エンジンを小型・高出力にするためには、エンジンの高速化が必要であり、高速化するためにピストンを軽量化し、ピストンの材質は軽く、熱伝導率の大きいアルミニウム合金が使用されている。アルミニウムの欠点としては融点が660℃と低いという問題がある。エンジンの省燃費化を進めるためには、摺動抵抗(フリクション)の少ない小型エンジンを用い高圧縮比化をおこない高い比出力を得ることが最も良い方法であるが、高圧縮比化を進めるに伴いピストンの熱負荷は上昇し、ピストン温度がアルミの融点を超えてピストンが破損するという問題が発生する。このようなトラブルを回避して、最適な状態での運転ができるように、ピストンに対する熱負荷を設定するためにも精度の良いピストン温度の測定は非常に重要である。本研究では、ピストンの温度を精度良く測定するため、近年発展のめざましいRF技術(ディジタル無線技術)を応用し、測定側に電源が不要、軽量かつ信頼度の高い温度測定システムを構築し、実際のエンジンのピストン温度の測定を実施した。
エンジンは大気汚染防止の観点から、排気ガスの発生を最小に抑制する目的で各種デバイスの装着が研究されている。しかし、排気ガス低減デバイスは燃料の種類や性状によっては低減性能が悪化するといった問題やデバイスの故障が指摘されている。本研究では故障検知の一貫として、通常ディーゼルエンジンに使用される軽油、重油、灯油の3種類の燃料を使用し、燃料種類の判定をニューラルネットワークによっておこない、燃料種類判別の可能性について検討を行った結果高い正解率を得た。
上記のようなエンジンの計測・制御をベースとした研究を実施しているが、今後はエンジンの計測制御で得た知見を基にして、輸送機器の振動制御や乗り心地の改善について研究の幅を広げていく予定である。
さらに電気自動車を使用した牽引型レンジエクステンダ等の研究も現在進めており、今後はエンジン部分を発電機として非常時等に電源として使用できる電気自動車を開発している。
将来的には制御技術を応用して自動運転やスマートグリットへの研究開発へとつなげてゆく予定である。
また、学生のエンジニアリング教育にも力を入れ、現物と知識の両方を学生に提供し、バランスの取れたエンジニアリング教育を実施していく予定である。