TOPICS

特別対談『福井工業大学 宇宙への挑戦』

特別対談『福井工業大学 宇宙への挑戦』

福井⼯業⼤学では、近年盛んになってきた宇宙開発の発展に貢献するため、国⽴研究開発法⼈宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究をはじめ、全学をあげて宇宙研究に取り組んでいます。近年の宇宙研究活動、および今後の展望について、掛下知⾏学⻑とJAXA 深井宏⽒(当時)にお話を伺いました。

福井工業大学の宇宙研究における活動について

掛下学長
掛下 本学は2000年にあわらキャンパスに直径10mのアンテナを設置し、約10年間衛星を注視しきた歴史があります。2016年には、衛星を作って地球周回軌道に乗せるプロジェクトが⽂部科学省のブランディング事業に採択され、⼀定の評価をいただきました。現在はその取り組みを発展させた「ふくいPHOENIXハイパープロジェクト」を推進し、福井県や地元企業との協⼒体制のもと、地球周回から⽉周回までに対応する直径13.5mのパラボラアンテナを設置し、地上局を整備したいと考えています。このプロジェクトの⽬的は4つ。1つ⽬は世界的な衛星地上局の整備です。本学は2020年にJAXA様と超⼩型⼈⼯衛星エクレウスに関する共同研究契約を締結。昨年12⽉にはエクレウスからの電波をあわらキャンパスに設置した直径3.9mのパラボラアンテナがキャッチしました。2つ⽬は衛星からのデータを解析するリモートセンシング。解析データを農業や気象など様々な分野に活かし、地域に貢献したいと考えています。3つ⽬はアルテミス計画に必要な研究の推進。⽉に基地を作るには、建築やロボット、原⼦力、⽣物、スポーツなどあらゆる分野の学問が必要になるので、本学は総合⼤学として全学で宇宙関連の研究を展開していきます。4つ⽬は、稼働を終えた直径10mのパラボナアンテナを電波望遠鏡に切り替え、国立天⽂台との連携のもと、宇宙観測に役⽴てていくというものです。福井⼯業⼤学は総合⼤学としてこれらに取り組むとともに、⼈材育成を重視し、研究の原点である興味と感動を育てていきます。

深井 JAXAでは⼤学での教育への協⼒、⼤学への拠点形成などもミッションとしており、宇宙科学の分野では特に⼒を⼊れています。福井⼯業⼤学様との共同研究は2つあり、⼀つは先ほど紹介のあったエクレウス。もう⼀つがDESTINY⁺という⼈⼯衛星です。2024年度に内之浦宇宙空間観測所からイプシロンSで打ち上げられる予定で、衛星が小惑星フェートンに接近し観測するこの計画では、複雑な軌道の運⽤を13.5mのアンテナで追跡できるよう準備中です。福井⼯業⼤学様は、このようなエッジの効いた取り組みと全学をあげての取り組みで、バランスよく宇宙研究に⼒を⼊れておられると感じています。

福井工業大学とJAXAの共同研究とは?

深井氏
掛下 共同研究は⽉をターゲットとしており、3.9mのアンテナでエクレウス衛星からの電波を受信ができるかが⼀つのテーマとなります。学⽣たちも共同研究に携わることで、貴重な学びの機会が得られます。また、DESTINY⁺は、うまくいけばコンパクトで低コストな衛星を実現できる挑戦的な研究となります。この技術は通信分野にも関わりがあるため、総務省の通信関連の資格を取れる授業も令和6年度から組み込みます。これからは宇宙分野も情報とAIは外せません。既存の就職先の他にも通信の資格を活かしてJAXAやテレビ局、通信会社、防衛省など学⽣の選択の幅が広がります。

深井 JAXAには深宇宙⽤のアンテナが3つありますが、最近、深宇宙に⾏く宇宙機の数が増え、アルテミス計画のように⽉や⽕星への展開が増加すると必要な通信量が多くなり、この3つではまかないきれない可能性があります。福井⼯業⼤学様を含め、外部機関とコラボレーションができれば効率的ですし、共同研究はその先駆けになると期待しています。

