海外インターンシップ 体験者の声

キャリア教育の一環として昨年度(2016年)からスタートした福井工業大学の海外インターンシップ。現地企業での実務経験を通じて、グローバルな視野を持ち、社会で活躍できる人材を育成するためのプログラムだ。2年目となる今年度はタイに進出する企業に18人が参加した。この海外インターンシップに興味を持ち、参加を決めたのが環境・食品科学科3年の斉藤正樹さんだ。

インターンシップに興味深々


福井工業大学のフットサル部だけでなく2つの社会人フットサルチームに所属。それだけではない。総合格闘技にも取り組むなど、多忙な学生生活を送っている斉藤さん。好奇心旺盛で、興味をもったことにはとことん打ち込むタイプだ。
そんな彼が海外インターンシップに参加することになったのは、昨年参加したフットサル部のキャプテンから「社会のグローバル化は進んでいて、企業は海外に行ける人材を探している。日本と違う環境で働くといろんなことが見えてくるので、行ってみるといい経験になるはず」との勧めがあったから。もともと海外には興味があった。高校時代には語学を習得したいと短期留学も経験している。先輩から聞いた海外経験の話を聞いて、迷わず手を挙げた。

がむしゃらに取り組んだ初めての工場勤務

インターンシップは8月中旬から9月にかけての3週間。斉藤さんが配属されたのは、鯖江市に本社を置く、経編生地の開発・製造の八田経編株式会社のタイ工場だった。生地を作る工場では大量の糸を扱う。無数にある糸の中から使用する糸を取り出し巻き取る工程や、巻き取った糸を組み合わせて生地にしていく工程など、初めてみる光景に最初は圧倒されっぱなしだった。「しかも工場は蒸し風呂のように熱い。ここで3週間働けるだろうか」と不安もあったという。「でもせっかくもらったチャンスなので、頑張らないと何のためにきたのかわからなくなる」と持ち前のバイタリティーで取り組んだ斉藤さん。5キロの糸を高所にかけたり、トラックに荷物を積みこんだり、頼まれる仕事は何でもやった。「工場勤務の大変さを痛感。1日勤務を終えた後は疲れがドッと出ますが、同時に充実感も感じられました」。


様々な問題を乗り越えて


現地では得意の英語を活かせると考えていたそうだが、工場では英語はほとんど通じなかった。しかし、斉藤さんにとってそれは大きな問題ではなかった。「英語がダメなら片言のタイ語と身振り手振りで意思疎通を図りました。タイの人たちは非常にフレンドリーで、なんとか理解しようとしてくれました。通じていたかどうかは今となってはわかりませんが」と笑う。物怖じしないおおらかさが斉藤さんの武器。現地の従業員とは片言のタイ語で冗談を言い合う程の関係を築いていた。言葉はもちろん大切だが、片言でもコミュニケーションをとろうとする能力も海外では大きな武器の一つと言えるかもしれない。
言葉よりも斉藤さんを悩ませたのが食事だった。「昼は社食、夕食は会社帰りに工場の人たちと外食でしたが、タイ米の独特な匂いが最初は苦手だと思いました。でも食べないと仕事ができなくなるので、食べるようにしていたら、1週間で慣れました」と笑う。


海外勤務の厳しさを痛感


工場では幅広い年齢の人たちが勤務。勤務は一生懸命で真面目だが、時折話も弾み、のんびりした印象を感じた。「良く言えばおおらか。始業・終了時間が決められているけれど、遅れて来ても特に問題になることはない。それが現地の工場でのやり方。無理に日本の常識を押し付けることはありません。現地の方法で取り組むことが大切なんだということを学びました」。
3週間という短い期間だったが、タイでの働き方を体験し、考え方も大きく変わった。「将来海外で働いてみたいと考えていましたが、現実はそう簡単ではないことを痛感。正直、甘く考えていました。想像以上に生活文化や、法律も異なる。現地の暮らしや文化を尊重しなければいけない。そんな環境の中で暮らすと相当なストレスになります。こんなに大変だとは想像にもしていませんでした」。それでもやはり海外で働いてみたいという気持ちは強くなった。「国や文化によって相手の考え方は大きく異なります。それを排除したり、否定するのではなく、まずは受け入れてみる。そうするとおのずと視野が広がってくる。日本ではできないことを経験し、自分が成長できる場だと思いました」。
海外インターンシップを通して大きく成長した斉藤さん。将来のことはまだわからないと言うが、持ち前の好奇心とバイタリティーで、いずれは日本、いや海外で自分の進むべき道を切り拓いていくに違いない。


