熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.82
環境情報部デザイン学科3年
女川 拳吾
theme:大学生観光まちづくりコンテスト2019

theme:大学生観光まちづくりコンテスト2019

大学生が観光によるまちづくりの活性化プランを競い合う「大学生観光まちづくりコンテスト」。その北陸ステージで、福井工業大学の4人チームの「きたまちLabo」が、観客の投票で決まる「オーディエンス賞」に選ばれた。そのメンバーをまとめたのが女川拳吾さんだ。

観光からまちづくりを考える


小さいころからサイクリングで街を眺めるのが好きな女川さん。小学6年生の時には出身地の富山から金沢まで半日かけて自転車の旅に出かけるほど。大学生になった今でもあわら市や大野市など、サイクリングで友人と一緒に観光名所を回っている。そのサイクリングがきっかけとなって、いつしか街づくりに興味が湧くようになった。特に地方都市のデザインを手がけたいと思うようになり、選んだ大学が都市デザインコースのある福井工業大学のデザイン学科。3年生になって研究室に入り、そこで「大学生観光まちづくりコンテスト」の存在を知る。「これは観光プランを考えて、いかに地域を活性化させるかというプランを提案するコンテスト。普段やっている建築のコンペとは違ったアプローチができるので面白そうだと感じました」。地方のまちづくりを考える、願ってもないチャンスだった。

フィールドワークでテーマを見つける

周りで興味がある学生を集め、4人でチームを作り取り掛かった。プランの条件は北陸地方の中から2つ以上の県をまたいだルート案を作ること。実際に現地でフィールドワークをして、1か月後にはプランを提出する書類選考が迫っていた。まずは昔からの街並みが残る三国に焦点を当てて調査に向かった。そこで住民に話を聞いて調査し、街を探索するうちに、北前船というキーワードを発見する。三國湊は古くから九頭竜川などを使った水運による物流の拠点で、江戸中期に海上航路として発展し、北前船で大きく発展した経緯をもつ。明治に物流が船から鉄道へと移り、衰退への道を辿るが、北前船が残した歴史や文化、情緒ある町並みは残っている。その古き良き街を利用できないかと考えた。しかも北前船は福井だけでなく、富山や石川にも寄港している。そこで同じような港町、石川では七尾、富山では岩瀬を巡るプランを考えた。そこは同じようにどこか懐かしさが感じられる港町だ。宿泊場所も昔ながらのゲストハウスにして、まち歩きして古き良き街を楽しめる行程にした。


移動手段も風景を楽しむツール

チーム名も北陸や北前船の北をとって「きたまちLabo」と命名。次はそれらの地域をどう巡るかを考える。サイクリング好きな女川さんは、かねてから移動手段として短時間で終わらせてしまう新幹線や車に味気なさを感じていた。「なんか寂しいですよね。移動の景色も楽しめる方がいいなと思いました」。そこで、現地の観光列車やローカル鉄道など第三セクター鉄道で巡ることを打ち出した。だんだんと形になっていく観光プランだが、実際に自分の足で調査するのは労力を伴う作業だったという女川さん。「時間をかけて調査して、さらに4人の意見をまとめるのは本当に大変でした。しかし、4人だからこそいろんな視点があって、少しずつ計画ができあがっていくのはとても充実感がありました」。何度も相談を重ね、全体のキーワードを「回帰」と決めた。都会で忙しい人や疲れた人に、北陸の原風景が残る港町や、そこに住む人たちの生活を見て癒されて欲しいという願いを込め、プランを提出した。



何もないところから作り上げる面白さ


そして、北陸ステージで23大学36チームの中から、書類選考を通過した9大学10チームの中に入ることができた。選ばれたチームは10分の発表時間と5分の質疑応答を行う最終審査に挑む。女川さんたちはそこでも一工夫を重ねた。えちぜん鉄道からアテンダントの服を借りて、行程を紹介する役と、観光客役の2役を演じるプレゼンテーションを考えた。「小道具が使用可能だったので、ただ発表するより、面白くて分かりやすく劇のように見せたいと考えました」。その演出が功を奏し、見事オーディエンス賞を受賞。賞をとったのは福井工業大学では初めてのことだった。会場からは、『プランの工程が具体的で事前調査がよくできている』『北前船と第3セクターで結んだプランと古き良き時代への回帰にうまく繋げている』など、評価を得ることができた。「苦労した甲斐がありました。ゼロから案を作り、計画していくのは面白くて、有意義な経験になりました」。

まちづくりへの意欲をさらに高める


大学では駅周辺などの都市デザインを考える実習に取り組んでいる女川さん。そこでは駅前の設計だけでなく、その場所を利用する人の流れやまちの文化など、地域の文脈を読み解く力を必要とされる。「フィールドワークの大切さなど、コンテストに参加して経験したことが、大学の実習でも生かされていると感じます。卒業制作では電車やバスなどの交通を絡めたまちづくりを中心に考えていきたいです」。まちづくりに対する情熱がより一層強くなり、これからの創造力をかきたてる経験になったようだ。



学年学科名等は、取材時のものです。