研究情報
ナノ粒子による作物の生長改善法の開発
研究者名
小松 節子*
* 環境・食品科学科(2020 年度より環境食品応用化学科)
研究目的
コムギやダイズは需要が多い作物であるが、水田転換畑を利用する場合、湿害による生育遅延が発生し収量の低下を招き、その改善策が求められている。一方で、ナノ粒子は微小な粒子で比表面積が極めて大きく、量子サイズ効果によって特有の物性を示し、抗菌作用のみならずさまざまな有用機能を発現できることが報告されている。そこで、ダイズやコムギにおける、ナノ粒子による作物の生長促進効果を一層高めるために、他の化学物質を混合添加し、その効果を冠水ストレス下で検証する。そして、効果の発現機構を解明するために、高精度で高感度なプロテオミクス技術を用いて包括的に解析する。このことより、ストレス下の作物の生長をナノ粒子利用により改善する技術を開発する。
研究内容
ダイズやコムギにおける、ナノ粒子による作物の生長促進効果を一層高めるために、他の化学物質を混合添加し、その効果を形態学的に解析する。さらに、出芽期の冠水ストレス時に、ナノ粒子および化学物質を混合添加し、生存効果を解析する。そして、効果の確認された条件において、ゲルフリー・ラベルフリープロテオミクス解析を行い、機能発現機構を解明する。鍵となるタンパク質群においては、酵素活性あるいは遺伝子発現レベルで、その機能を検証する(図1)。
期待される研究成果
前年度までに、コムギを用いて、銀ナノ粒子および有機化合物としてニコチン酸と無機化合物として硝酸カリウムの混合添加で、植物体の生長が向上することを解明した。さらにプロテオミクス解析により、地下部においては活性酸素消去系の活性化によりストレスを軽減し、地上部においては光合成系とタンパク質合成系の向上により、生長を促していることを示唆した(図2)。引き続き、ダイズにおいても、ナノ粒子および化学物質の添加により、植物体の生長を促進することを明らかにした。さらに、プロテオミクス解析によりダイズにおいては、タンパク質合成系が抑制されて分解系が活性化されたことよりタンパク質品質管理機構が作動していることを示唆している(図3)。今後、分子生物学的に検証することにより、コムギとダイズにおける効果の相違を明らかにする。さらに、冠水ストレス下でのナノ銀および化学物質の作用を解明することにより、ストレス下の作物の生長をナノ粒子利用により改善する技術開発に貢献する。
研究イメージ
