データ駆動型社会、すなわち、大きな社会的価値を生み出すことを目標として、データの収集・蓄積と解析を基に様々な意思決定が行われる社会への転換の重要性が認識されている。多様なプラットフォームによる多様なデータの融合が重要と考えており、これまでの取り組みを紹介する。
1.衛星×IoTによる光害可視化システムの開発
日本は世界有数の「光害大国」であり、70%の国民が天の川の見えない地域に住んでいる。近年、美しい星空を地域活性化に活用する取り組みが活発化しており、光害対策の推進が求められているが、光害の影響や光害対策の効果が分かりにくいため進んでいない。この解決策として、人工衛星と地上IoTによる光害の可視化システムの開発に取り組んでいる。これまで、(1)光害を制御するために必要な情報を導き出す光伝搬モデルを2.5次元モデルとして開発し、(2)このモデルと人工衛星および地上観測器のデータを組み合わせたシミュレーションにより、福井県奥越地方における屋外照明の上方への漏れ光を30%カットできれば、奥越地方の星空の価値が現在の銀賞から金賞になる可能性を示した。
2.固定翼・垂直離陸型ドローンによる環境計測
新しく開発した垂直離陸・固定翼型ドローンFUTVTOL-1(図1)を用いた空撮実験により以下のことが示された。(1)FUTVTOL-1は想定通りに飛行し、Raspberry PiCamera V2と小型広角レンズを組み合わせた低コストカメラを用いて昼間および夜間の地上撮影に成功した。(2)特に、あわらキャンパス周辺の約600m四方の領域を正味3分間の飛行で撮影できたことは、FUTVTOL-1による今後の広域観測の可能性を示すものである。(3)FUTVTOL-1で撮影した昼間の圃場画像の青バンドおよび赤バンドの輝度値と、Sentinel-2衛星によって求めたNDVI値との間の決定係数はそれぞれ0.9216、0.9276と極めて高い結果となり、低コストカメラによる空撮データと大型衛星のデータの併用が可能であることを示した。(4)FUTVTOL-1による夜間の空撮結果から、固定翼型ドローンによる屋外の照明環境計測の可能性を示した。
3.あわらキャンパス衛星地上局による人工衛星データの受信
福井工業大学では2003年から、あわらキャンパスの衛星地上局(図2)を用いた人工衛星データの受信に取り組んできた。2012年から2013年にかけて、東北大学の超小型衛星の運用にも参加し、S帯における100kbps高速通信の成功に貢献した。
1.衛星×IoTによる光害可視化システムの開発
現在、衛星×IoTに「地域ブランディング」を加えた取り組みを進めており、地域活性化への貢献が期待される。衛星データとIoTによる光害の可視化は地域資源としての星空を保護するための具体的な目標を提示する重要な手段となる。光害可視化の精度を高めることを目的とした超小型衛星FUT-SAT-1(図1)の打ち上げを2022年に計画しており準備を進めている。
2.固定翼・垂直離陸型ドローンによる環境計測
今後、農業分野における生育情報提供、特に人工衛星のデータとの組み合わせによる、より効率的かつ経済的な計測および情報提供を目指す。すなわち、人工衛星データを用いて産地レベルの広域状況について概況を把握した上で測定計画を立て、FUTVTOL-1を用いて効率的に広域の詳細観測を行い、農作物生育情報を提供するシステムの確立を目標とする。
3.あわらキャンパス衛星地上局による人工衛星データの受信
民間による超小型衛星の利用においてボトルネックとなっている衛星地上局不足の解消に貢献していきたい。