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2025.12.16
AIケアボット臨床研究第2期を実施 ー がん患者さんの76.2%が「医師に話せなかった悩みを相談できた」、心理評価でも有意な改善を確認
AI & IoTセンターは、福井県済生会病院との共同研究として、がん患者向け音声対話型AIケアボットの臨床研究第2期を2025年12月に実施しました。今回の研究では21名のがん患者さんにご参加いただき、昨年度から大幅に改良したシステムの効果を検証。心理評価(POMS2)において5つの尺度すべてで統計的に有意な改善が確認されました。
本臨床研究は12月1日、5日、8日の3日間にわたり、福井県済生会病院にて実施しました。1人あたり約30分のAI対話セッションを行い、対話前後での心理状態の変化を測定しました。研究体制として、済生会病院からは宗本義則院長補佐をはじめ4名の医療スタッフにご協力いただき、本学からは芥子育雄センター長と研究室の4年生3名が参加。事前説明・同意取得を宗本医師が、システム運用・記録を本学チームが担当しました。
主な成果として、アンケート結果(5段階評価、n=21)では、昨年度(2024年)と比較し、すべての評価項目で改善が見られました。特に「医師に聞きにくいことを話せた」は、35% から 76.2%に向上しました。また、心理学で広く用いられる気分状態の検査(POMS2短縮版)を対話前後に実施した結果、怒り、混乱、抑うつ、疲労、不安の5つの尺度すべてで統計的に有意な改善が確認されました。総合的な気分状態(TMD)は大幅に改善しました。さらに参加された患者さんからは、「医師には言いにくいことも話せた」「気持ちが楽になった」「昨年より格段に良くなった。もっと話していたかった」など、肯定的な感想が多く寄せられました。POMS2の分析は、本研究の共同研究者で心理学が専門の当センター荒木史代教授(基盤教育機構)が担当しました。
今回のシステムは、2024年度の臨床研究で得られた課題を踏まえ、以下の改良を行いました。
・音声認識の改善:高齢の患者さんがゆっくり話しても途中で切れないよう、Azure Speech Serviceへ移行
・AIモデルの更新:最新のGPT-5-chatを採用し、より自然で共感的な深い対話を実現
・アバターの刷新:宗本院長補佐をモデルとした高齢医師キャラクターを制作し、信頼感を向上
・医療情報の充実:入院の流れや相談窓口の案内など、現場の声を反映した情報を追加
12月5日には記者発表を実施し、テレビ2社(FBC福井放送、福井テレビ)、新聞2社(福井新聞、日刊県民福井)の計4社に取材いただきました。宗本院長補佐からは「来年度から病院への導入を進めたい」との意向が示されました。今後、残り30名の臨床研究を済生会病院主導で実施し、がん相談支援センターでの継続運用開始を目指します。
(取材風景)臨床研究の様子を取材する福井テレビのアナウンサー
(12月5日、福井県済生会病院にて)
※12月15日 福井テレビニュースイット内のコーナー 健康のタネにて放映
お問い合わせ:社会連携推進課