IoT(Internet of Things; モノのインターネット)は、2030年までに第4次産業革命を牽引すると共に、地域産業の活性化や老朽化した社会インフラの整備など、成熟化した日本の様々な問題を解決するための社会基盤になることが期待されている.しかしながら,データの発生源や制御対象の近傍で処理を行うエッジ集中型IoTシステムは,エッジ領域内の局所的な最適化(エッジ最適化)に適している反面、地域全体などの大局的な最適化(クラウド最適化)への対応が困難となる。
本研究では、IoTシステムにおけるエッジとクラウドの役割分担を明らかにし、エッジとクラウドをそれぞれ利他的に最適化する段階的分散最適化アルゴリズムに基づくハイブリッド型IoTアーキテクチャを提案した。
このアーキテクチャを採用することにより、たとえば、電力会社の電力需給と電力需要家の快適性・生産性のバランスを取り、エネルギー管理システム全体の最適化を実現することができる。また、提案したIoTアーキテクチャに基づく都市交通管理システムでは、ITS(Intelligent Transport Systems)による交通渋滞の緩和と自律走行車の運転者の快適性の両方を考慮した交通流の最適化が実現できることが期待される。
IoTシステムの普及には、その適用領域のドメイン知識を持ち、ITとOTを最適に組み合わせたIoTシステムを具現化できるIoT人材の育成が重要である。ここで、ITはネットワークやセキュリティなどの情報技術(Information Technology)であり、OTは電気や機械などの運用技術(Operation Technology)を意味する。
本研究では、これからのIoTシステムの普及に貢献できる人材を育成するためのプロトタイピング教育法と教材を開発している。具体的には、小中高生がIoTへ興味を抱くように、ソニー社のMESHを活用したIoT体験教材を開発し、大学祭などでAI/IoT体験ラボを開催している。また、大学のPBL(Project Based Leaning)科目向けに、AIとIoT技術を活用したミニロボット開発教材の開発に取り組んでいる。
さらに、製造業向けのリカレント教育活動の一環として、工作機械などに組み込まれるPLC(Programmable Logic Controller)と連携するIoTシステムの開発教材を開発し、IoTによる地域産業活性化に取り組んでいる。
IoTを支える技術の研究開発とIoT技術を最大限に活用できる人材育成が、IoTシステムの更なる普及の両輪となる。
IoT技術の研究開発に関しては、従来からITシステムの形態は集中と分散を繰り返してきたが、今後のIoTシステムは、クラウドによる「超集中」とエッジデバイスによる「超分散」を統合する新しいIoTアーキテクチャの確立が必要となる。IoTアーキテクチャの確立に向けた研究は、東北大学や千葉工業大学などと共同研究を進めている。
IoT人材育成では、従来からIT(情報技術)とOT(運用技術)は、異なるカリキュラムのもとで教育が行われてきたが、今後は、ITとOTの両方の技術を俯瞰し、これらの最適に組み合わせたIoTシステムの設計構築ができるIoTコーディネータ人材の育成が重要となる。IoT人材育成は、芝浦工業大学や東京電機大学などと共同研究を進めている。
これらの研究成果による社会貢献としては、企業との共同研究を通じて、リサイクル機器の海外展開に向けたIoT化推進、雨水活用システムの高度化、次世代ビル管理システムの開発などに取り組んでいる。