FILE No.56

合同講評会で最優秀賞受賞

建築生活環境学科4年

中川 実祐

平成28年12月、学生らしさを活かした視点や創造力、プレゼンテーション力を建築のプロフェッショナルたちが評価する、県内2大学・高専の設計実習作品 合同講評会で、建築生活環境学科4年の中川実祐さんの作品が最優秀賞に選ばれた。「今回いただいたアドバイスを踏まえ、今後の制作につなげていきたい」。情熱を持って形にした自分のプランが真摯に評価されたことは、中川さんの意欲を大いにかき立ててくれるものだった。

最優秀賞受賞によろこび

福井工業大学からは、学内で選出された3名が参加した。学内で出された共通のテーマは『保育施設』。「まず、自分が幼稚園の頃、何をしていたかを思い返してみました。お絵かきしたり、ごっこ遊びしたり。中でも一番鮮明に思い浮かんだのが歌うことでした」。そこから導き出したのが『歌う保育施設』だった。「歌は、人間が行う最初の文化的行動。歌うことは子どもの成長に大きく関わってきます。言葉の練習にもなり、ストレス発散にもつながります」。小鳥のさえずり、雨や風の音、反響する音など、5つの“歌うはじまり”の要素を取り入れた中川さんの作品は、内部と外部が曖昧につながる屋根があるだけの半外部空間や、音が響くアーチ状の空間など、自然を感じられるような設計だ。途中で何度もアイデアを練り直し、修正を重ねて、ようやく完成した。「今まで制作してきた中で一番手応えを感じた作品で、いい講評をもらえ、評価してもらえたことが嬉しい。がんばってきて良かった」と笑顔がこぼれる。


コンペ参加を通じ知識や技能を磨く


講評会やコンペでは、設計図や模型はもちろん、プレゼンテーションの技量も評価の対象になる。「話すことは好きなのですが、伝えることは得意ではありません。でもプレゼンでは、説明するだけじゃなく、さらにプラスαの訴える力も必要。設計の意図をわかってもらうため、より熱意あるアピールがもっと必要だと痛感しました」と振り返る。これまで積極的に学外のコンペに参加してきたが、結果を出すことはできなかった。「とりあえず挑戦することが大事かなって。いい結果が得られればいいけども、ダメなら何が自分に足りないのか、どう改善すべきかがわかります。少しずつ成長できればいいという気持ちで参加してきました」と実に前向き。
初めて外部コンペに参加したのは1年生の時。先生に「4年生のコンペがあるから参加して見ないか」と誘われたから。まだ1年生で何もわからない状態。もちろん何かできるわけでもない。とりあえず勉強させてもらう気持ちで参加することになった。「すごく良い雰囲気で、1年生でも意見を言わせてもらいました。さまざまな意見が飛び交い、すごく刺激的でした。おまけに、お手伝いした作品が入賞。励みになるだけでなく、勉強にもなる。自分も頑張ってみよう」と、奮起するきっかけになったそうだ。

社会とつながる経験で得たものは大きい


小学生の頃から設計の仕事に興味があり、建築設計を勉強したいという明確な目的を持って福井工業大学の建築生活環境学科に入学。研究室では、レストランの改修工事のデザインや産婦人科院のインテリアデザインなど、企業とタッグを組むプロジェクトに関わった。「施主さんと話をしながらアイデアを形にして提案しますが、費用や見た目で却下されることが多く、社会の厳しさを痛感。でも、なんとか形になった時の達成感は何よりも得難いものですね。机の上の勉強じゃなく、社会とつながる貴重な経験で得たものは多い」と話す中川さん。入学当初はぼんやりと設計士を目指したいと思っていたが、こうした経験や大学での学びを通して、建築の世界は自分が想像していたものとは違っていたことに気付いたという。「これまで設計のことしか頭になく、建築の花形は設計だと思っていました。でも、実際に現場を経験してみると、現場監督や職人さんなど様々な分野のプロの仕事があり、その人たちの支えがあるから設計という仕事が活きてくるということを目の当たりにして、目標とする方向の幅が広がりました」。

設計も現場も経験したい


3年生の夏に設計事務所のインターンシップを体験。やはり設計だけの仕事にもの足りなさを感じた。続く建築会社でのインターンシップでは、設計だけでなく現場の手伝いも経験し、改めて現場の重要性を感じた。
「建築生活環境学科は課題が多く、徹夜することも多かったですね。やってる最中はしんどいのですが、終わってみると不思議とやってよかったと思える。本当にやりたいことというのは、好きと辛いが両方あるんじゃないかと感じました。あとは、4年間の集大成である卒業制作に全力で取り組むつもりです。残りの大学生活を悔いのないものにしたい」。晴れ晴れとした姿が実に印象的だ。


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