学年学科名等は、取材時のものです。

グローバル社会で活躍できる人材の育成をめざす福井工業大学では、キャリア教育の一環として今年度(2016年)から実際の就職体験を伴う海外インターンシップをスタートさせた。現地企業での実務経験を通じ、グローバルな視野を持ち、広く社会で活躍できる人材を育成するためのプログラムだ。学園ASEAN事務所との連携により受け入れ先を開拓し、初年度は福井県に拠点があり、タイ王国に進出している5つの企業に計12人を送り出した。この海外インターンシップに参加したひとりが、電気電子情報工学科3年の田村駿さんだ。

留学ではなくインターンシップ


授業内でタイで行われる海外インターンシップの告知を聞いて、一番に手を挙げた。福井県越前市に本社を構えるオリオン電機グループの生産拠点である、タイ国内の工場がインターンシップを受け入れるというものだった。これまで海外に行った経験がなく、英語も得意ではない田村さんが、それでも興味を持ったのははっきりとした目標があったから。「将来は、機械設計の仕事に就きたいんです。海外に生産拠点を持つ企業が多い業界なので、良い経験になると思って手を挙げました」。語学留学より、海外での実務経験を得られるという点がインターンシップの魅力だった。この海外インターンシップ費用は、福井県が設ける県内学生のための補助金のおかげで参加者の費用負担は少ない。また、希望者には様々な条件もあったが、学科教授の推薦もあり田村さんの参加が認められた。

英語力の必要性を実感


さっそく挨拶から戸惑った。“はじめまして”や“こんにちは”をタイ語で練習していた田村さんだが、現地で話しかけられるのは英語が多かった。「タイ語はむりでも英語なら話せるだろうと、英語で話しかけてくるんですよ。」タイの人の多くが英語を話すのにまず驚いたという。“good morning”という言葉ですら発音が良すぎて聞きとれず、何回か聞き直した。自分の発音も伝わらず身振り手振りでなんとかごまかしながら、英語力の低さを痛感したという。「だれかと話すたびにみんなが揃いも揃って同じことを言うんですよ。英語力は大事だぞ!って。5人や6人じゃないんです。20人以上には言われましたね」。

自己主張の大切さ

インターンシップは8月中旬から9月にかけての3週間。その間、製造工程の実作業から開発部門のディスカッションへの参加、営業部門の商談見学まで様々な部門を経験しながら、現地の人たちと触れあう中で日本人との大きな違いを感じたそう。「年功序列の日本と違い現地では実力主義で、成果が給与や出世として評価されると聞きました。だからでしょうか、仕事でもみんなが積極的に自分をアピールしてくるというか、いい意味で自己主張が強いんです」。大きな声で話しジャスチャーも大きい。自分の考えや思いを相手に伝えるのがすごく上手だと感じた田村さん。実際に参加したディスカッションでは、会話中の英単語のほとんどを聞き取れていなかったが、それでも話しの内容はなんとなく理解できたそうだ。「任せてください。なにか問題があれば責任もとりますから!といった感じでしょうか、力強くてとてもかっこよかったですね」。日本では美徳とされる謙虚さや遠慮は、世界ではマイナスだとも感じた。


社会人のリアル

滞在中はオリオン電機の社員寮で日本人駐在員と共同生活。仕事を終えて夕食後には、大きなテーブルを仲良くみんなで囲み、毎晩のようにお酒を飲みながら色々な話をした。「本当に毎晩大酒飲むんですよ。僕も酔った勢いで給与や待遇、会社の人間関係など、なかなか聞きづらいことを質問してみたんですが、どんな質問にも答えてくれましたね」。現地での生活が長いからか意思表示がはっきりしていて、曖昧な答えがないという。「今の仕事にやりがいを感じていること、日本に比べて職場の人間関係がとても円満なこと、現地に結婚を考えている彼女がいてもう日本には戻りたくないことまで、社員さん達の生の声を聞くことができたのは良い経験でした」。社会人の会社に対する愛着や仕事への責任感など、大学生の自分との違いも実感したという。


自分自身の成長のため


たとえ短い期間であっても寝食を共にした間柄。社員寮でお世話になった方々と、次に会う約束をして日本に戻った田村さん。「もう少し英語が上達したら、必ずまた会いに行ってきます」。自分のスマートフォンには英会話のアプリをインストールした。海外ドラマを見たり音楽は洋楽を聴くようにするなど、とにかく英語に触れる時間を増やそうと心がけている。「まだまだ英語は苦手。すぐに上達できるとは思いませんが、それでも少しだけ自信もついてきたんですよ」と自慢げに微笑む。再会を楽しみにしている田村さんにとって、「次会う時までに成長しておくこと」がお世話になった人に対するお礼の示し方なのだ。



学年学科名等は、取材時のものです。