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SPECIAL ふくいPHOENIXプロジェクト 異業種対談 宇宙×地域で福井を発信
星空ツーリズムの可能性を探る(1)2019.03.20

谷内大地 氏(えちぜん鉄道株式会社営業開発部営業開発グループ サブリーダー)
國吉一實 氏(小原ECOプロジェクト 代表)
中城智之(福井工業大学電気電子工学科 教授)
下川勇(福井工業大学工学部建築土木工学科 教授)

2018年9月福井県勝山市を舞台に本プロジェクトは、『勝山小原貸切スターツアー』を開催しました。地域住民・鉄道事業者・本学という、三者のコラボレーションで実現した一般参加型の当企画。当日の様子を振り返りつつ、福井における星空ツーリズムの可能性を語り合ってもらいました。

― 昨年9月開催のスターツアーの振り返りと今後の展望というテーマでの座談会となりますが、今回の企画の経緯をお伺いします。事前にテスト的なツアーをされているんですよね。

下川:2017年10月に学内の教職員を中心に、勝山市小原地区の雰囲気を実際に体験してもらって、夜に星空を見るという、今回と同じようなツアーを行いました。

― 反応はどうでした?

下川:すごく良くて手応えはありました。ただ、大学には旅行業の資格がないので一般向けのツアーが組めないんですね。國吉さんのお力添えでえちぜん鉄道さんに入っていただいてこの形ができました。

― なぜ勝山市小原地区が候補に?

下川:本学の多米先生(=建築土木工学科 多米淑人教授)が小原の古民家再生プロジェクト『小原ECOプロジェクト』の担当で、國吉さんと親しかったという背景がありました。プロジェクトはスタートしてどれくらいですかね…

國吉:今年で14年目ですね。

下川:本学は小原の他にも複数エリアを動かしてまして、小原での課題が他のプロジェクトにおろせるので非常にありがたいツアーでした。今回のツアーは当初天候が怪しかったのですが、天候が悪かったら星空観光は潰れちゃうんですね。ところがツアー中に雲が切れた。

中城:あれ、あってよかったですね。

下川:あの時感じたのは、悪天候の時にお客さまにどう対応すればいいのかと。テストツアーの時は晴れてたんですよ。猛烈に(笑)。

國吉:宇宙ステーションが見れたのは大きかったです。時間帯が良かったですね。

中城:星といっても、主役は地域にもともとあるものという考え方が大切なんですよね。場所が違えばまた違う雰囲気になるというような。

― 国内外で星空ツーリズムが盛り上がっているように感じますが、他の地域で有名な事例があれば。

中城:いちばん有名なのは長野県阿智村です。以前から「日本一美しい星空に認定された」というのを売りにして成功していますね。最近だと鳥取県が「星取県」という名前で、全県できれいな星が見れるよというイベントをやっていたり。

― 星空観望会みたいなイベントですね。

中城:その時の価値の一つに夜空の明るさを測る数値というのがあります。小原は全国調査の中の上位に入る、福井県内でもいちばん暗いといっていい環境です。小原がすごいのはそういう数値が早い時間から出る所なんです。日没後1時間半は太陽の影響で明るいので計測しないのですが、小原は日没後1時間半過ぎたらもう全国上位に入る数値が出る。いかに光が届いていないかということが今回よく分かって。早い時間帯にそんな数値が出る場所は、福井県内でも他の地域でも珍しいですよ。

谷内:帰りの電車の中で中城先生が話してくださった、地域ごとの夜空の暗さを数値にした話は、皆さんが「貴重な話を聞けた」と言っていました。

説明

國吉:中学校くらいの頃に白山に登ったんですよ。あの標高から星を見ると半端じゃなくて。まさに星が手に取るように見えるというか。あれ以来、山に登るのが好きになりましたね。小原でいうと、ECOプロジェクトで来てくれている学生が10年以上前から星空の美しさを僕ら以上によく知っていた。休憩所に『星の駅』と名付けたりね。

下川:そこにずっといる人は当たり前になってて気付かないんですよね。だから外から入ってきた人間が星空を見たら「ああ!」ってなる。

― ツアーの最後にアンケートを取りましたよね。どのような回答がありましたか。

谷内:今回は半数が沿線外の方でした。鯖江市や越前市、東京からも参加があり、星が関心度の高いコンテンツなんだと実感しました。

― 企画はどのように練っていったのですか?

谷内:ターゲットを年配の女性の方に据えて、そういった方々に喜んでもらえるように内容を組みました。実際に50歳以上の方が半数を占め、小さなお子さまを連れてこられた方、ご夫婦、友人と2人組というような方にも参加いただけました。

谷内氏

― 具体的な感想などはありましたか?

谷内:「小原地区を知ることができた」「国際宇宙ステーションを見られて良かった」「食事がとてもおいしかった」など小原の魅力を味わえたことに高評価をいただきました。

下川:えちぜん鉄道さんはこういうツアーをどれくらい企画されているんですか。

谷内:年間だいたい10種類くらいです。代表的なものだと『勝山左義長まつり』や『三国まつり』などのイベントに合わせて、三国・勝山の両沿線にいらっしゃる方に電車を利用して足を運んでもらうことで地域の魅力を紹介するという企画があります。当社は自然を活かしたグリーンツアーリズムに力を入れているので、今回のツアーも「ぜひに」ということで一緒に企画させていただきました。

下川:そういう時は貸し切りに?