掛下 先に述べたあわらキャンパスに新設するアンテナは直径13.5mで、⽉までの運⽤ができるアンテナとしては、国内の⼤学では唯⼀のものとなります。最適化をはかり、⽉軌道の衛星を運⽤する先駆けになれたらと考えています。また、JAXA様とは⼤学の授業や講演など⼈材育成⾯での相互関係にも期待しています。

深井 連携⼤学院協定という仕組みがあり、協定を結ぶと⼤学教育の⼀環として授業や実習をさせていただくことができます。なかには、⼤学に籍を置きながら相模原の宇宙研に来ている⼤学院⽣もいます。今後はそういった協定への発展もありえるでしょう。新設のアンテナについては、2024年にDESTINY⁺を打ち上げる予定ですので、これを確実に成功させるための準備に注⼒したいですね。打ち上げた後は数年間にわたる運⽤が待っていますので、その体制づくりも必要だと思っています。DESTINY⁺は、イオンエンジンを駆使し約2年かけて地球を周回しながら徐々に高度を上げ、月の重力を利用してフェートンに向かう軌道に移り、さらに約2年かけてフェートンに接近する予定です。時間がかかっても⼩型軽量化して⾃⼒で⾏くことでいろいろなメリットがあります。

宇宙研究で、どのような人材育成や地域貢献ができるのか

掛下 本学は2023年度に学部再編を⾏い、4学部8学科体制になります。経営情報学部を新設し、AIやIoTといった情報分野に通じた⼈材を育てる学科として再編する⼀⽅で、SDGsを意識した環境学部も整備。ニーズに合わせながら学問の連携を図っていきます。宇宙に関しては特定の学部を作らず、全学科がいろいろな⾓度から宇宙に関わることのできる体制としています。地⽅⼤学として地域に特化し、福井⼯業⼤学といえば「宇宙×AI」と⾔わせたいですね。研究拠点についても、本学の特徴を出し、企業との結びつきを強めていきます。原⼦⼒を研究する「アイソトープ研究所」や「城郭研究所」をはじめ、「AI&IoTセンター」「ウェルネス&スポーツサイエンスセンター」「まちづくりデザインセンター」、さらに2023年4 ⽉には「FUT未来ロボティスクセンター」を新設。これらの研究所やセンターで地域と密着し、⼤学間のコミュニケーションも強化していきたいです。

深井 専⾨知識をもった⼈材を供給いただけると研究開発の世界がどんどん強くなります。リテラシーがある⽅々が社会の中枢を担っていくとシナジーが働いた社会になりますし、⼈材育成には期待しています。

掛下 本学は、福井県の産学官による超⼩型⼈⼯衛星の地上局運⽤ネットワークを構築するプロジェクト「FUSION」に参画しています。今後は産業界や農業分野でリモートセンシングのシステムを作り上げ、地域に貢献したいと考えています。また、電⼦部品をはじめ衛星の製造に携わっている地元企業とも連携。成果物からアンテナを使ったデータ収集まで様々な形で地域に貢献できるのではないでしょうか。⽉での開発は地球にもメリットがあるので、コンパクト制御といった提案も今後はできるかもしれません。

深井 最近はSDGsの観点からも衛星はコンパクトな⽅がいいんですよね。JAXAには⽉惑星探査に使え、なおかつ地上の経済社会活動にも応⽤できる技術を選抜して開発するデュアルユースな仕組みがあり、そこに研究資源を投下して成果をあげていくと、“⼀粒で⼆度おいしい”ということになります。今⽇、⾒学させていただいたあわらキャンパスは⾮常に美しく、20年経った直径10mのアンテナもすっと⽴っていましたので、これを使わない⼿はないなと。あのキャンパスを⼀つの中核として、宇宙研究が発展することに期待したいですね。

掛下 あわらキャンパスは国定公園の近くで、周囲には⾵⾞や緑もあり、外国の研究所のようなロケーションにあります。新設する13.5mのアンテナもここに建ちますので、どうぞご期待ください。

取材:2023年2月

BACK
  • リアルタイム衛星画像公開
  • AI & IoTセンター
  • FUKUI PHOENIX PROJECT
  • FUKUI PHOENIX PROJECT
pagetop
Copyright © Fukui University of Technology, All Rights Resereved.