研究情報
雨水活用普及に向けた技術・普及啓発手法開発による地域災害レジリエンスの向上
研究者名
笠井 利浩*、矢部 希見子*、北上 眞二**、田中 真由美**、近藤 晶✩、中城 智之✩✩
* 環境・食品科学科 ** 経営情報学科 ✩デザイン学科 ✩✩電気電子工学科
研究目的
近年、気候変動の顕著化が著しく、今後は豪雨や渇水による被害の甚大化が予想される。本研究では、雨水活用が地域社会にもたらす、水資源の確保、都市型洪水の緩和、地震等被災時の水資源確保等の効果を高めるための技術開発と経済評価を含めた普及施策の検討を行い、地域社会の持続可能性と災害レジリエンスの向上を目的とした研究を行う。
研究内容
雨水を水源とした小規模集落スマートシステム(図1)の開発および実証実験、並びに雨水活用の普及に向けた広報や経済的評価を行う。
前述のシステム開発からなるハード面の研究要素は、集雨面、集雨装置、雨水貯留槽、浄水システム、スマート配水、IoT技術であり、効率的な雨水活用システムの開発に向けた研究を行う。
一方、後述の広報等のソフト面の研究では、雨水活用の普及にむけたデザインや経済面からの研究を行う。
研究成果
長崎県五島市の小さな二次離島赤島(0.5㎢)で、雨水を水源とした小規模集落給水システムを設置し、実証実験に向けた準備を進めている。H29年度に雨水集水面(図2、雨畑:50㎡)を設置した後、H30年度には大型雨水貯留槽(図3、3㎥×2)を設置した。
今後は、コンピュータ制御式の初期雨水除去装置や飲用水造水用の浄水装置および各種計測装置を設置し、稼働条件の最適化と給水能力を検証する。
また、本システムの他地域への応用や雨水活用システムの連携システム化を踏まえ、近隣システムや計測装置間のデータ通信方法を検討するために低消費電力無線通信(LoRAWAN)適用の検討も行っている。
さらに、福井工業大学で取り組んでいる超小型人工衛星を使った辺境地域におけるシステム設置および稼働データの送受信手法についても検討している。
一方、節水に向けた水使用を検討するための基礎データとして、H29年度から島内居住者の水使用状況調査を行ってきた。その結果、島民は1人当り1日約60ℓの超節水生活であることが明らかとなった。
また、島内既設の雨水貯留槽の水質は、概ね簡易水道水質を満たす一方、時期により幾つかの水質項目で基準値以上となることが分かった。
本研究では、上記のハード面からの研究活動の他、雨水活用の普及促進のための広報手法に関する研究も行っている。
Facebook等のSNSを利用した手法の他、赤島特有の雨水生活を観光資源として捉え、実体験に基づく水の環境教育プログラムの開発にも取り組んでいる。
また、一般社会での雨水活用普及を目指して経済面からみた社会分析も行い、日本国内における企業の雨水活用への取組等についても分析を行っている。その結果、今後懸念される水リスクへの意識が国内企業は海外に比べて低いことが分かった。
研究イメージ
