熱中時間

FUTの人たちの最高の
時間をインタビュー
FUTの人たちはなぜ熱中しているのか。熱中するものだけが感じられる最高の時間とは何か、に密着する。

No.043
機械工学科3年
川島 紘毅
theme:鳥人間プロジェクト

毎年夏に読売テレビ・日本テレビ系全国ネットで放送される『鳥人間コンテスト』。2011年の初出場以来4年連続本戦に出場している福井工業大学・鳥人間プロジェクトチームだが、今年は書類審査で落選、その勇姿を観ることはできなかった。その状況を誰よりも悔しがっているのが同プロジェクトの部長を務める機械工学科の川島紘毅さんだ。「結果を真摯に受け止めています。来年こそ飛ぶ姿を見たい」と話す。

高校生の時に観た工大のフライトに刺激を受けて


テレビで初めて『鳥人間コンテスト』を観たのが高校生の時。ちょうど福井工業大学の鳥人間プロジェクトチームが出場しており、88mを飛んだ姿が印象的だったという。「他のチームの飛距離が伸びない中の88m。すごく感動しました。飛行機が飛び立つ瞬間ってどんな気分なんだろう、高さ10mから見る景色ってどんな感じなんだろうって思ったら、すごく興味が湧いてきたのを覚えています」。
大学に入学し「大学でしかできないことにチャレンジしたい」と心に決めていた。鳥人間に興味はあったものの、まず選んだのが学友会だった。「一年間活動しましたが、やはり鳥人間にチャレンジしたいという思いが強くなった」と、2年生になると同時に鳥人間プロジェクトの参加を決める。

プラットホームでのワクワク感が止まらない

同プロジェクトではすでに新1年生向けの説明が終了しており、川島さんは何の知識もない状態で飛び込んでいくしかなかった。「正直、何がなんだかわからなくてテンパリました」。チームはテストフライトまであと2週間という追い込みの時期。ピリピリとした緊張感が張りつめる中、任されたのが主翼制作のサポート。「先輩に聞いたり、図書館で航空に関する本を読んだりして、用語、メカニズム、どうやって跳ぶのかという初歩的なことから勉強しました」。
間もなく迎えた『鳥人間コンテスト2014』。メンバー全員で琵琶湖の会場へと向かう。そこで初めて自分の足でプラットホームに立った感動は今も忘れないという。「自分が知っている10mの高さとは全然違う。これがテレビで観ていた景色なんだと思うと、ワクワク感が止まりませんでした」。そして本番。「遠くへ飛べ!」と心の中で叫びながら、機体が飛び出すのを目の前で見送るが、降下したままで機体は浮いてこず、あっけなく着水するという結果に。その姿は目に焼き付いてなかなか頭から離れないくらいの衝撃だった。そして決意した。「自分が部長になって、来年飛ぶしかない」と。


勉強会を開き、情報を共有

大会後には部長に就任。これまでの反省点をもとに機体、主に主翼の制作にとりかかる。「遠くへ飛ぶためには、美しい流線型の主翼が必要不可欠。フイルムをテープで固定するのですが、重なった箇所がザラザラになっている。わずかな空気抵抗でも飛行に影響があるかもしれない。それをどうきれいにするか。いろいろ課題点は多かったですね」と苦笑いする。
さらに川島さんが取り組んだのが勉強会。「個人で勉強だけでは限界があります。メンバーそれぞれの知識や情報を共有するのが大切なんじゃないかって。定期的に行い、同じ情報や知識を持つことが、プロジェクトの発展には欠かせないと思ったのです」。学生なりに教えられる範囲で教え合うことで、作業の効率化にもつながっていった。


書類選考落選にショック


本選に出場するには、設計図とチームのPRによる書類審査が必要。川島さんは2月に書類を送り、3月に届く通知を心待ちにしていたが、届いたのは通常サイズの封筒だった。それを見た瞬間「ダメだったんだ」とサッと血の気が引くのを感じた。合格ならば多くの書類が入った分厚い封筒だからだ。「本当にショックでした。」と肩を落とす。
「機体の問題もありますが、チームのアピールポイントを強く打ち出せなかったのが大きな原因だと思います。テレビ局の担当者からも観る人を惹き付けるアピールを、とアドバイスをもらっていましたが『これだ』というものが書けなかった。テレビ放送を観ましたが、出場チームには市や町が応援するなど人を惹き付けたり、感動するようなPRがあった。強烈なアピールが必要なのに、それが書けなかった。部長である僕の責任です」と言い切る。残念ながら落選したものの、来年に向けてやっていこうというメンバーの前向きな意見に支えられ、残された時間をしっかりサポートしようと決意。「来年こそはぜひ飛んでほしい」。今、川島さんは鞄の中に落選通知を入れ、常に持ち歩いている。悔しさを忘れないために。

メンバー募集に奔走

川島さんを含め現在の3年生は卒業や就職に向け、活動から徐々に離れていく。そうなるとプロジェクトには5名しか残らないという厳しい現実に直面している。そこで部長として最後にできることとして取り組んでいるのが新メンバーの募集だ。「男子はもちろん、できれば女子にも参加してほしい」と案を練っている真っ最中だ。「鳥人間プロジェクトは機械工学科のプロジェクトだと思っている学生が多いのですが、そんな縛りは一切ありません。興味がある人はぜひ参加してみてください。楽しいし、勉強になります!」とアピールする。

活動を通して成長を実感

知らない人とも気軽に話すことができるなど物怖じしない性格の川島さんだが、意外にも人前に出ると緊張するのだとか。「部長として外部で行われるイベントに参加し話をする機会が多かったのですが、最初はかなり緊張してカミカミでした。何度も経験することで随分鍛えられました。良い経験をさせてもらいましたね。また、プロジェクトは学生主体の活動なので先生たちのサポートが少ししかありません。手綱なしでやり遂げなければならない。特に部長はメンバーを引っ張っていかなければならないのですが、メンバーは個性豊かゆえに主張を譲らない傾向があり、ヒートアップすると言い合いになることもありました。どうまとめていいか最初は随分悩みましたが、おのずとしっかりするようになりましたね」。部長になって本大会に出場するという夢は破れたものの、様々な経験を経て大きく成長したと実感しているようだ。

新しい夢に向かって


ロボットを作りたくて福井工業大学に入学したものの、鳥人間プロジェクトを通じて進路は大きく変化した。現在の夢は「航空・宇宙関連の仕事に就くこと」だという。大学院進学に向けて準備も始めているようだ。「来年の今頃は大学院入試の準備で忙しいと思いますが、大会出場が決まったら、何が何でも駆けつけます。もう一度飛ぶ瞬間を間近で見て感動したいですから」。
後輩に夢を託し、来年の飛行に期待を寄せつつ、新しい飛躍に向けて新たな一歩を歩み始めている。



学年学科名等は、取材時のものです。