熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.12
機械工学科2年
舟田 朋仁
theme:鳥人間〜パイロット〜

毎年夏、琵琶湖上空で熱戦を繰り広げている「鳥人間コンテスト選手権大会」。昨年、8年越しの夢を果たし初出場を決めた福井工業大学・鳥人間プロジェクトチーム。今年も厳しい書類審査を突破し、2年連続で本大会・滑降機部門へ出場した。2度目のフライトなる2012年大会の飛行距離は88.26m。「操縦が思いのほか大変。目標は100m超えでしたが、あと一歩及ばず。でも、昨年より飛行距離が伸ばせたのでなんとか役割は果たせたかな」と声を弾ませて話すのが、今回パイロットを務めた機械工学科2年の舟田朋仁さんだ。

パイロット候補としてスカウト


舟田さんが鳥人間プロジェクトに参加したのは、今年の5月頃から。
鳥人間コンテスト大会の約3ヶ月前だ。
きっかけは、担当の先生によるスカウトだった。
モノづくりが好き、飛行機が好き、鳥人間コンテストに憧れていたというメンバーが揃う中では、どちらかといえば異色のタイプではないだろうか。

「1年生の時はサークルにも入らず、時間を持て余していました。どこかに入部したい、何かに熱中したいと、内心ずっと思っていました」。
その頃、参加メンバーの友人に連れられ遊びがてらに何度か足を運んでいたのが同プロジェクトのラボラトリーだった。 「鳥人間コンテストは何度かテレビで観たことがあります。夢中になって取り組んでいる姿を見て、おもしろそうだなぁーって思っていました」。
しかし、自分から参加してみようという一歩は踏み出せないでいた。
そんな時、声をかけてくれたのが担当の教員だった。
舟田さんの小柄な体格と身体能力に注目し、パイロット候補としてスカウトしたのだった。
「やれるなら、やってみたい」。

マニュアルのない操縦法


6、7月には本番に向けたテストフライトが行われた。
この頃にはパイロットは舟田くんに確定していた。「パイロットは小柄な人に有利。コックピットを小さく設計でき、機体の軽量化にもつながりますから」。
パイロットといってもマニュアルがある訳ではない。
一度飛行すれば機体が壊れてしまうため、まともに練習もできない。機体チェックのためのテストフライト時に、OBから機体の重心の上げ下げのコツを聞いただけ。「あとは、先生から航空機に関する本を読むようにアドバイスをもらいました。重心移動について説明があるからです。あまり読んでも混乱するので、わかりやすい本を1冊だけ読みました。アドバイスはこれだけなんですよ」と笑う。
本番では、機体が飛び立ったと同時に機首を下げる。湖面に近づく前に機首を上げ、水面近くを平行して飛ばなければならない。 周囲から何を言われたわけでもないが「プレッシャーは感じていました」という。不安がないわけではない。引き受けたからには全力を尽くしかない。そんな気持ちだった。

フワッと浮き上がると昂揚感がこみ上げてきた


7月28日(土)本番当日。会場は滋賀県彦根市の琵琶湖東岸の特設会場。
“プラットホーム”は水面から10mの高さ。間近で見上げると、圧倒的な高さだった。「心臓が飛び出すほどドキドキ。今思い出しても汗が出てくるほど」と高鳴る鼓動を抑えつつ、その時間を待った。
そして、いよいよ福井工業大学鳥人間プロジェクトチームの飛び立ちの時。
コックピットに入り、メンバー3人が左右の翼と後方で機体を支えスタンバイが完了すると、準備OKの旗がふられた。
「スリー・ツー・ワン、GO!」
舟田さんの叫ぶような掛け声で、メンバーが一斉にプラットホームを駆け出した。
飛び立つと同時にウォーっと叫んでいた。見えるのは空と湖だけ。一瞬、映画のワンシーンのような不思議な感覚に包まれた。しかし、すぐに我に返った。
身動きのとりにくいコックピットで、体の重心を前に。水面を目視すると重心を後ろに移し機首を上げようとふんばった。
しかし間もなく、機体は衝撃と同時に着水。コックピットの先端のフイルムが破れ、水が勢いよく流れ込んできた。上部を突き破り、水面に顔を出した。
飛距離は、88.26m。
「もう少し飛べるかと思ったのですが…。体の重心をずらすと、機首が上がったり下がったりするのですが、前のめりになっている体の後ろに重心を移すのは思いのほか難しかった。機首を上げるタイミングが遅かったですね」と振り返る。
目標の100mには届かなかったが、昨年を上回る飛距離でメンバーも満足の様子だ。
「去年より距離を伸ばすことができたので、なんとか役割は果たせたかな。来年こそは100m越えを達成したい」。

試行錯誤しながら全員で完成させる達成感に魅了


今回は、機体の軽量化や気流を考慮したコックピットの先端に丸みをつけるなど、昨年の大会での反省点を活かし改良を重ねてきた。製作はメンバー全員で取り組む。パイロット候補も例外ではない。舟田さんもコックピットの製作に携わってきた。飛行機製作はもちろん初めての経験だった。
「作業は深夜遅くまで続くことも。鳥人間のラボラトリーにはクーラーがなくて、夜は汗だくで死にそうでしたよ(笑)。正直しんどいなぁって思うこともありました。でも、みんなであーでもない、こーでもないって試行錯誤しながら作り上げていくのがおもしろくて。完成した時の達成感は最高に気持ちいい。いい仲間と最高のプロジェクトに巡り合えて本当に良かった」と声を弾ませる。

舟田くんをはじめメンバー全員の気持ちはすでに来年に向かっている。
「コックピットは多少余裕があったのですが、昨年よりは狭く、体を動かしにくかったんです。今回の経験を活かして、操作のしやすいコックピットの改良に取り組みたい。もっと遠くに飛びたい。だからもっとすぐれた機体をつくりたいんです」。
舟田さんの新たなる挑戦は始まったばかりだ。



学年学科名等は、取材時のものです。