FILE No.90

PBL「わんぱくビーチサッカー」

スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 スポーツ産業コース4年

鰐渕 拓実

スポーツ健康科学科では、PBL(Project Based Learning)という課題解決型学習を活かした多くのプロジェクトを実施している。これは学生が主体的にプロジェクトを遂行し、その経験から気づきや学びを得ることができる教育プログラム。そのプロジェクトの中で「わんぱくビーチサッカー」に取り組んできたのが、鰐渕拓実さんだ。

サッカーを通して地元を盛り上げたい

スポーツ健康科学科のPBLは、地域でのスポーツイベントのサポートを中心に、10以上のプロジェクトが実施されてきた。その中で「わんぱくビーチサッカー」は、毎年7月にあわら市の浜地海水浴場の砂浜で行われる、地域の小学5年生、6年生を対象にしたビーチサッカー大会で、スポーツ健康科学科の学生たちが大会の企画・運営をしている。2017年から始まり、ビーチサッカーを通して多角的にサッカーを楽しみ、地域住民との交流の場として、さらにはビーチクリーン活動も行い、海洋ゴミ問題にも目を向けた取り組みだ。そのプロジェクトに2年生の後期から参加しているのが鰐渕さん。小学校の2年生から今までずっとサッカーを続けており、サッカーを通して、様々な人との繋がりができ、それが自分を成長させてきたそうだ。参加を決めたのも大学サッカー部の先輩に誘われたことがきっかけだった。「自分が住んでいるあわら市のプロジェクトで、地元を盛り上げる取り組みということにとても惹かれました。しかもビーチサッカーは今までやったことのないもの。違うスポーツに関わることで、自分の視野を広げられるのではないかと思って、すぐに参加を決めました」。プロジェクトメンバー13人で実行委員会を設立し、7月の大会に向けて準備を進めていった。


いかに楽しんでもらうかを考える

ビーチサッカーは砂浜で行うため、オーバーヘッドキックを始めとしたアクロバティックなプレーが魅力のスポーツ。1チーム5人制でサッカーと比べ少人数、しかもコートが小さいため、試合展開が早く、攻守が激しく入れ替わる。プレーする選手も観客も楽しむことができる高いエンターテインメント性が特徴だ。ただ、「わんぱくビーチサッカー」の対象は小学生。コートを狭くするなど、子どもたちの大会に適した優しくて簡単なルール作りから始めていった。また大会2週間前と1週間前にはプロジェクトメンバーで事前に練習日を設けた。まずは自分たちが体験することで、小学生たちがわからないこところを教えてあげることができ、ビーチサッカーに慣れ親しんでもらえると考えたからだ。「整備された場所と違ってボールが全然転がらない。足の使い方が普通のサッカーと違います。そこが面白いですね。砂浜にめり込ませてボールを浮かすなどのテクニックを先輩たちに教えてもらって徐々にできるようになりました」。他にも試合を行うコートの環境チェックや参加者を募るために地元のスポーツ少年団への連絡などを行なっていった。


プロジェクトを通して様々な経験を積む


準備で一番苦労したというのが、申請書作り。あわら市の助成金を受けるために、まずは申請書作りとプレゼンテーションをする必要があった。計画の具体的内容や地域活性化のポイントをまとめ、このプロジェクトをアピールする。申請したのは全部で6団体。学生は1団体のみで他はすべて社会人。鰐渕さんは発表者3人の中の1人で、そのプレッシャーに負けないよう念入りにパワーポイント資料の作成やプレゼンテーション練習を重ね、無事に申請を通すことができた。そして着々と準備を進め、練習日・大会本番の日を迎える。
地域との繋がりを意識したプロジェクトということもあり、ピッチ作りにも工夫を施した。地元の波松地区で古くから伝わる「アゼ」という方法で境界線を描き、コーナーフラッグの代わりに地元の小学生がペイントした「浮き」を利用するなど随所に地元愛を溢れさせた。また、大会本番では初の試みとして、学生たちによる実況をつけて試合を盛り上げた。地域の小学生や保護者全員に好評で、参加者すべてが笑顔に包まれた大会となった。「子どもたちの上達が目覚しかったです。今まで選手としての目線しかなかったのですが、できるようになっていく成長ぶりを肌で感じることは、プロジェクトに対するやりがいにも繋がりました。また練習会や大会前のビーチクリーンでは、思ったよりゴミが落ちていたことにショックでしたが、昔から遊んでいた海が少しずつキレイになることに充実感がありました」。

逆境に負けずに次へと進むチカラ


3年生の後期になり、今度は自分たちがこのプロジェクトを受け継ぐことになった。メンバーは5人になり、鰐渕さんはリーダーを任された。まずは、前回の大会での反省点を活かして次につなげる。「想定よりも保護者の数が多く、テントの数が足りない」、「見る人も分かりやすいように得点板を作る」、など課題点を洗い出す。またリーダーとしての役割もある。ビーチサッカーに関わる関係者に連絡、メンバーへの指示出しなど行う。「前任のリーダーが頑張っていたので、そのような立ち振る舞いができるか非常に不安でした。そのリーダーとは高校生のときからの先輩後輩の仲で、いつでも相談し合える関係であったことや、メンバー同士も非常に仲がいいので、それぞれが助けてくれるのが本当にありがたいです」。 しかし、新型コロナウイルスの影響で2020年の開催が早々に中止となってしまい、新たな後輩のメンバーを追加することもできない状況だ。それでも何かできないかと、電話やオンラインで何度も相談し、辿り着いたのは、あわらの特産物であるメロンやスイカを自分たちで育て、翌年の大会の景品にすること。「以前の大会から波松地区の区長とは連絡をとっているんですが、区長が持っている畑の一部を貸してもらって、メロンやスイカを栽培できないかと今相談しているところです。今後みんなで話し合って、来年に残せるものをひとつひとつ探していきたいと思います」と逆境に負けず、これからの活動に目を輝かせている。その姿から、プロジェクトを通して地域に触れ、自分たちで考え、行動する力が身についていることを感じられた。

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