FILE No.92

大学院で、より高みを学ぶ

大学院 応用理工学専攻 機械工学コース 博士前期課程 2年

桂 孝介

FUTの校章が入った作業着を着て、桂さんは現れた。「自動車」や「機械」への興味関心に突き動かされながら、学部と修士課程を経て専門的な知見を得た福井工業大学での学び。これまでの研究活動と、就職先での展望を語ってくれた。

新しい学びを得るため、大学院へ進学


少年の頃から大好きだった「自動車」への想いを胸に福井工業大学工学部機械工学科へ入学。学部4年間で用意されていた幅広いカリキュラムの中で、様々な分野の知見を学んでいくうち、自動車だけでなく、「機械工学」をより深く学びたいと考えるようになった。機械工学は様々な産業分野に密接に関わる学問分野であるが、「その中でも、社会を支え、インフラ技術にも関わってくる振動や騒音などの研究をしてみたかったんです」。そう語る桂さんは、大学院の応用理工学専攻・機械工学コースに進むことを決め、「弾性送水管の振動」という研究に着手した。弾性送水管は、ホースなどの身の周りの生活用品から、水道管やパイプなどインフラ設備や工場設備に使われるものまでと幅広い。送水管がどのように振動するかは、建物の設計にも関わっており、インフラの老朽化が叫ばれる現代においては非常に重要な研究分野だ。「大学院はこれまでの研究の追求だけでなく、自分にとっての新しい研究に取り組み、より幅広い専門性を高めることができる場でもあると考えています」。修士課程では、水や空気などの流れが構造物に振動を発生させる流体関連振動についての研究に熱中したいと考え、機械力学研究室の門を叩いた。

予想と違う実験結果がおもしろい

桂さんの取り組む研究は、航空機の翼の振動や列車の蛇行動などにみられる「自励振動」と呼ばれる現象についてである。これは、振動の代表的な課題であり、欧米の研究者を中心にしのぎを削る分野である。実験では、シリコン製のチューブに水を流し、振動する管の動きを高速ビデオカメラで撮影、3次元で測定する。また、理論的に予測した現象を確認する目的から、ばねや錘などを取り付けその影響を観察。「理論で見落としていたことが実験の現象に大きく作用し、予測を越えたいろいろな運動が観察されるんですよね。そのことが、実験への意欲を掻き立てます」と桂さんは語る。

実験では、自分で製作した器具や装置を使用。3D-CADで実験装置の筐体や部品などの設計を行い、実験目的に合わせて素材や性質を変えた送水管を樹脂などから作る。4年間で学んだ設計や加工の知識を駆使しながら、設計から組み立てまで行った。



論文として仕上げるまでが研究

熱心に取り組んだ研究の成果は、国内や海外の学会で発表され、国内での3件の発表に加えて、海外では2019年12月にポーランドのウッジで開催された力学系とその応用に関する国際会議(Dynamical Systems Theory and Applications)で発表が行われた。同学会は、力学系について世界各国から専門家が集う会議である。「新型コロナウィルス感染症が問題となる直前に発表できてよかったです」と桂さんは振り返る。
論文提出の締め切りは学会が開催される4か月前の8月。桂さんはここに向け論文作成に取り組んだ。「実験の手法や結果の考察など、指導教員である山下教授の指導は本当にありがたかったです」。英語で論文を執筆するのも大変であったが、「福井工大は海外への窓口が広く開かれていて、短期の語学留学や海外インターンシップにも参加させてもらっていたことで、今回の学会発表に繋がる力が身についたのだと感じています」。
学会では、繊維産業の見学ツアーや、カンファレンスディナー(議論のある夕食会)にも参加し意見交換などを行った。苦労して仕上げた論文は高い評価を得て、国際誌への投稿を推薦された。2020年10月23日に掲載受理の通知を受け「頑張って取り組んできたことが評価され、論文として形に残せたことに、大きな達成感を感じましたね」。



培った専門性を活かして貢献したい


そして、大学院でこれまで培ったものを活かすため、桂さんは就職先を決めた。内定をもらったのは、北陸を基盤に事業を行う総合設備企業。病院や商業施設など、大勢の人が利用する大型施設の空調など設備工事を手掛けている。「病院などの大型施設は、自動車と同じように人々の生活に欠かせない物。多くの人が関わっている建物の建設はとても責任がある重要な仕事。学部や大学院で学んできたこと、研究に取り組む中で高めてきた専門性や知見を活かしながら、貢献していきたいです。」


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