谷内:今回が初めてですね。電車貸し切り自体は夏の『ビア電』などでやっているので、ツアーの中に貸切電車を組み入れたいとは思っていました。
参加者の半分が沿線外にお住まいで、そもそもえちぜん鉄道に乗ったことがないという方々もいたのですごくうれしかったです。普段は沿線の方しか乗らないので。

中城:新しい客層の掘り起こしですね。

谷内:はい。そういう意味でも新しいツアーになりました。小原でいうと、山菜ツアーが定番ですね。

下川:どれくらい集まるものなんですか?

谷内:マイクロバスの定員が40人なんですが、すぐ埋まりますね。参加年齢は幅広く、中には限界集落の現況を見たいと20代前後の女性が参加されることがあります。

中城:星空でいきなりドン!じゃなくて、いろいろなベースがあるところにちょっと違う要素で切り込むと。

谷内:ツアーの参加者には小原の限界集落自体を知らなかったという方もいらっしゃいますね。こんな集落があったんだという驚きや感心の声がありました。

國吉:まあ、10人いて10人満足のツアーというのはなかなか難しいですが。

― 反対に、反省点はありました?

谷内:今回の内容が大人向けだったのですが、参加された方の中には子どもが喜ぶような星空へのファンタジーを期待されていた方もいたので、今後ツアーを作り込んでいく中で内容を分けていく必要があるのかなとも思いました。

車両の先頭でプロジェクターを展開

下川:車両の先頭でプロジェクターを展開していると後ろの方に対して伝えたいことの密度が落ちていくというか、車両の使い方が難しいなと感じました。それと星空観光だけではないでしょうが、ホスピタリティをどう作っていくかが非常に大事だとも思いました。

― 國吉さんは「10人が10人満足できるツアーは難しい」とおっしゃっていましたが、それはこれまでの経験から?

國吉:過去のツアーもそうですが、想定外のことは起きますよね。バスで酔われたり、弁当の満足度一つとっても「多すぎる」「味が濃い」などの感想があったりとか。反省点を踏まえながらホスピタリティを洗練していければ。

國吉氏

下川:例えば事前にひざ掛けを用意しておくとか、寝てしまったお子さんに毛布をあげるとか、些細なことですが、ホスピタリティを高めていくことでツアーの完成度が高まっていくのだろうなと感じました。

谷内:今回は企画の打合せの段階で「20人くらいでどういうものかやってみよう」という話だったんですよね。少人数のツアーでホスピタリティが全員に行き届く。

國吉:10日程前には10人くらいだったんですよね。最少催行人数に達していなくてもやろうよって言ってて。そうしたら結果的に50人になったという。

谷内:新聞などいろいろなところで取り上げられて、最終的な参加人数が確定した時に関心の高さに驚いたのと同時に焦りました。これだけ集まるとは想定していなかったので。

一同:(笑)。

國吉氏

下川:募集のチラシで目についたのは、「標高1100mから」という文言です。1100mで星を見るって日常生活の中ではなかなか経験できないでしょう。これはもうちょっと大きくしてもいいのかなと思いました。相当なキャッチフレーズですよ。もう高さで勝負できるよね。

中城:八ヶ岳で1900mくらいなんです。でも、海外事例なんかも見ると1000mあったら十分かなという。

谷内:星空を見られなかった時にはみんなでごはんを食べて、地域の話を聞き、クラフトを作って小原を楽しんでもらって帰るというのでも最初はいいと思っていたんです。同じ満足度にはできないにしても。でも、ここまで期待度が上がってしまったので不安でしょうがなかったですね。

中城:行きの電車の中はどんよりしていましたからね。「もう見えないよね」という雲行きだったので。

下川:思ったんですけど、揺れている電車の中でプロジェクターを見せるのは厳しいかなと。小原の写真集みたいな冊子があれば良かったかもしれない。

國吉:自分も星空観望初心者なもので、望遠鏡の使い方などレクチャーがあってもいいなと思いました。

谷内:このツアーに参加した方の理由として、女性の方が夜に山へ登り星を見るという「非日常」を楽しみにされていた。その一方で、男性の方からは星空の写真をよりきれいに撮りたかったという声がありました。写真の撮り方についてのレクチャーがあればという話もありましたね。

國吉:今回は福井駅出発でしたけど、駅西にあるセーレンプラネットへ先に寄ってレクチャーを見るというのもありかなと思います。みんなで借り切って、そこを舞台にして話をする。電車の中でも沿線の「車窓100選」に選ばれた所をパンフレットを見ながら眺めるというのはありかなと思って。

谷内:終わってみて分かったこともたくさんありましたね。電車の中でのプログラムにしても、弁当などお客さまにお出しするものにしても、まだまだニーズを拾っていかないと。

國吉:やったからこそ次に活かせる部分もいっぱいあるから。

下川:それにしても学生たちは本当によく頑張っていたなと。現場に入って弁当を配ったり、観望地点に登ったら猪汁を振る舞ってたり。今回は本当に学生に支えられました。学生たちがニコニコしながらいるというのは安心感の提供にもなったのかなと思っていて。強面のおじさんたちが並んでいたら弁当一つもらうのも緊張しますもん(笑)。

國吉氏

→REPORT 002「勝山小原貸切スターツアー」記事はコチラ

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