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2026.11.02
【リレーコラムVo.17】歩行を促すためのまちのかたち
歩行を促すためのまちのかたち
2026年10月6日付け日本経済新聞の記事「歩かぬ地方、都市との差1日30分『スニーカービズ』通勤で歩数を稼げ」に興味深いデータが掲載されている。東京大学の鎌田真光准教授らによる研究グループがスマートフォンアプリの150万人の歩行データを用いることで、全国951市区町村の住民の歩数の地域格差について明らかにしたという。掲載されている日本地図を見ると一目瞭然で、大都市圏では歩数が多いのに対して、地方圏では歩数が少ない。これは従前から言われていることだが、公共交通の発達した大都市圏ではバス、鉄道の乗り換えのたびに長距離の歩行を強いられるのに対して、地方圏では基本的には自家用車移動が主体で、自宅から目的地まで直行できるから、通勤や買物などの日常生活でも歩行距離が短いのは当然である。ただ、定量化して表記された日本地図を改めて眺めると、歩行数の地域格差は将来の健康格差に直結するのではないかと不安になる。
ところで、福井工業大学が立地している福井市のように、地方圏にある県庁所在地都市は、もとは大藩の城下町であったり、港町であったりすることが多く、長い歴史の積み重ねを経て道路整備や河川改修が進められてきた。また、不幸にして空襲や大規模災害に遭った都市も多く、その後の戦災復興、災害復興関連の事業によって、広幅員の街路や公園などの緑地、河川沿いの堤防の築造などが行われ、すでに量的には高水準のインフラが整備されていることから、潜在的に歩行空間を確保しやすい状況にある。仕事柄、全国各地の都市を訪問する機会が多いこともあって、近年は車道の車線数を減らす代わりに歩道を拡幅した事例や、堤防を改修して歩行空間を確保するといった事例を頻繁に見かけるようになった。また、公共空間の民間開放も進んでいるので、歩いたり、走ったり、くつろげる空間がまちのいたるところに現れている。歩行空間が質、量ともに拡大していることは健康づくりという面では望ましいことである。
行政や医療関係者などが進める健康づくりへの取り組みのように、住民に働きかけるような政策を進めるときにはソフト面、ハード面の両面から取り組むことが有効とされる。ただしキャンペーンやイベントでは強制的に歩かされるといった印象を持つので気がひけてしまうし、一過性で終わってしまうような気がする。むしろ街路や公園といった都市施設や公共交通を利用するなかで歩行や運動を促すような(行動経済学で言うところの「ナッジ」のような)仕掛けがあって、地方都市においても日常生活を送るなかで意識せずに継続的に健康に結びつくようなまちのかたちを官民が連携して追求することに期待したい。自分の研究も極めて間接的ではあるものの、そうした分野へのささやかな貢献につながるものと考えている。
お問い合わせ:社会連携推進課