研究情報
福井県産農産物の品質解明
研究者名
大能 俊久*、矢部 希見子*
* 環境・食品科学科(2020年度より環境食品応用化学科)
研究目的
農産物の味や機能性に関わる成分量を科学的に示すことができれば、市場で高評価が得られたり、需要が増えたりする可能性がある。また、農産物に関する科学的な情報があれば農産物のPR活動となるだけでなく、消費者へ調理に関するアドバイス等を行うことも可能となる。
そこで、福井県産農産物の高付加価値化、ブランド化を進めることを目的として、福井県産農産物の味や機能性に関わる成分量を明らかにする研究を行う。福井県産の農産物として、米やソバ、梅、トマト、サツマイモなども有名だが、最初の農産物として福井県産のナスを取り上げる。
研究内容
福井県産ナス3品種について7月から11月にかけてサンプルを採取し、味や機能性に関わる成分量を調べて比較を行う。農産物は収穫年度により成分が変動しやすいので、3年程度に亘って研究を実施する予定である。また、野菜は収穫後の保存により成分が短期間で変化する可能性がある。そこで、当日収獲したナスを直接農家から受け取り、その日のうちに分析、または分析の前処理を実施する。
味に関わる成分として、水分、糖度(糖度計を使用、図1)の他、果糖、ブドウ糖、ショ糖の糖量の測定(酵素法、HPLC法)を行う予定である。また、旨味や酸味を示すグルタミン酸などの遊離アミノ酸量も測定する(アミノ酸分析機を使用、図2)。さらに、ナスには抗酸化成分であり、種々の機能性を示すポリフェノールが多く含まれる。そこで、ポリフェノール量の測定(フォーリンデニス法、HPLC法)も実施する予定である。
期待される研究成果
野菜の甘味に関わる指標として糖度や糖総量が取り上げられる場合がある。しかし、ナスに含まる主要な糖である果糖とブドウ糖は甘味度が異なっており、ショ糖を1.00とすると果糖は1.20 ~ 1.50、ブドウ糖は0.60 ~ 0.70であり、果糖はブドウ糖の約2倍の甘味度を呈する。
試しにナス3品種の果糖量とブドウ糖量を調べた結果を図3に示す。Aナスは果糖が多い品種であり、Bナスは果糖とブドウ糖がほぼ等量の品種で、Cナスはブドウ糖が多い品種である。このように3品種の糖組成は異なる結果が得られており、糖度や糖総量だけでは3品種の甘味の特徴を十分に表すことができないことが分かる。このように本研究を行うことで3品種の特徴を詳しく知る事ができる。
研究イメージ
