ふくいPHOENIXプロジェクト
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INTERVIEW衛星画像が捉えた「光」から見えてくる、ありのままの日本海の姿。漂流物の監視を通して、美しい海の実現を目指す。 2018.01.11

青山隆司(電気電子工学科教授)

宇宙研究・観光文化・地域振興―「ふくいPHOENIXプロジェクト」が掲げる3つの軸のキーパーソンに話を聞くインタビュー企画。今回は「日本海漂流ゴミ(海ゴミ)の監視手法の開発」を研究領域とする、電気電子工学科の青山隆司教授です。

― 「ふくいPHOENIXプロジェクト」における青山先生の研究についてお聞かせください。

青山:人工衛星からの高解像度画像を使った、日本海沿岸における「海ゴミ」の漂流状況の監視を行っています。

― どのようなきっかけから海ゴミの研究を始められたのでしょう。

青山:十数年前に見た若狭湾の衛星画像がそもそもの始まりです。ちょうどあわらキャンパスに画像解析の装置が入った頃で、若狭湾の衛星画像を見てみたら若狭湾に大きな赤潮が発生していることが分かったんです。
上空700キロから撮った画像にもかかわらず、海上の様子がクリアに分かることに感動してしまいましてね。衛星画像というのは使い方次第でさまざまな情報を取り出すことができますので、衛星画像を活用して海ゴミの監視に取り組んでいるというわけです。

福井県沿岸域の漂着ゴミ

▲福井県沿岸域の漂着ゴミ

― ところで海ゴミとおっしゃいますと、具体的にはどのような物を指すのでしょうか。

青山:砂浜や崖などに打ち上げられている、コンテナ、ペットボトル、漁網などの人工物(投棄物)や流木などの自然物の全体を指します。発生源の大半は国内の河川で、韓国、ロシア、中国、操業中の漁船などからと思われる物も混入しています。ゴミの多くはプラスチック製品です。
プラスチックというのが実はすごく問題でしてね。海上に漂流しているプラスチックはだんだん劣化して小さくなっていくのですが、決して無くなるわけではない。海洋生物が微細に分解された「マイクロプラスチック」を誤って食べてしまうんです。海洋資源保護という観点からも良くない状況がずっと続いています。

― 問題の解決に高解像度画像データが役に立つと。

青山:高解像度といっても画素1個当たり1.5メートル四方~2メートル四方の解像度なので、小さい海ゴミを直接確認できるわけではありません。そこで画像データを分光解析して得られる反射スペクトルを活用します。

― 光の波長を調べることで、なぜ海ゴミの漂流が確認できるのでしょうか。

青山:海ゴミを含む画素とそうでない画素との間にはスペクトルに差異があるということを根拠にしているからです。実際の研究では、監視海域の平均的なスペクトルを基に、それと大きく異なるスペクトルを持つ画素について「海ゴミあり」の候補として取り出すという作業を行っています。
日本海はけっこう閉鎖的な海で、言うなれば巨大な池のようなつくりになっているんですね。そうすると、長い時間掛けて監視を続けることで海ゴミが溜まりやすい場所が見つかるのではないかと。海ゴミをせき止めるスクリーンのような物を浮かべ、一定の周期で回収に向かうというようなことができるのではと考えています。

福井県の上空700キロから撮った衛星画像

▲福井県の上空700キロから撮った衛星画像。赤丸で示した箇所に大量の赤潮が発生していることが分かる

― 海上に漂うゴミが少なくなれば、地元の漁師さんなどにも恩恵がありますね。

青山:衛星画像は漁業だけでなく農業にも活用できるのではと考え、福井県と共同でコメの食味向上に向けた研究も進めています。画像を分光解析して稲の生育状態やタンパク質含有率などを間接的に導き出すことで、食味向上や水田管理の省力化につなげられればというわけです。

― 海ゴミにしてもコメにしても、自然が相手で大変長期にわたる取り組みとなる印象を受けました。青山先生の「研究欲」はどこから湧いているのでしょうか。

青山:東日本大震災の記憶が一番の原動力ですね。私は仙台に家があって震災で亡くなった知人もいます。あの現実を目の当たりにして、防災や農林水産業支援など世の中のためになるような仕事を残せたらという思いで研究を続けています。

― まさに「日本の未来を福井のソラから考える」研究ですね。

青山:世界中の専門家が人工衛星を活用してさまざまな研究を行っています。その分野にいる一人として、常識にとらわれないアプローチで「実はこんな応用もできるんだよ」というような掘り起こしができるといいですね。C軸の「地域振興研究」をその足掛かりと考え、一歩一歩しっかり踏み固めながら取り組んでいきます。

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