FILE No.29

ホッケー部

建築生活環境学科1年

大井 大輔

平成25年4月に1年生12名でスタートした福井工業大学ホッケー部。始動早々に関西学生ホッケー春季3部リーグで全勝優勝し2部に昇格、続く秋季2部リーグでも全勝優勝。同年11月16日に開催された1部-2部入替戦で中京大学を破り、見事1部昇格の快挙を果たした。この試合で決勝ゴールを決め最優秀選手賞に輝いたのが、建築生活環境学科1年の大井大輔さんだ。

新生ホッケー部は刺激的でおもしろい


平成25年4月、新生ホッケー部に集まったのは入学したばかりの12名の1年生。試合でフィールドに立つプレイヤーは11名で、試合に出場できるギリギリの人数でのスタートだ。それでも部員全員が経験者で、実力校出身者も少なくない。福井県越前町出身の大井さんもそんな実力校出身者の一人。越前町は1968年の福井国体でホッケー競技が開催されたことから、ホッケーが町技として多くの町民に親しまれている地域だ。そんな地元の環境の中、小学校3年から中学・高校とホッケー一色の生活を送った大井さん。高校3年の時にはインターハイと国体に出場し、全国3位を経験している。
「うちは新しいチームですが、全員が経験者で1人1人の技術がしっかりしている。それに全員同学年ということもあり、仲がよくチームワークが抜群。パスワークのテンポも良いですね。全員が1年生が逆に強みですよ」と話す。スタート当初は各部員の主張がぶつかり合うこともあったというが、そんな状況も部員同士で解決し自然にまとまっていった。「このメンバーでスタートできて本当によかった。いろんな考え方や指導者のもとで育ったメンバーとのプレーは刺激的でおもしろい。出身校によって攻め方も考え方もまったく違うので、学ぶことも多いですね」。

2部昇格直後の惨敗で涙


4月下旬に行われた関西学生ホッケー春季リーグでは、始動早々ながら3部リーグで全勝優勝。2部昇格を果たす。勢いに乗り1部リーグへの昇格を目指なか、5月下旬の全国大会の予選リーグでは、公式戦初の敗退。チームは40本ものシュートを放ったが、1得点のみ。1対3と完敗だった。決定力に欠け、何度も訪れたチャンスをものにできない。「完全に気持ちが緩んでいました」。悔しくて涙があふれた。

悔しさをバネ、練習で自分を変える


「今の自分に足りないのは、チャンスをゴールにつなげる決定力」。大会後、大井さんは自分自身の決定力不足を課題に挙げた。最も力を入れて練習したのはセットプレー。ホッケーの特徴的なプレーの一つ、ペナルティーコーナーのセットプレーは最大の得点チャンスだ。それをうまく生かしきれなかったのが敗退の原因だと考えた。これまでも思うようなプレーができないときは、自分がこれだと納得するまで練習することで克服してきた。今回も悔しさをバネに、自分に厳しい練習を課するしかなかった。

強さの秘訣は、決してあきらめない精神力


練習の成果が出た。8月に開催された西日本インカレでは、予選リーグを全勝1位で突破。関西学生リーグ1部の強豪チームが名を連ねた決勝トーナメントの1回戦でも、1点を争う緊迫したゲームを展開した。試合終了1分前に失点し、通常なら負けを覚悟するところだが、チームのムードは違った。怒涛の攻撃を繰り返し、終了10秒前から逆転。あきらめずに食らいつき勝利を奪い取った。決勝トーナメントの対戦チームはどこも格上。負けても言い訳が立つ状況にあったが、「俺たちの強さは勝つことで証明する」「俺たちは勝たなくちゃいけない」という決してあきらめない強い精神力で粘り強く試合に挑んだ。つづく2回戦は敗れたものの、日々の練習から強い思いを持って取り組む姿勢が、着実に試合の結果として現れはじめた。

1-2部入替戦は抜きつ抜かれつの大接戦


9月に入り関西学生秋季リーグがスタートした。属する2部リーグには実力的にはほぼ互角のチームが揃う中、福井工大は見事全勝優勝。ついに11月16日、1部-2部入替戦を迎えた。相手は中京大学。大井さんはディフェンダーのポジションにつき、後方でゲームを組み立て、シュートチャンスにつながるパスを送りつづけた。先制したのは福井工大。「いけるぞ!」と喜びもつかの間、5分後には同点に追いつかれる。福井工大が再びゴールを揺らすが、終了残り30秒で再び相手に同点ゴールを許してしまい、勝負は延長戦へ。
格上の相手ながら、拮抗した試合を繰り広げてきた福井工大だが、選手の体力は限界に達していた。ぎりぎりの人数のため交代ができず、メンバー全員がフル出場。一方22名の部員を要する中京大学は、何度も交代することで体力を温存している。しかも、相手は勢いづいている。「まずい雰囲気が流れてるなって感じました。でもここまで来たからには負けるわけにはいかない」、そうと思うと自然に体が動いていた。

延長前半、福井工大にペナルティーコーナーのセットプレーのチャンスが訪れる。これを決めれば1部昇格という絶好の機会。猛烈なプレッシャーの中で勝負の場に立ったのは大井さんだった。「これまで練習してきた自分に自信もあった。絶対うまくいく」。
そう自分を信じて打ったシュートは、見えないほどの速さでゴールを揺らした。最も力を入れて練習してきたセットプレーでの延長Vゴールだった。
念願の1部リーグ昇格を果たした福井工大。大井さんは、最優秀選手賞に選出された。

オン・オフのスイッチで一変


これからの1部リーグでの戦いにむけ、これまでにも増して厳しい練習に打ち込む大井さん。普段はおだやかな表情をのぞかせるが、フィールドに立つと表情は一変する。スイッチが入り、ホッケーモードになれば、自分のプレーにもメンバーのプレーにも決して妥協しない。常に真剣勝負なのだ。齋藤監督に「オンとオフのメリハリがきっちりつける事のできる選手。コート内では明らかに表情が違う。日本代表クラスの選手にも引けを取らないオーラがある」と言わしめるほど。この一流の証ともいえる資質をもつ大井さんの今後の活躍に目が離せない。


ホッケーは、スティックでボールをコントロールし、ゴールにシュートして得点を競う競技。手と足を使えるのはゴールキーパーのみ。ゴール前にサークルと呼ばれるシューティングゾーンがあり、その中からシュートされたボールが入れば得点となる。ボールは野球の硬球くらいの大きさで、シュート時のボールスピードは時速150~200km近くにもなるという。競技フィールドはバックライン60ヤード(55m)、サイドライン100ヤード(91.4m)の長方形で、サッカー場よりもひと回り小さい感じ。試合でフィールドに立てるのは11名。競技時間は前・後半各35分で、間に5~10分のハーフタイムが入る。


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