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スーパーコンピュータを用いた分子シミュレーションと数理モデルでの抗がん剤の副作用と薬効予測

2022年3月14日、オンラインシンポジウム『医工連携と産業DX』が行われました。

講演会は福井工業大学AI&IoTセンターの事業の一環で、オンライン開催の呼び掛けに応じた約130人が参加。AI活用による研究の最先端を行く3氏の招待講演を軸に、地域活性化につながる社会改革(医工連携)と地域の産業創造(産業DX)の在り方について探っていきました。

オンライン講演画面
招待講演の2人目は、コンピュータシミュレーションと数理モデルで抗がん剤の副作用予測を実現した富山大学附属病院の髙岡裕氏。髙岡氏は「スーパーコンピュータを用いた分子シミュレーションと数理モデルでの抗がん剤の副作用と薬効予測」というテーマで講演を行いました。

スーパーコンピュータを医療分野に展開し研究に取り組む髙岡氏は、冒頭、デジタル技術は「検証から予測へ」の流れにあると説明。実世界のデータと計算機シミュレーションで予測モデルを立て、治療の未来予測や病態進行の予測ができるといいます。

その例として示されたのが、高い確率で皮膚がんを起こす「色素性乾皮症」です。色素性乾皮症は発症頻度が低い指定難病で、治療を必要とする人の絶対数が少ないことから新たな治療薬の開発が進んでいない現状があります。そこで既存薬を基にした計算機シミュレーション(計算創薬)を活用すると、開発費用を抑え、効率よく治療薬開発に展開できる可能性がひらけます。

同様のシミュレーションは新型コロナウイルス感染症における予防物質の発見にも貢献します。髙岡氏はウイルスのヒト細胞内への侵入についての模式図、ウイルスと予防物質の結合のコンピュータシミュレーション、感染症の感染力の予測結果などを基に、点鼻予防薬の実用化の可能性についても示唆しました。
オンライン講演画面
髙岡氏はこうしたシミュレーションが抗がん剤の薬効予測にも役立つとも説明。肺がんの治療薬を例に挙げ、「治療薬には複数の選択肢があり、薬物代謝遺伝子との組み合わせで十分な効果を得られない場合もあります。薬効予測を立てることはむだな医療の回避にもつながります」と述べました。

昨今の報道などでもよく耳にする病気を例に挙げながら、医療分野における計算機シミュレーションの活用を解説した髙岡氏。「これからもスーパーコンピュータが医療の革新をけん引する」と、その可能性を強調しました。
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