FILE No.118

「ワールドカップ」の経験をチームや自身の将来に生かしたい

スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科 2年
男子ホッケー部

齊藤 容

小学2年生からホッケーに打ち込んできた齊藤さん。福井工業大学入学後は、ホッケー部員として多くの試合に出場し、活躍を続けている。2022年秋には日本代表選手に選ばれ、2023年1月にインドで開催された「第15回FIHワールドカップ」に出場した。ホッケーに対する思いや、世界のトップチームと戦った感想、今後の抱負をうかがった。

練習試合で実力を認められ、福井工業大学ホッケー部へ


齊藤さんが地元富山県のスポーツ少年団でホッケーを始めたのは小学2年生のときだった。「母と兄がやっていてとても楽しそうだったので、自分もやってみたいと思い、始めたのがきっかけでした」と振り返る。そのスピード感に魅了されながら中学、高校でもホッケーを続け、高校時代には、福井工業大学チームとの練習試合を経験。1年生のとき、当時の同大学ホッケー部監督から入部の誘いを受けたのが、入学のきっかけになった。「練習試合で何度か対戦して強いチームだと感じ、入部したいと思うようになりました」。

スポーツのための体づくりを学ぶことができ、ホッケーにも活かせるのではないかとスポーツ健康科学科を選んだ齊藤さん。水泳や陸上の実技の授業は予想以上にハードで、「水泳は単位を取るための課題がハイレベル。僕は水泳の経験があったので合格できましたが、未経験者にはかなりハードルが高かったと思います」。しかし、このような厳しい課題に挑んだことでメンタル面が鍛えられたとも話している。

2023年3月現在、男子ホッケー部の部員は1~3年生の26人。オフシーズンの冬期はランニングやウエイトトレーニングによる体づくりが中心だったが、春には、紅白戦など実践的な練習が再開される。

日本代表に選ばれ、監督・コーチの後押しで「ワールドカップ」出場

ホッケーは、ゴール前に設けられた「サークル」というシューティングゾーンからシュートされたボールがゴールに入れば得点となる。得点シーンに絡み、シュートを撃つ役割を中心に担うのがフォワード(FW)。フィールドの中盤で、相手チームからボールを奪うパスカットを狙いつつ、ときにはサークル内でシュートを撃ち、守備と攻撃双方の役割を担うのがミッドフィルダー(MF)だ。福井工大チームにおける齊藤さんのポジションはMF。「FWのシュートをアシストしながら、得点のチャンスには自らシュートする役割です」。

齊藤さんが、公益社団法人日本ホッケー協会が選考する男子日本代表候補に選ばれたのは2022年3月。2月に茨城県で開かれた選考会を経て候補選手となり、「第15回FIHワールドカップ」の出場選手選考を兼ねた「第1回 FIH ネーションズカップ」にFWとして抜擢されたのが11月だった。「出場予定だったFWの選手2人が病気などで行けなくなり、急遽、僕が呼ばれた形でした。連絡がきたのが出発の5日程前。しかも開催地が南アフリカだったので、さらにびっくりしました」。

この急展開は齊藤さんに大きな選択を迫ることになった。ネーションズカップの開催期間は、福井工大チームが日本リーグのH2からH1への昇格をかけて戦う大事な試合の日と重なっていたのである。どちらに出るべきか迷う齊藤さんを後押ししてくれたのが、監督とコーチの「世界のレベルを感じてこい」という激励の言葉だった。



日本と世界のトップから学んだ知識や経験を生かしたい


ネーションズカップには8か国が出場し、日本代表の最終成績は6位だったが、世界ランキングは18位から16位へアップした。本大会を経て齊藤さんは、インドで開催される「第15回FIHワールドカップ」(2023年1月13日~29日)の日本代表に選ばれ、FWとして出場。海外での試合経験があった齊藤さんだが、ワールドカップのスタジアムの大きさと観客の数には圧倒されたという。「初戦のドイツ戦はかなり緊張しましたが、試合を重ねるうちに自分のプレーができるようになり、世界のトップレベルのチームと戦う高揚感と楽しさが生まれてきました」。


ドイツ、韓国、ベルギー、インド、マレーシアの5か国と戦い5敗の結果となった中、齊藤さんの印象に大きく残っているのが第3戦のベルギー戦だ。「1‐7」で負けた試合だったが、1点を決める流れをつくったのが齊藤さんのシュートだった。そのプレーをきっかけに日本が攻撃を続け、得点に結びつけている。「当初、自分の長所であるスピードが通用するのではないかと思っていましたが、やはり世界のトップレベルとの差を肌で感じました」と語り、その差を埋めていくことが勝利への第一歩だと感じている。

また、大学チームと日本代表の違いも実感したと話す齊藤さん。「ボールを取り返そうとするとき、僕らのチームは相手をたたいてしまい、警告カードで退場になることがありますが、代表選手はそういうことがほとんどなく、賢くファウルさせて相手の動きを止めたりします。日本代表や世界のトップチームの戦術を意識して日々の練習に取り組めば、自分自身もチームもレベルアップできると考えています」。日本代表として学んだ知識や経験をチームに還元し、スピードやパワーの向上はもちろん、頭脳を使った戦略や戦術を展開できる集団を目指すという気持ちが芽生えたのも、ワールドカップの成果だ。


大学チームを日本一に導くために


他の競技に比べ攻守の切り替えが速く、ボールのスピードも試合のテンポも非常に速いホッケー。「試合をするたび、どの競技よりも疲れるんじゃないかという気持ちになりますが、そのスピード感がおもしろいところだと思っています。数十秒の間に点数が決まってしまう。スピーディーな展開や勝敗も最後までわからないのも魅力ですね」。

世界で感じたスピード感を今度は大学チームに還元し、リーダーとして引っ張っていくという齊藤さん。目指すのは日本の頂点だ。「昨年は私が日本リーグの順位決定戦というとても大事な試合に出場することができませんでしたが、みんなはこの大一番で勝利して1部リーグ昇格とH2初優勝という結果を残してくれました。これまでの知識や経験を活かし、自信をもったプレーとクレバーなホッケーで日本一のチームを目指していきたい」と意欲を燃やしている。


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