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2026.09.04

【リレーコラムVo.15】「熱中症のない未来へ:工学×デザイン思考×スポーツ科学による現場の暑熱対策」

「熱中症のない未来へ:工学×デザイン思考×スポーツ科学による現場の暑熱対策」

なぜ熱中症はなくならないのか
近年、地球温暖化等の様々な影響もあり、夏の暑さは私たちの想像を遥かに超えるものとなっています。特に建設業や製造業などの高温環境下での作業現場においては、労働者の安全を守るための法改正が行われ、事業者側にも具体的な暑熱環境への対策が強く求められるようになりました。
しかし、さまざまな暑熱対策が講じられているにもかかわらず、厚生労働省や関係省庁の統計等では、依然として全国で毎年500名以上(多い年では1000名以上)の労働者が熱中症により亡くなっている事態が続いているのです。この様な背景を受けて、建設現場や製造業の工場等では、厚さ指数(WBGT値)の常時計測と危険度の可視化、空調などの工夫した環境改善、リアルタイムで体の状態を把握できるバイタルデータの測定装置や、暑さを和らげる新しいシステムなどが次々と検討・導入されつつあります。それにもかかわらず、「機器をただ装着しているだけで活用できていない」「数値の正しい見方が分かっていない」といった、間違った利用によるトラブル等の新たな課題も指摘されるようになりました。つまり、便利なツールやシステムも、しっかりと理解し、正しく使われなければ熱中症はなくならないのです。

真の課題を見つけ出す「デザイン思考」のアプローチ
こうした現場の深刻な課題を解決するため、私たちが所属するウェルネス&スポーツサイエンスセンターでは、スポーツ科学の知見と「デザイン思考」を組み合わせた新しいアプローチの研究・開発を進めています。デザイン思考とは、現場で働く人たちとの対話を重ね、プロトタイピングの導入やテストなどを通じ、本当の困りごとや隠れたニーズ(真の課題)を徹底的に発見していく手法です。例えば、「なぜ間違った操作を行うのか」「なぜバイタルデータの警告を無視してしまうのか」「どのようなシステムであれば実際の作業を邪魔せず自然に使えるのか」といった現場の声を丁寧に集計していきます。その上で、工学的な技術やバイタル測定装置を、机上の空論ではなく「現場で本当に役立つカタチ」へとブラッシュアップしていくのです。
近年では国土交通省の現場、大手製造業をはじめとするフィールドで試験的な運用を行い、ここで得られた結果から、熱中症ゼロを目指した研究開発・社会実装に取り組んでいます。つまり、「熱中症のない未来」を目指しております。

地域と現場から、誰もが健やかに働ける社会へ
熱中症対策や健康管理は、特別なことではなく、誰もがいつまでも元気に生き生きと働き続けるために欠かせない基盤です。私たちは、大学が持つスポーツ科学や工学、デザイン学のリソースを活かし、地域社会や産業界と手を取り合って、実践的で誰もが使いやすいシステムやアイデアを発信していきたいと考えています。


竹田周平・熱中症対策アドバイザー


お問い合わせ:社会連携推進課