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「北陸の家づくり設計コンペ」で優秀賞受賞

工学部 建築土木工学科 建築コース 3年

奥島 亜実・中村 一稀

工学部建築土木工学科建築コースで学びながら、研究室が取り組む建築プロジェクトにも積極的に参加している奥島さんと中村さん。2021年9月に行われた「第27回北陸の家づくり設計コンペ」(富山県射水市 オダケホーム株式会社 主催)に応募し、大学・大学院の部で優秀賞を受賞した。提案のポイントやコンペに挑む思いなどをうかがった。

ゆとりあるカリキュラムが、学外の建築プロジェクト参加を可能に


「将来は建築設計の仕事に就きたい」と、建築関係の学科がある大学への進学を目指した奥島さんと中村さん。福井県出身の奥島さんは「県内で建築を勉強できる大学へ」と福井工業大学工学部建築土木工学科へ入学。石川県出身の中村さんは「僕はゆっくり学んでいきたかったので、地元と近県の大学のカリキュラムを調べ、自分に合ったペースで学べそうだと思った福井工業大学に決めました」と当時を振り返る。

入学後、建築構造の基本や製図法など建築設計の基礎、さらに建築法規や実践的CAD活用などを習得する中で、実際に図面を描くなど、自ら設計する授業にやりがいを感じるという2人。中村さんは、初めて大きな集合住宅の模型を完成させたときの達成感が今も強く残っているという。


さらに、「製図にはパソコンも使いますが、福井工業大学は他の大学に比べ手描きする機会が多いんです。建築士試験の製図は手描きなので、普段の勉強の中で練習できるのが福井工業大学のいいところだと思っています」と語る。また、2人が所属する五十嵐啓先生の研究室では、企業や公共施設の建築設計プロジェクトを多数手掛け、学生も携わっている。「福井工業大学の建築土木工学科はカリキュラムにゆとりがある分、研究室が取り組むいろいろなプロジェクトに関わりやすいと感じています」と話す奥島さんは、実際に形となる建築物の設計に意欲的で、複数のプロジェクトに参加中だ。

設計のスキルアップのために「北陸の家づくり設計コンペ」に挑戦


研究室のプロジェクトに加え、企業などが実施する設計コンペにも挑戦するようになった奥島さん。2021年夏に応募を決めたのが、富山県射水市の「オダケホーム株式会社」が主催する「第27回北陸の家づくり設計コンペ」だ。高校、短大・専門学校、大学・大学院の3部門で募集され、全国から応募が寄せられる設計作品の公募である。「研究室には先輩がこれまでに制作したコンペ作品が飾られています。それらを見て自分もやってみたいと思いました。応募作品を仕上げるにはさまざまなアプリケーションを使用するので、それらの使い方をマスターしたいという気持ちも強かったです」。


一方、「何か新しいことを始めてみよう」と考えていた中村さんは、奥島さんのコンペ応募を知り、共同参加を依頼。2人で取り組むことになり、五十嵐先生に相談しながら提案内容を考え、パースやイラスト、図面作りを進めていった。

今回のテーマは「土間を活かした新しいライフスタイル」。土間は農家などの作業場や、土足で歩き回れる町家の屋内空間として活用されていたが、古い日本家屋の消滅とともにほとんど見られなくなっている。そこで、応募者には、“内にも外にも成り得る”土間の特徴を活かした新しいライフスタイルの提案が求められた。中村さんは、選択した授業で土間について聞いていたためイメージできていたが、奥島さんはそれまで見聞きする機会がなく、土間について調べることから始まった。取り掛かってから完成まで約2か月。図面やパース制作など提出する資料作りに多くの時間を要し、絵を描くのは奥島さん、色の調整は中村さんというように、それぞれの得意分野で作業を分担したという。


磁石の壁をヒントに、空間を自由に仕切れるシェアハウスを提案


2人が完成させた作品「Floating space」は、木造住宅の1階に、使い方を固定せず自由に用途や位置を変えられる土間を設けるという提案だ。壁に囲まれた固いイメージの四角形の部屋ではなく、カーテンで仕切ったやわらかい雰囲気の空間を作り、柔軟な造りを生かしてシェアハウスにも利用可能な設計である。土間にジョイント式のマットを敷き、カーテンで仕切ることでリビングにもでき、勉強のための個室などさまざまな空間として使用できる。また、夏はリビングを日陰に移動するなど、季節や時間に合わせて気軽に変えることも可能だ。カーテンの移動が容易なのは、磁石素材を天井に用いているから。固定が当たり前と思われているカーテンレールを、磁石を利用して容易に取り外しできるようにしたアイデアと、同じく可変的な床が大きなポイントである。磁石のアイデアは五十嵐先生の研究室がヒント。壁が磁石になっており、汚れや傷を気にせず資料などを貼り付けられる便利さを天井に応用した。
 


居住する家族として想定したのは両親と子ども2人の4人家族。土間の使い方はそのときどきで家族で話し合いながら決めていく。さらに、子どもが成長して家を離れた後は、1階の土間スペースをアトリエ付きの学生下宿に転用するというプランだ。2階は一人ひとりのプライベートスペース、1階は状況に合わせフレキシブルに変化させられる住居が、シェアハウスとしてどう生かされるかも提案されている。


斬新なアイデアが評価され優秀賞を獲得。卒業後は住宅の設計士を目指す


コンペの審査は9月に行われ、3部門で174点の応募作品が寄せられた。入賞の自信は全くなかったという奥島さんと中村さんだが、約1か月後に「大学・大学院の部 優秀賞」入賞の通知が到着。「びっくりしました」と声を揃える2人。そして「一番喜んだのは五十嵐先生なんですよ」とも。審査員からは「マット状の床と自由度が高いカーテンを組み合わせて使いやすい配置に変更できる可変性プランで、家族の協調性と絆を強くするのではないかと思わせる家になっている」との講評があり、斬新なアイデアが評価された。


コンペへのチャレンジを振り返り、「図面やパース、文章を1枚の提案資料にまとめたのは初めての経験で、しっかりとした作品に仕上げたという達成感がありました」と奥島さん。さらに「普段取り組んでいる設計は柱の位置とか耐震性とか固いイメージがありますが、コンペは自由に自分の好きなものを作れました」と中村さん。2人とも今回の新たな経験をバネに、今後もコンペに挑戦したいと意欲を見せる。

将来は、住宅を中心に手掛ける設計士として活動したいと話す2人。さらに、奥島さんは保育園、中村さんは土間のある家の設計にも関心を持っている。卒業後は、設計の仕事ができる企業へ就職するとともに、建築士の資格を取ることが目標だ。


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