

2018年9月福井県勝山市を舞台に本プロジェクトは、『勝山小原貸切スターツアー』を開催しました。地域住民・鉄道事業者・本学という、三者のコラボレーションで実現した一般参加型の当企画。当日の様子を振り返りつつ、福井における星空ツーリズムの可能性を語り合ってもらいました。
― 集落で食べた弁当や、観望地点で配ったギャラクシードーナツなどのアイディアはどこから出たのでしょう。
谷内:弁当は『勝山市観光まちづくり株式会社』を通じて、市内の『花月楼』さんに発注してもらいました。
國吉:谷内さんや多米先生と話す中で、星をテーマにした弁当があるといいよねというアイディアは出ていました。
下川:弁当と一緒にイワナ焼きが出たでしょう。あれが絶妙でしたね。
谷内:帰りのバスでも話をしたんですけど、全員が全員「あれは本当においしかった!」や「こんなの食べたことない!」と絶賛でしたね。
下川:うちの子どもなんて頭まで食べちゃいましたからね。
國吉:焼き加減は年配のチーフにお願いして、それだけに集中してもらいました。「イワナは俺に焼かせろ」という人がいるもので(笑)。
谷内:今回は古民家の中で食べたということで趣があると評価が高かったです。
國吉:ちょうどあの家は完成したばかりだったんで、お披露目の意味合いもありました。今度からえち鉄のツアーでも食堂として使おうかなと考えています。
下川:あのイワナが毎回出るかどうか。
國吉:出しますよ。任せてください(笑)。
― 今回のツアーは秋の実施でしたが、年2回の開催は厳しいですか?
谷内:厳しくはないですよ。できることなら月イチ、新月に合わせたタイミングでできると良いですね。
下川:すばらしい。
國吉:ただ、内容のメリハリは付ける必要がありそうです。
下川:季節感が出てくるといいですからね。
國吉:雨天の時も中止にするのではなく雨天時のバージョンで楽しめるものにしていきたいです。8月で10℃を切る時もありますから、すごく暑い街なかから一気に寒い所へ移動する体験をしてもらうのもいいかなと。
中城:長期で泊まるツアーというのもありますよね。
國吉:そうですね。集落での宿泊も古民家などで受け入れていければと面白いと思います。
下川:星空観光と宿泊をつなげられると経済効果として魅力が出てきますよね。小原の中でツアーを組んで泊まらせられるかどうか。個人の宿泊は対応できると思いますが、ツアー規模でそれができるかどうか。
國吉:そこなんですよね。農家民宿の『ふくじゅそう』でも定員8人なので。
谷内:受け入れ体制をどう整えるかですね。
― 先ほど中城先生がおっしゃっていた数値の話は、夜になればなるほど数値が上がっていくという認識でいいのでしょうか。
中城:そうですね。
谷内:星空をいちばんきれいな状態で見るには夜中までいないといけないですね。終電の時間を考えて日帰りツアーを組むと早い時間に帰らないといけないので、泊まることにより食事・体験・星空・宿泊と小原の魅力を100%味わってもらえるツアーができればなと思いました。
下川:年間のツアーの1~2回でも構わないから宿泊前提で上限7人程度のツアーを組む。その人たちは深夜2時ごろにすごい星空が見られる。でも、受け入れのキャパシティがないから完全予約制のツアーにして半年待ちぐらいの感じで。
中城:1週間泊まれるし、そのうち何日かは星空が見られるというような内容で。
國吉:1週間あれば見られる機会もあるでしょうからね。
中城:単発のイベントで「この時間帯に晴れないとダメです」という形だと、今回のような胃の痛い状況になってしまう(笑)。
谷内:限定7人しか味わえない付加価値をどう高めていけるかというところですね。
下川:両方持っておくというのは武器だよね。小原を満喫する上限7人のツアーと、お試しツアー。古民家の改修をすれば宿泊場所は増えるでしょうけど。小原の集落、掘ったら温泉が出ませんかね。
國吉:県内はだいたい1000m掘れば出ると言われていますね。小原はV字状の地形なのでそこまで掘らなくてもいいかも。
下川:温泉があれば完成形に近づくんだろうなあ。
國吉:鉱泉みたいなのを引いてきて湧き水を沸かしてお湯にするという方法もあります。集落から1㎞から2㎞弱の所に炭酸泉が湧いている所がありまして。水は冷たいけど炭酸泉なんです。それをパイプで引っ張ってきて沸かせばいけるかなと。
下川:できれば集落に資産ができますね。
國吉:今度は福井工大の学生と土管を入れてパイプを引っ張ってきますか。
一同:(笑)。
國吉:口径5cmのパイプで十分ですから。それを2㎞延長して。
下川:最強ですね。そこまで付加価値があると、1泊3万円くらいいけるんじゃないですか(笑)。そこまでやればブランドになるし、どんどん噂になって広まっていくでしょうね。そういうツアーと、今回のような日帰りツアーを合わせ技で行いながらマネジメントしていくことになりそうですね。
― すでに実施している山菜ツアーから得られた知見のようなものはありますか?
國吉:星空ツーリズムと一緒で天候に左右されますよね。それと山菜の食事を提供を集落のおばちゃんに頼んでいたんですが、だんだん年配になってきて…。大きな天ぷら鍋などの扱いが危なかったり。そういう課題を抱えながらと悩みながらやっている感じです。
下川:僕の持論なんですが、ボランティアは続かないと思っていて。ちゃんと対価を支払って、その対価がそれぞれの家庭の収入になるという枠組みをつくらないと、事業っていうのは続かないなと痛感しています。
國吉:小原の場合、当初は参加者や関わる人から「懐かしさがある」って言葉が出てたんですよね。でも、最近ないんですよ。世代が変わってきて。
下川:昔の集落のことをそもそも知らないから。
國吉:僕らの世代なんかは懐かしいと思うんですけど、大学生の世代だと「すごい」とか「新しい」という目線で集落を見るようになってきて。そういう変化に自分たちも対応して、懐かしいだけでなくて新しさとして残していかないとと感じますね。
― お一人ずつ、今年のツアーで「これを実現させたい」という目標を伺って座談会を締めたいと思います。
下川:集落自体の付加価値がさらに高まるような仕組みを考えて実践することです。
谷内:電車というのは日常にあるものなので、貸切電車という非日常性を持ち込むことで皆さんに喜んでいただけるホスピタリティをつくっていきたいと思います。貸切電車というものを楽しんでもらえる企画力を高めたいですね。
中城:本学は『宙ツーリズム推進協議会』 という団体に加盟しています。
活動を通じて得られたデータなどを発信することで、星空ツーリズムをやる価値がある星空だということを下支えしていきたいです。
國吉:僕が過去に小原で見た最高の星空を提供するために、例えば大学と連携して人工衛星画像を活用したり、気象予報をしたりしながら、新月に合わせたスケジュールを組みたいですね。星空を見るのは深夜2時になるかもしれないけど。
中城:それは面白いアイディアですね。最初から深夜2時なんて無理だろうとあきらめているけど、もしかしたらいけるかも。
國吉:参加者の方にお金をいただいてツアーを組んでいるので「これ最高だよ」という時間を皆さんと共有したいですね。
→REPORT 002「勝山小原貸切スターツアー」記事はコチラ