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2020.11.01

汚染土壌を分離する新規磁気分離法の開発

福井工業大学原子力技術応用工学科 4年 岡本 武留, 指導教授 三島 史人


福島原子力発電事故により、除染として表皮剥ぎ取りされた汚染土壌は、現在までにおよそ1300m3にのぼり、最終処分地が決定するまで、仮置き場に山積みとなって管理されている。実際にセシウムが吸着するのは、汚染土壌は全体の1割ほどの粘土鉱物(バーミキュライト )であり、この粘土鉱物を選択的に除去できれば汚染土壌の減容化につながる。分離対象となる粘土鉱物は、常磁性(プラスの弱い磁性)の性質を持っていため、本研究室では、磁気分離法によって分離し、汚染土壌の減容化を目指している。現在開発されている常磁性物質の磁気分離法においては,7T(テスラ)以上の超電導磁石の強力な磁場と高勾配磁気分離システム(HGMS: High gradient magnetic separation-system )を併用することが必要とされてきた。しかし、本研究で実施した磁気分離法は、2T程の開放勾配磁場(OGMS:Open gradient MS)と上昇流の流体制御を併用することで、常磁性物質の磁気分離を可能としました。

具体的には淘汰管を用い、分離対象物に作用する重力とドラッグ力のつり合い(終端速度)を利用し,上昇流を制御することで、粒子を停留(浮遊)状態にし、見かけ上、無重力状態にある常磁性粒子に対し、磁気力を作用させるような新たな磁気分離法を開発しました。
従来の超電導高勾配磁気分離法と比べ、適用する磁場が比較的低磁場のため,磁石の室温空間の拡大(大型化)が可能となり、磁気分離領域を広く設定できるため常磁性体の大量処理の可能性も見えてきました。現在我々は、淘汰管を用いた磁気分離法を実用化に向かって進めています。


お問い合わせ:原子力技術応用工学科