D』は1次リーグでアメリカ、中国、ドイツ、ポルトガル、ブラジルと対戦するも、4敗1分けで5位という結果に。惨敗したものの翌日の敗者復活リーグに進むことが決まった。
ロボカップサッカーでは、リーグ戦の試合開始前にプログラム提出の締め切りがあり、それ以降はプログラムに一切手を加えることが許されないが、試合が2日、3日と続く場合は、次の日の締め切りまで改良を加えることができるチャンスが与えられている。
芝田さんは「このままでは到底敗者復活では勝てない」と確信していた。そこで、これまで開発していたが、不安で試したことがなかったというプログラムを試してみようと思いつく。「どうせ勝てないなら、試してみる価値があるはず」と。
しかし敗者復活の当日、不安が的中してしまう。思った以上に動きが鈍く、キックオフもままならないほど。無残な試合で惨敗し初めての世界大会を終えたのだった。
「試合中、恥ずかしくて顔は真っ赤。相手のチームが笑っていたほどですから」。この時、「来年は絶対に笑わせないぞ」と強く心に誓った。

チームが結束して臨んだジャパンオープンで準優勝、自身2回目の世界大会出場へ


3年生になり『FUT K_3D』のメンバーは3名(2012年10月時点では4名)に増えた。ようやくチームで開発を進める体制が整い、それぞれに役割分担してプログラミングに当れるようになった。
3人で挑んだ「ジャパンオープン2012」では、準優勝の成績を収めることができた。初参加となった2008年のジャパンオープン以降、5年連続での入賞で、同一大会での入賞連続記録を「5」に伸ばした。
続く6月にメキシコで行われた世界大会に芝田さんは2年連続で出場。予選1次リーグを勝ち進み2次リーグに進出。予選1次リーグの結果を踏まえてプログラムの改良を行ったものの、強豪チームがひしめく中、4敗1分で6位という結果で終わった。
さまざまな国の人々が集まり、全部門が一堂に会して行われる世界大会は刺激も多い。「結果は残念でしたが、いろんな人と交流できるし、試合を見て盛り上がることもある。イギリスチームのメンバーがワールドカップさながらの歓声をあげ、会場を盛り上げていたのが印象的。お国柄を垣間見ることができますね。ロボカップサッカーの面白さ、楽しさを改めて感じることができました」。

チャンスはある。目指すは世界一


今年の世界大会は、昨年に続きアメリカの大学チームが優勝した。
「驚いたのは斬新ともいうべき歩行の動き。ロボットは大抵一歩一歩足を出して歩くのですが、優勝チームの場合、足が小刻みに震えているように動くのです。奇妙にも思える動きなんですが、安定していて動きも速い。小刻みに動くので旋回するのもスムーズ。すごい発想で勉強になりました」。

世界のチームは日本国内のレベルに比べると数段上。国内の試合では、味方のロボット同士が互いに認識できずにぶつかってしまうことも多いが、世界大会のレベルではロボット同士が相手を避け合うようにパスを出すことができる。
しかし、芝田さんは再び世界に追い付くチャンスはあると確信する。「歩行は何をする上でも重要な動き。より安定した歩行にできれば世界に並べるはず。あとは転んだ後の起き上がりの動作。起き上がりがスムーズだと素早く次の行動に移せる。今、新しい歩行と起き上がりを開発中なんです」。現在は来年の大会に向けた改良に夢中の様子だ。

「世界一を目指すには豊富な知識と経験が必要。実は参加チームの多くが大学院生で、その差を痛切に感じます。でもそんな舞台にあえてチャレンジしたい。世界一を目指したい」。
淡々と質問に答える芝田さんの心の奥深くに熱く燃える闘志が秘められているのを感じた。

今年のジャパンオープンに参加した経営情報学科2年 石高 将斗さん


今年のジャパンオープンではプログラミング作業を担当しましたが、改めてプログラミングの難しさを痛感しました。指令したことしか動いてくれません。こうしてほしいと思っても、指令していないので動くはずがありません。その難しさが苛立ちにつながることもありますが、一方ではやりがいでもありますね。これからはメンバーで協力して、さらなる進化を遂げたいと思います。目標は、来年のジャパンオープンでの優勝。芝田さんは世界一が目標ですが、僕は確実なところで世界大会でのベストが付く順位を目指したいと思います。



学年学科名等は、取材時のものです。